121 / 444
第四章 王立高等学園
学祭・演劇編 最終幕で暴風王女は赤い死神を剣で貫きます
しおりを挟む
涙目のオーウェンは膝をついた。
クリスの肘鉄はオーウェンの鳩尾にもろにヒットしていた。
「ごめんなさい。エリオット様」
クリスは崩れ落ちたオーウェンを睨みつけて言う。
「今まであなたと一緒にいられて本当に楽しかった」
正面を向いて劇に戻って感情を込めてクリスは言う。
「この幸せがいつまでも続けば良いと思っていた」
そして下を見る。
「でも、このままでは何万と言う人が死ぬわ。アーバンの大軍には私が行くしかないの」
「シャル!」
オーウェンが苦労して手を伸ばそうとする。
「さようなら。エリオット。オリビア様と幸せになってね」
と言うとクリスは両手を握った。
「シャル――――!」
オーウェンが呼び止めようと叫ぶ声にかぶさるように
「ジャラザール!」
クリスは大声で叫ぶ。
と同時にクリスの手のひらから白い光が舞台一杯迸って世界が真っ白になった。
そして暗転して、最後の舞台になる。
大道具が次々に変えられる。
「クリス」
舞台に降りたクリスを慌ててオーウェンは追いかけるがクリスは全く無視する。
クリスは次の舞台で使う結界魔法を展開始める。
舞台で抱きつくなんて本当に信じられない。
その腕を緩めるためとはいえ、そのオーウェンにキスするなんて、それも全国配信の最中に。
もう絶対に御嫁にいけないじゃない。
クリスは心底頭に来ていたが…
「姉様がキスした…」
ウイルは呆けていた。
「形だけでしょ」
ガーネットが否定する。
「いや、確かにした」
確かにほっぺただがクリスがキスしているところがはっきりとウィルの席からは見えた。
形だけでは無くて。視力だけは良いのだ。
ウィルはそもそもクリスからはキスなんてしてもらった事は無かった。
姉がしているのを見た事も無い。
クリスのファーストキスのはずだ。
そんな馬鹿な。姉はオーウェンの事をそこまで…
ウイルはしばらく立ち直れそうにも無かった。
その頃ドラフォードの王宮でも
「いやあ、皇太子殿下もうまくやられているみたいですな」
フィリップ・バーミンガム公爵がとなりの皇太后に言う。
「まあそうだけど、全国配信の中でクリスにキスをさせるなんてなんてはしたない行為を」
皇太后がぷりぷりして言う。
「まあ、それだけ仲良くなったという事で」
ドーブネル将軍が言う。
「皇太子殿下が断られたと聞いたときは驚きましたが…」
「これでクリス様もドラフォードに輿入れして頂けますな」
ウィンザー将軍らも喜んでいた。
「そうですわね。何しろ全世界にキスが配信されましたから」
アンリも喜んで言う。
「そうね。こうはしていられないわ。直ちに息子に言って婚約の書類を整えないと」
皇太后が動き出した。
そして最終幕が始まった。
光りの攻撃で圧倒的にアーバン軍が優勢だった。しかし、そのアーバンに突然転移してきたシャルが切りかかる。
アーバンは弾き飛ばされていた。
そして、次々と騎士が打ち取られていく。
「おのれ、何奴」
アーバン役のアレクが叫ぶ。
「アーバン。なぜ攻め込んできたの」
悲しそうな声が響く。
「えっお前はシャル?」
「そう、よく判ったわね」
「嘘だ。シャルがこのような戦士になどなれるはずがない」
「アーバン。私はシャラザールの化身」
「そんな馬鹿な」
周りの兵士が次々に光魔法で攻撃するがそれを受けてもシャル役のジャンヌはびくともしない。
「うらああ」
と叫びながら次々に光魔法で攻撃して兵士をなぎ倒していく。
「おのれ」
アレクは剣をジャンヌと切り結ぶがあっさり弾き飛ばされる。
「シャル覚悟」
アレクは必殺技の光魔法をジャンヌに放った。
しかし、ジャンヌに反射させられる。
「アーバン。私はシャラザールの化身。
これで判ったでしょ。申し訳ないがあなたでは勝てたない」
「そんな馬鹿な。ここまで来て、そんな」
アレクは棒立ちに近かった。
