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第四章 王立高等学園
大国皇太子は戦災孤児を勇気付けました
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「アルバート大丈夫?」
授業が終わってクリスが慌ててアルバートに駆け寄った。
「大丈夫ですよ。久しぶりに稽古をつけて頂きました。やはりクリス様を守るにはこれくらいやらないと」
「何言ってるのよ。ジャルカ様は当代一の魔導師よ。あなたが勝てるわけないじゃない」
クリスはそう言うとアルバートに肩を貸して外に連れ出した。
「ちょっとクリス?俺は全くの無視なの?」
エカテリーナに介護されようとしていたオーウェンが叫んで、慌てて追いかける。
「オーウェン様」
その後をエカテリーナが追いかけて行った。
「ふんっ!何が当代一だよ。よぼよぼの爺さんが!」
アルバートやオーウェンの倍以上の攻撃を受けたヘルマンがようやく起き上がる。
フェビアン・クライルハイムら側近に手当てされているヘルマンがクリスが見えなくなってから減らず口を叩い。
「全く相手にされもしないやつが良く言うよ!」
ジャンヌが起き上がりながら言う。
「この世でジャルカに勝てるのはクリス嬢だけだよ」
ボソリとジャンヌに肩を貸して起き上がらせながらアレクが言う。
「バカ言うなよ。」
「お前のところの教師は魔術の能力はそこそこあったろ。でもクリスには全く太刀打ち出来なかったろうが」
「手を抜いて油断しただけだろう」
「クリス嬢も手を抜いていたよ。」
アレクが言う。
「お前ら、余り命を縮めることをするなよ。クリス嬢がキレたら王都なんて一瞬で灰だからな!
側近どももその坊っちゃんをちゃんと見ておけよ。
何考えているのか判らんが…
うちの二個師団を一瞬で壊滅したのはクリス嬢だぞ!」
その言葉にフェビアンら側近は顔を見合わせた。
「ふんっ。そんな事が信じられるかよ」
「信じる信じないは自由さ。でも俺を巻き込むなよ。その時は俺がお前らを消す」
その戦乱を生き抜いてきた赤い死神の言葉に残された四人は震えて何一つ返せなかった。
その放課後せっかくクリスと一緒に図書館で勉強出来る時間を削って再びオーウェンは街に出ていた。
昨日歩いた道を辿りとある家の前に立つ。
呼び鈴を引くが誰も出て来なかった。
ジャックは丘の上からぼうっと王都を眺めていた。
昨日はずうっと珍しく考え事をした。
誰かから聞いたのか母からもいろんな事を聞いた。
昨日は赤い死神にしたことは後悔しなかったがクリスにはひどい事を言ったなと後悔していた。
そのジャックの後ろから影がさした。
「おっちゃん?」
昨日クリスと一緒にいたおじさんが後ろにいた。
「オウお兄ちゃんだ。おっちゃんじゃ無い!」
オーウェンは言い直した。
「俺から見たらおっちゃんじゃん?」
「まだ二十歳になったばかりでおっちゃんはないだろ!」
「えっ。そんなに変わんないだろ」
そういうジャックにくわっと目を向いて睨み付けると
「仕方がないな。そのお兄さんが何の用?」
ジャックは言い直した。
「隣座っても良いか?」
ジャックは頷いた。
「良くここが判ったね?」
「家の周りにいた子らに聞いた。何かあったときは良くここにいるって」
「そっか。で昨日の説教しに来たの?」
「まさか。昨日は悪かったな。あいつらがついて来ているのに気づかなくって」
「なんで謝るの?」
ジャックが聞く。
「俺だったら嫌だ。親を殺したやつに会ったら坊主と同じように反応するよ。
それに良くやったな。赤い死神相手に。
赤い死神に鉄槌下したのは坊主くらいだぞ」
「ううん。そもそも赤い死神はジャンヌ様が退治してくれたんだ。だから赤い死神はジャンヌ様に頭が上がらないって。」
「確かにそうだな。あいつは何時もジャンヌに声かけて振られている」
「オウ兄ちゃん、凄いね。王女様を呼び捨てなんて」
「まあ一緒の学園のクラスメートだからな」
「すごいよね。今の学園はドラフォードの皇太子様もいるんでしょ。何時もクリス姉ちゃんに手を出そうとして振られているって母ちゃんが言っていた」
「君の母さんそんなことまで知っているのか」
「王宮では有名なんだって。でも母ちゃんらは嫌がっていた。あの二人がうまくいったら姉ちゃんがマーマレードからいなくなっちゃうからって」
「そうか赤い死神だけでなくてドラフォードの皇太子もマーマレードの奴等には嫌われているのか」
オーウェンは聞いた。
「うーん。ドラフォードは仲間だからね。そこまででは無いんじゃない」
「そうかそうか」
急にオーウェンは喜び出した。
「それに赤い死神もジャンヌ様の下僕になるなら許せるって皆は言ってる」
「ジャックはどうなんだ?」
「父ちゃんを殺したのは許せない。
でもいつまでも敵を憎んでいるのはどうかなって」
そう言うとオーウェンを見て
「クリス姉ちゃんも赤い死神に殺されそうになったんでしょ。でも今は普通に接しているし。
それに今回の反乱でも反乱した兵士たちを許したって。自分を殺しに来た奴等をやっつけて部下にしたって本当?」
「ああ。姉ちゃんは凄かったぞ。一人で一個大隊をやっつけて味方にしたんだから」
「そうか。そんな姉ちゃんに惚れたのか!」
「俺はずうっと昔から姉ちゃんが小さい時から好きだったの」
「昔って姉ちゃん子供じゃん。
おっちゃんロリコンなの?」
「おい待て。なんでそんな言葉知ってる?というかその時は俺も子供なの」
「えっ嘘?」
「年は姉ちゃんと三つしか変わらないよ」
オーウェンは心外だという顔で言った。
「まあその話は良いけどジャックは本当に赤い死神を許せるのか?
