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第四章 王立高等学園
大国皇太子とクリスのデートで何故か赤い死神が暴風王女に告白しました
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エカテリーナは結局喫茶エスまで泣き止まず、止む終えず、オーウェンは一緒に入ることにした。
せっかくクリスとの初めてのデートだったのに…・
店の中を見るとアンナ達はまだ来ていなかった。
仕方なしに泣く泣くエカテリーナと同じ席にする。
オーウェンとクリスが並んで座ってその向かいにエカテリーナが座る。
「そうこの喫茶に一度でいいから来たかったんです。
女の子にものすごく人気ですよね」
さっき泣いていたエカテリーナはもう笑っていた。
「お友達はいらっしゃいませんね」
オーウェンが嫌味を言う。
「もう来ると思いますわ。ここ人気でなかなか予約も取れないんですよね」
エカテリーナが言う。
そう予約が取りれないので伝の伝を使って頼み込んで何とか予約してもらったのだ。
せっかくクリスの為に予約したのに、エカテリーナが一緒なんてどんな罰ゲームなんだか。
周りを見ると緑と青の原色系の衣装に身を包んでサングラスした二人がとなりの席に座っていた。
甘いものがメインのカフェで男二人も変だが、その色合いが。
何処かで見たことのある顔だなとオーウェンは思う。
「アレク、なんでお前の妹が一緒にいるんだ」
隠れて探っていたジャンヌが3人で入ってきたクリス達を見て言う。
「本当ですわ。私たちがここに隠れている意味全くないんじゃないですか」
ガーネットとが切れて言う。
「いや、そんなこと言われても俺も知らないよ」
アレクは言う。
「そもそも今日の事は何も言っていないし」
「最初から邪魔していたら意味ないんじゃない」
せっかく無理言って貸し切りにして、隠れて座っているジャンヌらだったが。
オーウェンの席の周りは変装した魔導独立中隊の面々を座らせたのに。
「せっかくの変装が台無しじゃないか」
ジャンヌが言う。
「いや待て、ザンとヨハンが原色系の衣装で座っているだけで、メチャクチャ目立っているんだが。
どう見てもすぐに変な奴って判るだろう」
アレクが言う。
元々魔導中隊の面々の私服が変だ。
魔導師は元々少し感覚がずれているのかもしれない。
「エカテリーナ様。すいません。遅くなりました」
そこに取り巻きの3人が合流した。
「あっクリス様」
あっという間にクリスが取り囲まれてしまう。
オーウェンは頭を抱えてしまった。
「アレク、全部お前んとこの国の奴らじゃん。
もう今日はお前のおごり」
ジャンヌが切れて立ち上がった。
「えっもうやめ?」
ウイルも続く。
「ちょっとウイル待ってよ」
隠れていた面々があっという間に現れた。
「やっぱお前らグルか!」
オーウェンは叫んでいた。
*********************************************************
オーウェンは不機嫌にランチを食べていた。
同じテーブルにはアレクとジャンヌとウイルとガーネットと、エカテリーナが。
前回はクリスと二人きりでは無かったが、まだ、オーウェンはクリスと並んで座れていた。
でも、ここにはクリスの代わりにエカテリーナがいる。
クリスはノルディンの3人娘とイザベラとナタリーに囲まれて女子トークで盛り上がっていた。
「どうしたオーウェン不機嫌そうにして」
ジャンヌが動ぜずに言う。
「はんっ!
本来ならクリスと二人きりだったのに。お前らの厚い友情に感謝のあまり言葉も出ないよ」
嫌味をオーウェンが言う。
「感謝したいなら金をくれ」
ジャンヌが手を出す。
その手を思いっきりは叩こうとするがジャンヌはさっと手を引っ込めたので思いっきり机を叩くことになる。
「痛っ!」
オーウェンが悶絶する。
「馬鹿だな」
アレクがパンを口に運ぶ。
「アッこれおいしい」
誰もオーウェンのいう事を聞いておらず、勝手に食べている。
「ガーネットお前までなんでいるんだ」、
「ジャンヌお姉さまらが邪魔しないように見張ってようとしたら
アレクの妹がすでに邪魔していたのよ」
ガーネットが言い訳する。
向こうではキャッキャッと楽しそうに6人で話している。
「で、エカテリーナ姫。そろそろ邪魔するの止めて頂きたいんですけど」
オーウェンが迷惑そうに言う。
「私本気なんかですけど」
すましてエカテリーナが言う。
「初めてオーウェン様見た時から好きになりました」
真っ赤になって言う。どこまで本気か判らないが。
「兄弟そろって俺らの邪魔するな」
冗談だと思ってオーウェンが言う。
「酷いオーウェン様。乙女心をもてあそんで!」
エカテリーナは泣きまねする。
「デートを邪魔されて泣きたいのは俺だ」
オーウェンが言う。
「心外だな。俺はあれ以来君たちの邪魔はしていないぞ」
アレクが言う。
「じゃあ今日はここから帰ってくれ」
「そんな、こんなに面白い事久しぶりだ。
そう簡単に見逃せないよ」
「邪魔だから失せろって言っているんだよ」
切れ気味にオーウェンが言う。
「まあ、君一人の魅力よりも彼女ら5人がかりの方が魅力的なんじゃないか」
