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第三章 王弟反逆

王弟の決断

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そして、何故かそのあと一同でクリスのエイミーの墓詣りに付き合わされた。

「エイミー様。私のようなものがお参りすることをお許しください。
そして、ここに誓います。あなた様の息子を必ず生きてこの地に帰すと」
周りで聞いていた者は驚いた。
反逆罪は基本的に死刑だ。
その例外は無いと。

「皆様。今回、私の無理な願いを聞いていただいたこと、感謝に耐えません。」
クリスは振り向くとみんなに話し出した。

「王家にも今回の件はエイミー様の件をそのままにしていた罪があると思います。
あなた方のような忠義の方々が500人も王弟殿下に殉じようとされたことがその証かと。
幸いなことに今回の事件は死人がほとんど出ておりません。
私、クリスティーナ・ミハイル命に代えても王弟殿下を生きてこの地に帰すことを
エイミー様並びにシャラザールに誓いました。
対外的に領地の取り上げや死亡を言われるかもしれませんが、必ず生きてこの地に戻します。
皆さんも短慮することなくお待ちください。
この地はコールマン様にそのまま私の代理として治めて頂きます」

皆ポカンとしてクリスを見ていた。

ふつうそんなことが許されるのか?

というか、クリス自身が王弟にひどいことをされようとしていたのではないのか?

「ミハイル様。何卒宜しくお願いいたします」
コールマンが拝跪した。

「お願いいたします。」
ダニエルらも次々に拝跪する。

ここに聖女伝説にまた一つ伝説が加わった。

聖女クリスは聖なる涙を流すことによって反逆者たちの心を取り戻させて改心させたと。


「姉様、今回は降伏を勧告に行っただけだよね。
元々こうしようと思っていたの?」

「えっそんなことないわよ。
お願いしても聞いてもらえないと思っていたから
魔法で城壁を壊そうとは思っていたんだけど、まあ、城壁だけで済むかどうか自信が無かったけど」

-やはりそうか。姉様、力加減できないよね
ウィルは思った。

「でも、ちょっと泣き言、言い出したら止まらなくなってしまって
王妃様に対する不満とか全部ぶっちゃけていたら本当に止まらなくなってしまって
こうなったら泣き落とししかないって」
苦笑しながらクリスが言った。

「でも、王弟、改心させられるんですか?」
アルバートが聞く。

「まあ、出たとこ勝負だけど、
ジャルカ様からはエイミー様の件ある程度聞いているのだけど、おそらく王弟殿下にはきちんと伝わっていないんじゃないかな。
王弟殿下さえ捕まれば、その助命は国王陛下と王妃殿下に泣き落としで何とかするわ」
あっけらかんと言うクリスにウィルとアルバートは女の涙は怖いと感じた。
女の涙には気を付けようと二人して心に誓っていた。


一方王宮は王弟軍が制圧はしていた。
各師団長と閣議メンバーの拘束、
国王は一命を取り留めて治療させて王妃と一緒に地下牢に放り込んでいた。

しかし、王都はいつの間にか魔導第一師団と他師団によって解放されていた。
中央師団と近衛の一部によって王宮のみ支配できている状態となっていた。

「何、ホーエンガウがクリスによって解放されただと」
伝令にヘンリーは慌てた。

クリスの前に中央師団の大隊は降伏。
そのあとの話だ。
少しは時間が稼げるかとは思ったが、

「何故だ、コールナ―が滅ぼされたのか?」

「詳しくは不明ですが、無血開城ではないかと」
まさか、あのコールナ―が無血開城だと。

今まで自分に付き従ってくれていた。
あの城には一緒に殺したくない自分の思い出も、今までろくでも無かったが、その中でも自分に忠誠を誓ってきてくれた、主に老人を残してきた。
彼らに死んでほしかったわけでは当然ないが、無血開城とはそれだけ自分が信頼されていなかったという事か。
愛という言葉はむなしい響きだが、誰一人自分に殉じてくれなかったのか。

「そうか」
力なくヘンリーは言った。
コールナ―もクリスの小娘の前に降ったか。
悪魔のようにずる賢さで王宮を軍隊を自分の意のままに染めていくミハイルの悪魔がまたやってくれたのか。
いつも自分の前に立ちふさがるミハイル家を王弟は許せなかった。

ジャンヌも攻撃してきた魔導中隊とノルディンの魔導特殊部隊を殲滅。

一路王都に向かっているという。

ヘンリーは引き出しから黒い瓶を取り出していた。
ボフミエの魔術師がくれたものだ。
悪魔の薬だという。
最後は兄ともどもこの城を吹き飛ばすのみかとヘンリーは決断した。

出来ればエルフリーダの血をひいている暴風王女とミハイルの悪魔のクリスも巻き込んでやる。

ヘンリーは黒い瓶を握りしめていた。
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