そう簡単には許せないだろう?」
「まあそれはそうだけど、少しずつ努力はしていく。
そんな事より姉ちゃんに悪い事をしたかなって」
下を見て足で地面を擦りながらジャックは言う。
「そうだな。姉ちゃんはちょっと気にしてたぞ」
ここぞとばかりにオーウェンは強調する。
「だよね。オウ兄ちゃん。また姉ちゃんに謝っておいてよ」
「やなこった。謝るなら自分で電話で謝んな」
オーウェンはジャックに言った。
「でも、姉ちゃん怒ってないかな」
「大丈夫だよ。なんなら横にいてやるよ」
「本当に?オウ兄ちゃんって良い奴だね」
と言うとジャックは深呼吸した。
そして思いっきってボタンを押す
「ジャック?」
クリスは驚いて電話にでた。
「姉ちゃんごめんね。昨日は嫌いだって言って」
「なに言ってるのよ。こちらこそ御免なさいね。いきなりあなたのお父様の仇を連れて行って。お母さんに色々言われたの?」
「まあそうだけど。ちょっと突然だったからビックリしただけで。
赤い死神もジャンヌ様の尻に敷かれているから少しは許してやりなさいって母ちゃんも言ってたし。姉ちゃんも赤い死神に思う所も色々あるのにちゃんとやってるし」
「それは少しは大人になったからだよ。
今はまだジャックはそこまで大人にならなくても良いんじゃないかな」
クリスは考えながら言う。
「俺もいつまでもガキじゃないよ。
まだまだだけどいずれは立派な騎士になるよ。だから姉ちゃんその時は俺の誓いを受けてね」
「判った。約束する」
「約束だよ」
二人は電話越しに指切りをしていた。
それをオーウェンは複雑な気持ちで見ていた。
ほのぼのする光景だけど、そうなったらクリスを連れてドラフォードへ帰れないんじゃないかと。
そんなオーウェンの心配などどこ吹く風で二人は笑い合って電話を切った。
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「大丈夫ですよ。久しぶりに稽古をつけて頂きました。やはりクリス様を守るにはこれくらいやらないと」
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「ちょっとクリス?俺は全くの無視なの?」
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「オーウェン様」
その後をエカテリーナが追いかけて行った。
「ふんっ!何が当代一だよ。よぼよぼの爺さんが!」
アルバートやオーウェンの倍以上の攻撃を受けたヘルマンがようやく起き上がる。
フェビアン・クライルハイムら側近に手当てされているヘルマンがクリスが見えなくなってから減らず口を叩い。
「全く相手にされもしないやつが良く言うよ!」
ジャンヌが起き上がりながら言う。
「この世でジャルカに勝てるのはクリス嬢だけだよ」
ボソリとジャンヌに肩を貸して起き上がらせながらアレクが言う。
「バカ言うなよ。」
「お前のところの教師は魔術の能力はそこそこあったろ。でもクリスには全く太刀打ち出来なかったろうが」
「手を抜いて油断しただけだろう」
「クリス嬢も手を抜いていたよ。」
アレクが言う。
「お前ら、余り命を縮めることをするなよ。クリス嬢がキレたら王都なんて一瞬で灰だからな!