アレクが言う。
「ふんっ。人の事よりもアレク、自分の事を心配したらどうだ。
少なくとも俺らは同盟国だけどお前は敵国の王女と付き合えるのか」
「オーウェン待て、アレクとなんか付き合ってないぞ。」
ジャンヌが言い切る。
それを無視して
「マーマレードにはいまだにノルディン許すまじという雰囲気があるぞ。
その中どうすんだよ。相手も皇太子だぞ。
なあエカテリーナ」
オーウェンがその妹に振る。。
「お兄様とジャンヌ様がくっついてオーウェン様と私がくっつけば、3国同盟が出来ますわよ」
エカテリーナはさらりと言う。
「そうそれでいいんじゃない」
無責任にアレクは頷く。
「勝手に妹とくっつけるな」
「でも、姫様とアレク様ってもし結婚するならどちらの国に住むんですか」
ウイルが聞く。
「ウイル殺すぞ。アレクとは付き合っていない」
ジャンヌが言うが誰も聞いていない。
「いや、でも姫様。本当にどうするんですか」
後ろからライラが顔をのぞかせて聞く。
「エド様がクリス様の件で皇太子位剥奪されているから、基本はノルディンに嫁ぐことできないですよ。アレク殿下はマーマレードに婿入りされるんですか?」
「しても良いと思っているよ」
アレクがさらりと言う。
「えええ!お兄様、皇帝位を捨てるんですか」
エカテリーナが驚いて聞く。
「皇帝位なんてジャンヌと一緒にいる事に比べたらたいしたことないさ」
「はんっ何言っているのよ」
ジャンヌがガラにもなく真っ赤になって叫んでいた。
「あなたが皇太子の地位を捨てられるわけないでしょ!」
「だから言ってるでしょ。
ジャンヌとなら例え火の中水の中どこでも行けるって」
そう言うといきなりアレクは立ち上がってジャンヌの前に跪いた。
喧騒の中にあった店内がみんなアレクに注目する。
クリスらも話すのを止めてアレクを注目する。
「ジャンヌ姫。例えどんな茨の道であってもあなたを守り切ると誓います。
どうか私と同じ道を歩んでください」
そう言って手を差し出す。
「出来るか!」
真っ赤になってその手を思いっきりジャンヌははたいていた。
せっかくクリスとの初めてのデートだったのに…・
店の中を見るとアンナ達はまだ来ていなかった。
仕方なしに泣く泣くエカテリーナと同じ席にする。
オーウェンとクリスが並んで座ってその向かいにエカテリーナが座る。
「そうこの喫茶に一度でいいから来たかったんです。
女の子にものすごく人気ですよね」
さっき泣いていたエカテリーナはもう笑っていた。
「お友達はいらっしゃいませんね」
オーウェンが嫌味を言う。
「もう来ると思いますわ。ここ人気でなかなか予約も取れないんですよね」
エカテリーナが言う。
そう予約が取りれないので伝の伝を使って頼み込んで何とか予約してもらったのだ。
せっかくクリスの為に予約したのに、エカテリーナが一緒なんてどんな罰ゲームなんだか。
周りを見ると緑と青の原色系の衣装に身を包んでサングラスした二人がとなりの席に座っていた。
甘いものがメインのカフェで男二人も変だが、その色合いが。
何処かで見たことのある顔だなとオーウェンは思う。
「アレク、なんでお前の妹が一緒にいるんだ」
隠れて探っていたジャンヌが3人で入ってきたクリス達を見て言う。
「本当ですわ。私たちがここに隠れている意味全くないんじゃないですか」
ガーネットとが切れて言う。
「いや、そんなこと言われても俺も知らないよ」
アレクは言う。
「そもそも今日の事は何も言っていないし」
「最初から邪魔していたら意味ないんじゃない」
せっかく無理言って貸し切りにして、隠れて座っているジャンヌらだったが。
オーウェンの席の周りは変装した魔導独立中隊の面々を座らせたのに。
「せっかくの変装が台無しじゃないか」
ジャンヌが言う。
「いや待て、ザンとヨハンが原色系の衣装で座っているだけで、メチャクチャ目立っているんだが。
どう見てもすぐに変な奴って判るだろう」
アレクが言う。
元々魔導中隊の面々の私服が変だ。
魔導師は元々少し感覚がずれているのかもしれない。
「エカテリーナ様。すいません。遅くなりました」
そこに取り巻きの3人が合流した。
「あっクリス様」
あっという間にクリスが取り囲まれてしまう。
オーウェンは頭を抱えてしまった。
「アレク、全部お前んとこの国の奴らじゃん。
もう今日はお前のおごり」
ジャンヌが切れて立ち上がった。
「えっもうやめ?」
ウイルも続く。
「ちょっとウイル待ってよ」
隠れていた面々があっという間に現れた。
「やっぱお前らグルか!」
オーウェンは叫んでいた。
*********************************************************
オーウェンは不機嫌にランチを食べていた。
同じテーブルにはアレクとジャンヌとウイルとガーネットと、エカテリーナが。
前回はクリスと二人きりでは無かったが、まだ、オーウェンはクリスと並んで座れていた。
でも、ここにはクリスの代わりにエカテリーナがいる。
クリスはノルディンの3人娘とイザベラとナタリーに囲まれて女子トークで盛り上がっていた。
「どうしたオーウェン不機嫌そうにして」
ジャンヌが動ぜずに言う。
「はんっ!