「さあ、もう降伏して」
ジャンヌが手を指し延ばす。
「申し訳ない。シャル。私も国の威信をかけて来た。
ここで引き下がるわけにはいかないんだ」
そう言うと瓶を開けて緑の液体を飲む。
「アーバン。何をする」
「魔人の薬だ。人では勝てなくても魔人なら勝てる」
言うや、苦しみだした。
「うぉー」
アレクは喉をかきむしる。
そして、フェビアンが光魔法でアレクを巨大化したと見せる。
「喰らえ」
巨大化して剣をジャンヌに叩きつける。
ジャンヌはそれを受けてはじき返す。
二人は何回も切り結ぶ。
「うぉりゃあああ」
「この野郎」
ジャンヌとアレクの雄たけびが響き合う。
最後の力を込めて剣を振り上げたアレクに
「喰らえ」
光魔法を浴びせた。
魔人は弾き飛ばされた。
そしてボロボロになったアレクが立ち上がる。
「シャル。私が完全に魔人とならないうちに、早くその剣で殺してくれ」
巨大な魔人と化したアーバンに扮したアレクが叫ぶ。
両手を広げてシャラザールに扮したジャンヌを誘う。
「そんな、アーバン!」
ジャンヌは目から涙を魔力で出しながら躊躇した。
「シャル!君に殺されるなら本望だ」
アレクは更に一歩前に出る。
「ごめん。アーバン」
ジャンヌは剣を構える。
「さようなら」
そして、剣を魔人と化して巨大化したアレクに突き刺す。
アレクはジャンヌを剣もろとも抱きしめる。
その瞬間に辺りはすさまじい光に包まれた。
そしてその光が収まった時にクリスの姿が舞台の袖から消えていた。
クリスの肘鉄はオーウェンの鳩尾にもろにヒットしていた。
「ごめんなさい。エリオット様」
クリスは崩れ落ちたオーウェンを睨みつけて言う。
「今まであなたと一緒にいられて本当に楽しかった」
正面を向いて劇に戻って感情を込めてクリスは言う。
「この幸せがいつまでも続けば良いと思っていた」
そして下を見る。
「でも、このままでは何万と言う人が死ぬわ。アーバンの大軍には私が行くしかないの」
「シャル!」
オーウェンが苦労して手を伸ばそうとする。
「さようなら。エリオット。オリビア様と幸せになってね」
と言うとクリスは両手を握った。
「シャル――――!」
オーウェンが呼び止めようと叫ぶ声にかぶさるように
「ジャラザール!」
クリスは大声で叫ぶ。
と同時にクリスの手のひらから白い光が舞台一杯迸って世界が真っ白になった。
そして暗転して、最後の舞台になる。
大道具が次々に変えられる。
「クリス」
舞台に降りたクリスを慌ててオーウェンは追いかけるがクリスは全く無視する。
クリスは次の舞台で使う結界魔法を展開始める。
舞台で抱きつくなんて本当に信じられない。
その腕を緩めるためとはいえ、そのオーウェンにキスするなんて、それも全国配信の最中に。
もう絶対に御嫁にいけないじゃない。
クリスは心底頭に来ていたが…
「姉様がキスした…」
ウイルは呆けていた。
「形だけでしょ」
ガーネットが否定する。
「いや、確かにした」
確かにほっぺただがクリスがキスしているところがはっきりとウィルの席からは見えた。
形だけでは無くて。視力だけは良いのだ。
ウィルはそもそもクリスからはキスなんてしてもらった事は無かった。
姉がしているのを見た事も無い。
クリスのファーストキスのはずだ。
そんな馬鹿な。姉はオーウェンの事をそこまで…
ウイルはしばらく立ち直れそうにも無かった。
その頃ドラフォードの王宮でも
「いやあ、皇太子殿下もうまくやられているみたいですな」
フィリップ・バーミンガム公爵がとなりの皇太后に言う。
「まあそうだけど、全国配信の中でクリスにキスをさせるなんてなんてはしたない行為を」
皇太后がぷりぷりして言う。
「まあ、それだけ仲良くなったという事で」
ドーブネル将軍が言う。
「皇太子殿下が断られたと聞いたときは驚きましたが…」
「これでクリス様もドラフォードに輿入れして頂けますな」
ウィンザー将軍らも喜んでいた。