側近どももその坊っちゃんをちゃんと見ておけよ。
何考えているのか判らんが…
うちの二個師団を一瞬で壊滅したのはクリス嬢だぞ!」
その言葉にフェビアンら側近は顔を見合わせた。
「ふんっ。そんな事が信じられるかよ」
「信じる信じないは自由さ。でも俺を巻き込むなよ。その時は俺がお前らを消す」
その戦乱を生き抜いてきた赤い死神の言葉に残された四人は震えて何一つ返せなかった。
その放課後せっかくクリスと一緒に図書館で勉強出来る時間を削って再びオーウェンは街に出ていた。
昨日歩いた道を辿りとある家の前に立つ。
呼び鈴を引くが誰も出て来なかった。
ジャックは丘の上からぼうっと王都を眺めていた。
昨日はずうっと珍しく考え事をした。
誰かから聞いたのか母からもいろんな事を聞いた。
昨日は赤い死神にしたことは後悔しなかったがクリスにはひどい事を言ったなと後悔していた。
そのジャックの後ろから影がさした。
「おっちゃん?」
昨日クリスと一緒にいたおじさんが後ろにいた。
「オウお兄ちゃんだ。おっちゃんじゃ無い!」
オーウェンは言い直した。
「俺から見たらおっちゃんじゃん?」
「まだ二十歳になったばかりでおっちゃんはないだろ!」
「えっ。そんなに変わんないだろ」
そういうジャックにくわっと目を向いて睨み付けると
「仕方がないな。そのお兄さんが何の用?」
ジャックは言い直した。
「隣座っても良いか?」
ジャックは頷いた。
「良くここが判ったね?」
「家の周りにいた子らに聞いた。何かあったときは良くここにいるって」
「そっか。で昨日の説教しに来たの?」
「まさか。昨日は悪かったな。あいつらがついて来ているのに気づかなくって」
「なんで謝るの?」
ジャックが聞く。
「俺だったら嫌だ。親を殺したやつに会ったら坊主と同じように反応するよ。
それに良くやったな。赤い死神相手に。
赤い死神に鉄槌下したのは坊主くらいだぞ」
「ううん。そもそも赤い死神はジャンヌ様が退治してくれたんだ。だから赤い死神はジャンヌ様に頭が上がらないって。」
「確かにそうだな。あいつは何時もジャンヌに声かけて振られている」
「オウ兄ちゃん、凄いね。王女様を呼び捨てなんて」
「まあ一緒の学園のクラスメートだからな」
「すごいよね。今の学園はドラフォードの皇太子様もいるんでしょ。何時もクリス姉ちゃんに手を出そうとして振られているって母ちゃんが言っていた」
「君の母さんそんなことまで知っているのか」
「王宮では有名なんだって。でも母ちゃんらは嫌がっていた。あの二人がうまくいったら姉ちゃんがマーマレードからいなくなっちゃうからって」
「そうか赤い死神だけでなくてドラフォードの皇太子もマーマレードの奴等には嫌われているのか」
オーウェンは聞いた。
「うーん。ドラフォードは仲間だからね。そこまででは無いんじゃない」
「そうかそうか」
急にオーウェンは喜び出した。
「それに赤い死神もジャンヌ様の下僕になるなら許せるって皆は言ってる」
「ジャックはどうなんだ?」
「父ちゃんを殺したのは許せない。
でもいつまでも敵を憎んでいるのはどうかなって」
そう言うとオーウェンを見て
「クリス姉ちゃんも赤い死神に殺されそうになったんでしょ。でも今は普通に接しているし。
それに今回の反乱でも反乱した兵士たちを許したって。自分を殺しに来た奴等をやっつけて部下にしたって本当?」
「ああ。姉ちゃんは凄かったぞ。一人で一個大隊をやっつけて味方にしたんだから」
「そうか。そんな姉ちゃんに惚れたのか!」
「俺はずうっと昔から姉ちゃんが小さい時から好きだったの」
「昔って姉ちゃん子供じゃん。
おっちゃんロリコンなの?」
「おい待て。なんでそんな言葉知ってる?というかその時は俺も子供なの」
「えっ嘘?」
「年は姉ちゃんと三つしか変わらないよ」
オーウェンは心外だという顔で言った。
「まあその話は良いけどジャックは本当に赤い死神を許せるのか?
そう簡単には許せないだろう?」
「まあそれはそうだけど、少しずつ努力はしていく。
そんな事より姉ちゃんに悪い事をしたかなって」
下を見て足で地面を擦りながらジャックは言う。
「そうだな。姉ちゃんはちょっと気にしてたぞ」
ここぞとばかりにオーウェンは強調する。
「だよね。オウ兄ちゃん。また姉ちゃんに謝っておいてよ」
「やなこった。謝るなら自分で電話で謝んな」
オーウェンはジャックに言った。
「でも、姉ちゃん怒ってないかな」
「大丈夫だよ。なんなら横にいてやるよ」
「本当に?オウ兄ちゃんって良い奴だね」
と言うとジャックは深呼吸した。
そして思いっきってボタンを押す
「ジャック?」
クリスは驚いて電話にでた。
「姉ちゃんごめんね。昨日は嫌いだって言って」
「なに言ってるのよ。こちらこそ御免なさいね。いきなりあなたのお父様の仇を連れて行って。お母さんに色々言われたの?」
「まあそうだけど。ちょっと突然だったからビックリしただけで。
赤い死神もジャンヌ様の尻に敷かれているから少しは許してやりなさいって母ちゃんも言ってたし。姉ちゃんも赤い死神に思う所も色々あるのにちゃんとやってるし」
「それは少しは大人になったからだよ。
今はまだジャックはそこまで大人にならなくても良いんじゃないかな」
クリスは考えながら言う。
「俺もいつまでもガキじゃないよ。
まだまだだけどいずれは立派な騎士になるよ。だから姉ちゃんその時は俺の誓いを受けてね」
「判った。約束する」
「約束だよ」
二人は電話越しに指切りをしていた。
それをオーウェンは複雑な気持ちで見ていた。
ほのぼのする光景だけど、そうなったらクリスを連れてドラフォードへ帰れないんじゃないかと。
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