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第四章 王立高等学園
ボフミエ皇帝に備える
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王宮にある諜報局は学園祭に来る他国との諜報行為等でてんやわんやだった。
そこに白髪の老師が歩いてきた。
「ジャルカ様。お久しぶりです」
諜報局に久々に顔を出したジャルカを見て驚いてルーファスは声を上げた。
「久しぶりじゃのルーファス」
「どうされたのですか。ジャルカ様がこのようなところにいらっしゃるなど」
「少し気になる事があっての」
ジャルカは笑って言った。
ルーファスはイヤーな感じがした。
ジャルカが笑うとろくなことが無いのだ。
いつもは電話での指示だが、直接来たとなると本当にろくでも無い事なのかもしれない。
「いやあ、別にたいしたことは無いとは思うのだが、今回の学園祭にボフミエの皇帝が来ると聞いての」
その一言によって結局諜報局を総動員して徹夜の連続勤務になってしまったのだった。
ボフミエ皇帝来襲の知らせはボフミエからの留学生を恐慌に陥れた。
「どうしよう、父上に殺される」
ヘルマンは震えていた。
「私も一緒ですよ」
ペトロ・グリンゲンも震えていた。
「殿下方。そんなにおびえられることはありませんぞ。皇帝陛下はせっかくの機会にとマーマレードの国王陛下と魔導電話について話し合いに来られるのです」
護衛隊長のアーロン・マルクトシュテフトは言った。
「そんな訳は無いだろう。父上から言われていた命令がうまくいきそうにないのだ」
「お怒りのはずです」
二人は恐怖に震えて言った。
「何をおっしゃっているのです。先に帰られたフランツ・マルクス様からも今後の為に魔導電話の有効活用について研究するようにと皇帝陛下から指示が出ていると元気な便りが来ていたでは無いですか」
「まあそうだが」
「普通ならば投獄されても仕方が無かったかと思いますが」
二人の不安も少しは払しょくされた。
他の二人には家族から皇帝陛下から自分らがよくやっていると褒められたと、領地にて魔導電話の仕組みを使った上映会が開かれるので見るのを楽しみにしていると手紙も来ていた。
しかし、あの皇帝がこの様でにこにこしていると到底思えないとフェビアンは思っていた。
その日も夜遅く迄演劇の練習をした後、みんなで後片付けをしていた。
この片付けをきちんとしていなとジャルカの補習が増えるのだ。
ジャンヌもそのせいで熱心に片付けだけはやっていた。
「殿下」
その中のオーウェンにジェキンスが声をかける。
「どうした?」
オーウェンがジェキンスに近寄る。
「ボフミエの皇帝が今回の演劇を見に来るそうです」
オーウェンの耳元でジェキンスは囁いた。
「あの皇帝が?」
およそ子供の事など全く興味の無さそうな皇帝がわざわざマーマレードまで子供の観劇に来るなど信じられなかった。
「狙いは何だ?」
「判りませんが、マーマレードの魔導電話に興味を持ったとか」
「確かに潜入させる目的で餌に出したが、そんなのに釣られるのか」
オーウェンは気になった。
あの皇帝がわざわざ自ら来るという事は絶対に何かあるはずだ。
「陛下には私からも伝えるが、東方方面軍に警戒するように伝えてくれ」
「しかし、あの連中が殿下のいう事を聞きますか…」
言いにくそうにジェキンスは言う。
確かに東方方面軍は反皇帝派が大半をしめている。
「アルバート!」
オーウェンはクリスの横で手伝っているアルバートを呼んだ。
「何ですか。私の主はクリス様ですが…」
ブスっとしてアルバートが言う。
「そのクリスの事だ」
声を抑えてオーウェンは言う。
「クリス様の?」
訝し気にクリスの方を見てアルバートが言う。
「ボフミエの皇帝が来る」
「あの不遜な皇帝が。何をしにこんなところに」
アルバートは不審そうに聞く。
「本来息子の観劇など来るのは絶対におかしいのだ」
「それはそうですが、それとクリス様とどう関係が」
「マーマレードの王弟反逆の時クリスは率先して軍の先頭に立ったな」
「ええ」
アルバートは頷く。
「もし、何かあれば今回も先頭に立ちかねない。ボフミエのクラスメートに何かあってみろ。ボフミエ本国にでも怒鳴り込みに行き兼ねまい」
「それは確かに」
クリスの方を見ながらアルバートは頷いた。
「何も無いと思うが東方軍にも注意を払っておいて欲しい。最悪ボフミエ本国に進軍の可能性もある」
「なるほど、父に注意を払うように伝えろと」
「準備しておくに越した事はあるまい」
「まあ、クリス様にボフミエの皇帝が逆らったところでかなうわけはありませんが…」
シャラザールの化身がクリスに宿っている事を知ったアルバートはそう言った。
「いくらクリスの魔力が強大でもボフミエの魔術師は強力だぞ」
それを知らないオーウェンの考えと知っているアルバートと意見は食い違っていたが、
「準備をするに越した事はありませんね」
アルバートは念のために言った。
ボフミエの皇帝がとんでもない事を行ってクリスというかシャラザールの逆鱗に触れて瞬殺される可能性もある。そうなれば全面戦争もあり得るだろう。
玉を取られてボフミエ軍がどこまで戦えるかは判らなかったが、東方軍に準備させておくことも必要かと、アルバートは考えた。
「何を準備するんですか?」
そこに不審そうにしたクリスが来た。
「いやあ、ドラフォード国内の事だよ」
オーウェンは誤魔化す。
「そうです。ちょっと気になった事があったので」
アルバートも相槌をうつ。
「そうなのですね。アルバート様も国元で気になる事があればいつでもおっしゃって下さいね」
クリスが言う。
「何をおっしゃいます。私はクリス様の騎士です。
今はクリス様の事だけを考えるように父にはきつく言われております」
「えっでも、何かあればいつでも言ってよ。本当に」
クリスが気にして言う。
「今の地位に本当に満足しておりますのでお気遣い下さいますな。クリス様と一緒にいさせていただくと本当に為になりますし、自らの足りないところが判って勉強になります」
「おべっかは良いです」
「クリス様。私はたとえ相手が皇太子殿下にもおべっかは申しません」
アルバートは言い切る。
本当だと、いらないところで矜持の高いアルバートを睨みつけてオーウェンは頷いた。
「はいはい、判りました」
クリスは納得していないが一応頷く。
「クリス、片付けは終わったか」
ジャンヌが聞いてくる。
「はい、終わりました」
「あんまり遅いとまたジャルカがうるさい。そろそろ撤退しよう」
「判りました」
クリスは返事をする。
「さあ、そろそろ帰りましょう」
オーウェンらに言うと先に立って歩き出した。
「あっクリス寮まで送っていく」
オーウェンが言ってクリスを追いかける。
「オーウェン様。こんなにたくさんいるんですからいらないですよ」
「まあそう言わずに」
オーウェンは何とかクリスと話す機会を得ようとするが、
ドラフォードの貴族たちとエカテリーナに邪魔されたのは言うまでも無かった…
そこに白髪の老師が歩いてきた。
「ジャルカ様。お久しぶりです」
諜報局に久々に顔を出したジャルカを見て驚いてルーファスは声を上げた。
「久しぶりじゃのルーファス」
「どうされたのですか。ジャルカ様がこのようなところにいらっしゃるなど」
「少し気になる事があっての」
ジャルカは笑って言った。
ルーファスはイヤーな感じがした。
ジャルカが笑うとろくなことが無いのだ。
いつもは電話での指示だが、直接来たとなると本当にろくでも無い事なのかもしれない。
「いやあ、別にたいしたことは無いとは思うのだが、今回の学園祭にボフミエの皇帝が来ると聞いての」
その一言によって結局諜報局を総動員して徹夜の連続勤務になってしまったのだった。
ボフミエ皇帝来襲の知らせはボフミエからの留学生を恐慌に陥れた。
「どうしよう、父上に殺される」
ヘルマンは震えていた。
「私も一緒ですよ」
ペトロ・グリンゲンも震えていた。
「殿下方。そんなにおびえられることはありませんぞ。皇帝陛下はせっかくの機会にとマーマレードの国王陛下と魔導電話について話し合いに来られるのです」
護衛隊長のアーロン・マルクトシュテフトは言った。
「そんな訳は無いだろう。父上から言われていた命令がうまくいきそうにないのだ」
「お怒りのはずです」
二人は恐怖に震えて言った。
「何をおっしゃっているのです。先に帰られたフランツ・マルクス様からも今後の為に魔導電話の有効活用について研究するようにと皇帝陛下から指示が出ていると元気な便りが来ていたでは無いですか」
「まあそうだが」
「普通ならば投獄されても仕方が無かったかと思いますが」
二人の不安も少しは払しょくされた。
他の二人には家族から皇帝陛下から自分らがよくやっていると褒められたと、領地にて魔導電話の仕組みを使った上映会が開かれるので見るのを楽しみにしていると手紙も来ていた。
しかし、あの皇帝がこの様でにこにこしていると到底思えないとフェビアンは思っていた。
その日も夜遅く迄演劇の練習をした後、みんなで後片付けをしていた。
