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第四章 王立高等学園

ジャルカのホームルームでクリスは学祭実行委員になります

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その日の最初の授業はホームルームだった。
担任は昨日のヒルシュ教授のはずだった。

チャイムが鳴る。

「セーフ」
ギリギリにパンを咥えたジャンヌが滑り込む。

「アウトですな」
出席簿で教壇に立っていたジャルカがジャンヌを叩く。

「相も変わらず、朝が遅いです。
それと教室は飲食禁止です…」

「なんでジャルカがここにいる?」
驚いてジャンヌが言った。

「そんなの姫様のせいに決まっているでしょ!
せっかく王都ではのんびりできると思っていたのに、姫様方が、新学期始まってまだ2コマしかやっていないのに、なんで早くも二人の教授が辞表を出してきたんですか?」
ジト目でジャルカはジャンヌを見る。

「何でも1コマ目の物理の授業で魔法を使ってクレーターを作られた方が、4人もいらっしゃるとか。世界的な権威のヒルシュ教授がこんなことは我慢ならんと、辞表を出されたそうですぞ」

「でなんでジャルカ爺が?」

「そんなもんあなたの父上が泣き込んできたからに決まっているでしょ。
頼むからこれ以上の犠牲者を出させないでくれと」
1週間くらいは粘ろうとしたのに、毎時間教授が辞めていくと教授がいなくなるから何とかしろと。
あの後国王自ら電話してきたのだ。

「本当にこの国は人使いが荒いですからな」
ぶつぶつジャルカが文句を言っている。

「そうそう、私はボフミエ帝国ではよぼよぼの能無しじじいと言われているそうですな。ヘルマン殿下」
ニコッと笑ってジャルカが言う。

「いやいや、賢臣ジャルカとして、ボフミエ帝国にもお名前は響いていらっしゃいますよ」

「ありがとうございます。
そう言いながら陰でマーマレードでは人がいないからそう呼ばれているにすぎないとか言われているようにお伺いしますが」

「いやいや、どこの誰がそんなことを言っているのですか」
お前だよ。とみんなヘルマンを見る。

「まあ、それは良いとして、これからの授業ではくれぐれも余計な事はしないで下さいよ。
姫様とノルディン皇太子殿下」

「善処しよう」
ジャンヌが言う。

「そう願いますな。そのたびにこの年寄りの受け持つ授業が増えますからな。
宜しくお願いいたしますぞ」
そう言うとジャルカは皆を見回した。

「一応自己紹介をしておきましょうかな。
元魔導師のジャルカと申します。
国王陛下の逆鱗に触れまして、北方の辺境の地でに飛ばされて、目の前にいる姫様にこき使われていたじじいです。
やっと子守が終わったと思ったらまた一から子守になってしまったわけです。
もっともボフミエ国では死に遅れのじじいとか呼ばれております。
まあ年だけは食っておりますからの。
年の功で答えられるかもしれませんから、何でも聞いてください」
ジャルカは嫌味炸裂で自己紹介を終える。

「では今日は理事長から決めろと言われていることがありましてそれを決めたいと思います。
まず、クラス委員長と生徒会係を決めないといけないとか」
黒板にそれぞれ書く。

「で、普通なら立候補を聞くのですが、理事長と国王陛下からは昨日の1限目で世界的権威を怒らせた罰として、昨日の4人を当てたらどうだという意見がありまして、それでよろしいですね」
皆の意見聞かずに決めてしまう。

「なんでそんなことをやらないといけない」
ジャルカが反論する。

「あいつはそんなことではびくともしないから補習20時間が良いのではないかと
国王陛下はおっしゃっていましたがそちらの方が宜しいですか?」

「いえ、ジャルカ先生のおっしゃる通りで」
ジャンヌはあっさりと前言を撤回する。
補習なんてやってられないし、おそらくジャルカの補習になるはずだしそれはさすがに抜け出せない。

「では委員長は女はジャンヌ殿下で男はアレクサンドロ殿下で宜しいですな」
皆を見て聞く。

「では残りの生徒会はオーウェン殿下とエカテリーナ殿下で」

「先生」
そこでイザベラが手を挙げる。

「これはドラフォードのイザベラ様。何か案がおありか」

「女性の方はクリス様はどうでしょうか。ノルディンの方は既に委員長に皇太子殿下がなっていらっしゃいますし、マーマレードの方がジャンヌ様のみと言うのも少ないように思いますし。
クリス様は皆さんの人望も厚い手思いますので」

「えっ」
オーウェンは驚いた。今まで必死にオーウェンとくっついてきたイザベラがクリスを推すなんて信じられなかった。
絶体にイザベラ自身を自薦すると思っていたのだがどんな心境の変化なのだろう。

「いえっ。先生、私だけ免れるのは良くないと思いますので、私がさせて頂きます」
慌ててエカテリーナが言う。

「うーん、生徒会の仕事が罰則のようになっていますが、決してそんなにことはありませんぞ。
まあ、ただ、クリス様にはやって頂きたいこともありますしな、ここはエカテリーナ様でどうですかな」

「異議ありません。」
エカテリーナが真っ先に賛成する。

「ではここまでは宜しいですか。
次に本題です」
ここまでは前座かよっとみんなが突っ込んでいたが、学園祭実行委員とジャルカが書いて納得した。
12月にある学祭は一番大きな祭だった。

「では学祭の実行委員ですが、昨日の不幸な出来事、馬鹿な教師がしでかしたともいいますが、
ああいう事があるとまずいと思い、クリス様には魔力は使うなと言っておいたのですが。
まあ、教科担任が変わることになったので、罰と申しますか、これを姫様にしていただくとかえって私の仕事が100倍くらい増えますので、ここはクリス様にお願いしたいのですが。
クリス様は引き受けて頂けますか」
なんでそうなる。とジャンヌは不満だったが、ここで文句を言うとまた仕事が増えそうなので黙っていることにした。

「ジャルカ様がそうおっしゃるなら、私の能力では不足するかもしれませんが」
クリスが謙遜して言う。

「最悪は姫様を手伝わせますからの」
その言葉になんでジャルカの下働きをさせられると不満を覚えつつも一言話すと100倍くらい返ってきそうなのでジャンヌはここでも黙っていた。

「では男性は立候補を受け付けますぞ」
ジャルカが聞くと
あっという間に10名ほどが手を挙げた。
スミスやボフミエ帝国王子も手を挙げていた。そしてオーウェンまでもが。
皆クリスと近付きになりたかったが、王族も多くいるこのメンバーではなかなか近寄りがたい。
でも、同じ委員になるなら話せる機会も多かろうとみんなが思って手を挙げていた。

「オーウェン様。あなたは生徒会の仕事がありますからの」
ジャルカが注意する。
「2つはダメですか」
オーウェンが聞く。

「それはご遠慮願いたいですな。委員にならなくてもいくらでも手伝えますからの。
お手伝いでお願い致しますぞ」

「判りました」
残念そうにオーウェンは引き下がった。

結局男性の中からこの日初めて投票になり、スティーブン・スミスが6票獲得し学園祭実行委員になった。
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