本来ならクリスと二人きりだったのに。お前らの厚い友情に感謝のあまり言葉も出ないよ」
嫌味をオーウェンが言う。
「感謝したいなら金をくれ」
ジャンヌが手を出す。
その手を思いっきりは叩こうとするがジャンヌはさっと手を引っ込めたので思いっきり机を叩くことになる。
「痛っ!」
オーウェンが悶絶する。
「馬鹿だな」
アレクがパンを口に運ぶ。
「アッこれおいしい」
誰もオーウェンのいう事を聞いておらず、勝手に食べている。
「ガーネットお前までなんでいるんだ」、
「ジャンヌお姉さまらが邪魔しないように見張ってようとしたら
アレクの妹がすでに邪魔していたのよ」
ガーネットが言い訳する。
向こうではキャッキャッと楽しそうに6人で話している。
「で、エカテリーナ姫。そろそろ邪魔するの止めて頂きたいんですけど」
オーウェンが迷惑そうに言う。
「私本気なんかですけど」
すましてエカテリーナが言う。
「初めてオーウェン様見た時から好きになりました」
真っ赤になって言う。どこまで本気か判らないが。
「兄弟そろって俺らの邪魔するな」
冗談だと思ってオーウェンが言う。
「酷いオーウェン様。乙女心をもてあそんで!」
エカテリーナは泣きまねする。
「デートを邪魔されて泣きたいのは俺だ」
オーウェンが言う。
「心外だな。俺はあれ以来君たちの邪魔はしていないぞ」
アレクが言う。
「じゃあ今日はここから帰ってくれ」
「そんな、こんなに面白い事久しぶりだ。
そう簡単に見逃せないよ」
「邪魔だから失せろって言っているんだよ」
切れ気味にオーウェンが言う。
「まあ、君一人の魅力よりも彼女ら5人がかりの方が魅力的なんじゃないか」
アレクが言う。
「ふんっ。人の事よりもアレク、自分の事を心配したらどうだ。
少なくとも俺らは同盟国だけどお前は敵国の王女と付き合えるのか」
「オーウェン待て、アレクとなんか付き合ってないぞ。」
ジャンヌが言い切る。
それを無視して
「マーマレードにはいまだにノルディン許すまじという雰囲気があるぞ。
その中どうすんだよ。相手も皇太子だぞ。
なあエカテリーナ」
オーウェンがその妹に振る。。
「お兄様とジャンヌ様がくっついてオーウェン様と私がくっつけば、3国同盟が出来ますわよ」
エカテリーナはさらりと言う。
「そうそれでいいんじゃない」
無責任にアレクは頷く。
「勝手に妹とくっつけるな」
「でも、姫様とアレク様ってもし結婚するならどちらの国に住むんですか」
ウイルが聞く。
「ウイル殺すぞ。アレクとは付き合っていない」
ジャンヌが言うが誰も聞いていない。
「いや、でも姫様。本当にどうするんですか」
後ろからライラが顔をのぞかせて聞く。
「エド様がクリス様の件で皇太子位剥奪されているから、基本はノルディンに嫁ぐことできないですよ。アレク殿下はマーマレードに婿入りされるんですか?」
「しても良いと思っているよ」
アレクがさらりと言う。
「えええ!お兄様、皇帝位を捨てるんですか」
エカテリーナが驚いて聞く。
「皇帝位なんてジャンヌと一緒にいる事に比べたらたいしたことないさ」
「はんっ何言っているのよ」
ジャンヌがガラにもなく真っ赤になって叫んでいた。
「あなたが皇太子の地位を捨てられるわけないでしょ!」
「だから言ってるでしょ。
ジャンヌとなら例え火の中水の中どこでも行けるって」
そう言うといきなりアレクは立ち上がってジャンヌの前に跪いた。
喧騒の中にあった店内がみんなアレクに注目する。
クリスらも話すのを止めてアレクを注目する。
「ジャンヌ姫。例えどんな茨の道であってもあなたを守り切ると誓います。
どうか私と同じ道を歩んでください」
そう言って手を差し出す。
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