この片付けをきちんとしていなとジャルカの補習が増えるのだ。
ジャンヌもそのせいで熱心に片付けだけはやっていた。
「殿下」
その中のオーウェンにジェキンスが声をかける。
「どうした?」
オーウェンがジェキンスに近寄る。
「ボフミエの皇帝が今回の演劇を見に来るそうです」
オーウェンの耳元でジェキンスは囁いた。
「あの皇帝が?」
およそ子供の事など全く興味の無さそうな皇帝がわざわざマーマレードまで子供の観劇に来るなど信じられなかった。
「狙いは何だ?」
「判りませんが、マーマレードの魔導電話に興味を持ったとか」
「確かに潜入させる目的で餌に出したが、そんなのに釣られるのか」
オーウェンは気になった。
あの皇帝がわざわざ自ら来るという事は絶対に何かあるはずだ。
「陛下には私からも伝えるが、東方方面軍に警戒するように伝えてくれ」
「しかし、あの連中が殿下のいう事を聞きますか…」
言いにくそうにジェキンスは言う。
確かに東方方面軍は反皇帝派が大半をしめている。
「アルバート!」
オーウェンはクリスの横で手伝っているアルバートを呼んだ。
「何ですか。私の主はクリス様ですが…」
ブスっとしてアルバートが言う。
「そのクリスの事だ」
声を抑えてオーウェンは言う。
「クリス様の?」
訝し気にクリスの方を見てアルバートが言う。
「ボフミエの皇帝が来る」
「あの不遜な皇帝が。何をしにこんなところに」
アルバートは不審そうに聞く。
「本来息子の観劇など来るのは絶対におかしいのだ」
「それはそうですが、それとクリス様とどう関係が」
「マーマレードの王弟反逆の時クリスは率先して軍の先頭に立ったな」
「ええ」
アルバートは頷く。
「もし、何かあれば今回も先頭に立ちかねない。ボフミエのクラスメートに何かあってみろ。ボフミエ本国にでも怒鳴り込みに行き兼ねまい」
「それは確かに」
クリスの方を見ながらアルバートは頷いた。
「何も無いと思うが東方軍にも注意を払っておいて欲しい。最悪ボフミエ本国に進軍の可能性もある」
「なるほど、父に注意を払うように伝えろと」
「準備しておくに越した事はあるまい」
「まあ、クリス様にボフミエの皇帝が逆らったところでかなうわけはありませんが…」
シャラザールの化身がクリスに宿っている事を知ったアルバートはそう言った。
「いくらクリスの魔力が強大でもボフミエの魔術師は強力だぞ」
それを知らないオーウェンの考えと知っているアルバートと意見は食い違っていたが、
「準備をするに越した事はありませんね」
アルバートは念のために言った。
ボフミエの皇帝がとんでもない事を行ってクリスというかシャラザールの逆鱗に触れて瞬殺される可能性もある。そうなれば全面戦争もあり得るだろう。
玉を取られてボフミエ軍がどこまで戦えるかは判らなかったが、東方軍に準備させておくことも必要かと、アルバートは考えた。
「何を準備するんですか?」
そこに不審そうにしたクリスが来た。
「いやあ、ドラフォード国内の事だよ」
オーウェンは誤魔化す。
「そうです。ちょっと気になった事があったので」
アルバートも相槌をうつ。
「そうなのですね。アルバート様も国元で気になる事があればいつでもおっしゃって下さいね」
クリスが言う。
「何をおっしゃいます。私はクリス様の騎士です。
今はクリス様の事だけを考えるように父にはきつく言われております」
「えっでも、何かあればいつでも言ってよ。本当に」
クリスが気にして言う。
「今の地位に本当に満足しておりますのでお気遣い下さいますな。クリス様と一緒にいさせていただくと本当に為になりますし、自らの足りないところが判って勉強になります」
「おべっかは良いです」
「クリス様。私はたとえ相手が皇太子殿下にもおべっかは申しません」
アルバートは言い切る。
本当だと、いらないところで矜持の高いアルバートを睨みつけてオーウェンは頷いた。
「はいはい、判りました」
クリスは納得していないが一応頷く。
「クリス、片付けは終わったか」
ジャンヌが聞いてくる。
「はい、終わりました」
「あんまり遅いとまたジャルカがうるさい。そろそろ撤退しよう」
「判りました」
クリスは返事をする。
「さあ、そろそろ帰りましょう」
オーウェンらに言うと先に立って歩き出した。
「あっクリス寮まで送っていく」
オーウェンが言ってクリスを追いかける。
「オーウェン様。こんなにたくさんいるんですからいらないですよ」
「まあそう言わずに」
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