「そうですわね。何しろ全世界にキスが配信されましたから」
アンリも喜んで言う。
「そうね。こうはしていられないわ。直ちに息子に言って婚約の書類を整えないと」
皇太后が動き出した。
そして最終幕が始まった。
光りの攻撃で圧倒的にアーバン軍が優勢だった。しかし、そのアーバンに突然転移してきたシャルが切りかかる。
アーバンは弾き飛ばされていた。
そして、次々と騎士が打ち取られていく。
「おのれ、何奴」
アーバン役のアレクが叫ぶ。
「アーバン。なぜ攻め込んできたの」
悲しそうな声が響く。
「えっお前はシャル?」
「そう、よく判ったわね」
「嘘だ。シャルがこのような戦士になどなれるはずがない」
「アーバン。私はシャラザールの化身」
「そんな馬鹿な」
周りの兵士が次々に光魔法で攻撃するがそれを受けてもシャル役のジャンヌはびくともしない。
「うらああ」
と叫びながら次々に光魔法で攻撃して兵士をなぎ倒していく。
「おのれ」
アレクは剣をジャンヌと切り結ぶがあっさり弾き飛ばされる。
「シャル覚悟」
アレクは必殺技の光魔法をジャンヌに放った。
しかし、ジャンヌに反射させられる。
「アーバン。私はシャラザールの化身。
これで判ったでしょ。申し訳ないがあなたでは勝てたない」
「そんな馬鹿な。ここまで来て、そんな」
アレクは棒立ちに近かった。
「さあ、もう降伏して」
ジャンヌが手を指し延ばす。
「申し訳ない。シャル。私も国の威信をかけて来た。
ここで引き下がるわけにはいかないんだ」
そう言うと瓶を開けて緑の液体を飲む。
「アーバン。何をする」
「魔人の薬だ。人では勝てなくても魔人なら勝てる」
言うや、苦しみだした。
「うぉー」
アレクは喉をかきむしる。
そして、フェビアンが光魔法でアレクを巨大化したと見せる。
「喰らえ」
巨大化して剣をジャンヌに叩きつける。
ジャンヌはそれを受けてはじき返す。
二人は何回も切り結ぶ。
「うぉりゃあああ」
「この野郎」
ジャンヌとアレクの雄たけびが響き合う。
最後の力を込めて剣を振り上げたアレクに
「喰らえ」
光魔法を浴びせた。
魔人は弾き飛ばされた。
そしてボロボロになったアレクが立ち上がる。
「シャル。私が完全に魔人とならないうちに、早くその剣で殺してくれ」
巨大な魔人と化したアーバンに扮したアレクが叫ぶ。
両手を広げてシャラザールに扮したジャンヌを誘う。
「そんな、アーバン!」
ジャンヌは目から涙を魔力で出しながら躊躇した。
「シャル!君に殺されるなら本望だ」
アレクは更に一歩前に出る。
「ごめん。アーバン」
ジャンヌは剣を構える。
「さようなら」
そして、剣を魔人と化して巨大化したアレクに突き刺す。
アレクはジャンヌを剣もろとも抱きしめる。
その瞬間に辺りはすさまじい光に包まれた。
そしてその光が収まった時にクリスの姿が舞台の袖から消えていた。
0
お気に入りに追加
2,450
あなたにおすすめの小説
記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。
せいめ
恋愛
メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。
頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。
ご都合主義です。誤字脱字お許しください。
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
王命を忘れた恋
須木 水夏
恋愛
『君はあの子よりも強いから』
そう言って貴方は私を見ることなく、この関係性を終わらせた。
強くいなければ、貴方のそばにいれなかったのに?貴方のそばにいる為に強くいたのに?
そんな痛む心を隠し。ユリアーナはただ静かに微笑むと、承知を告げた。
【完結】王女様がお好きなら、邪魔者のわたしは要らないですか?
曽根原ツタ
恋愛
「クラウス様、あなたのことがお嫌いなんですって」
エルヴィアナと婚約者クラウスの仲はうまくいっていない。
最近、王女が一緒にいるのをよく見かけるようになったと思えば、とあるパーティーで王女から婚約者の本音を告げ口され、別れを決意する。更に、彼女とクラウスは想い合っているとか。
(王女様がお好きなら、邪魔者のわたしは身を引くとしましょう。クラウス様)
しかし。破局寸前で想定外の事件が起き、エルヴィアナのことが嫌いなはずの彼の態度が豹変して……?
小説家になろう様でも更新中
婚約者が病弱な妹に恋をしたので、私は家を出ます。どうか、探さないでください。
待鳥園子
恋愛
婚約者が病弱な妹を見掛けて一目惚れし、私と婚約者を交換できないかと両親に聞いたらしい。
妹は清楚で可愛くて、しかも性格も良くて素直で可愛い。私が男でも、私よりもあの子が良いと、きっと思ってしまうはず。
……これは、二人は悪くない。仕方ないこと。
けど、二人の邪魔者になるくらいなら、私が家出します!
自覚のない純粋培養貴族令嬢が腹黒策士な護衛騎士に囚われて何があっても抜け出せないほどに溺愛される話。
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化
【完結】公女が死んだ、その後のこと
杜野秋人
恋愛
【第17回恋愛小説大賞 奨励賞受賞しました!】
「お母様……」
冷たく薄暗く、不潔で不快な地下の罪人牢で、彼女は独り、亡き母に語りかける。その掌の中には、ひと粒の小さな白い錠剤。
古ぼけた簡易寝台に座り、彼女はそのままゆっくりと、覚悟を決めたように横たわる。
「言いつけを、守ります」
最期にそう呟いて、彼女は震える手で錠剤を口に含み、そのまま飲み下した。
こうして、第二王子ボアネルジェスの婚約者でありカストリア公爵家の次期女公爵でもある公女オフィーリアは、獄中にて自ら命を断った。
そして彼女の死後、その影響はマケダニア王国の王宮内外の至るところで噴出した。
「ええい、公務が回らん!オフィーリアは何をやっている!?」
「殿下は何を仰せか!すでに公女は儚くなられたでしょうが!」
「くっ……、な、ならば蘇生させ」
「あれから何日経つとお思いで!?お気は確かか!」
「何故だ!何故この私が裁かれねばならん!」
「そうよ!お父様も私も何も悪くないわ!悪いのは全部お義姉さまよ!」
「…………申し開きがあるのなら、今ここではなく取り調べと裁判の場で存分に申すがよいわ。⸺連れて行け」
「まっ、待て!話を」
「嫌ぁ〜!」
「今さら何しに戻ってきたかね先々代様。わしらはもう、公女さま以外にお仕えする気も従う気もないんじゃがな?」
「なっ……貴様!領主たる儂の言うことが聞けんと」
「領主だったのは亡くなった女公さまとその娘の公女さまじゃ。あの方らはあんたと違って、わしら領民を第一に考えて下さった。あんたと違ってな!」
「くっ……!」
「なっ、譲位せよだと!?」
「本国の決定にございます。これ以上の混迷は連邦友邦にまで悪影響を与えかねないと。⸺潔く観念なさいませ。さあ、ご署名を」
「おのれ、謀りおったか!」
「…………父上が悪いのですよ。あの時止めてさえいれば、彼女は死なずに済んだのに」
◆人が亡くなる描写、及びベッドシーンがあるのでR15で。生々しい表現は避けています。
◆公女が亡くなってからが本番。なので最初の方、恋愛要素はほぼありません。最後はちゃんとジャンル:恋愛です。
◆ドアマットヒロインを書こうとしたはずが。どうしてこうなった?
◆作中の演出として自死のシーンがありますが、決して推奨し助長するものではありません。早まっちゃう前に然るべき窓口に一言相談を。
◆作者の作品は特に断りなき場合、基本的に同一の世界観に基づいています。が、他作品とリンクする予定は特にありません。本作単品でお楽しみ頂けます。
◆この作品は小説家になろうでも公開します。
◆24/2/17、HOTランキング女性向け1位!?1位は初ですありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる