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第三章 王弟反逆

ホーエンガウ攻城戦4 クリス怒涛の泣き落とし

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「しかし、私、まだ、18歳。この小娘の言い分も少しだけ聴いて下さいますか」
そして、皆の同意も得ずに話し出した。

「私王妃教育で
来る日も来る日も王妃様からは王妃様の義母のエルフリーダ様は何でも礼儀作法が完璧だったのに、
何故あなたは出来ないの?
あなた親戚なのに全然ダメね。
本当に血が繋がっているの。等々、散々苛め抜かれました。

でも、血は直接にはつながっていないんです。
単に父の父のそのまた父の更に父の娘がエルフリーダ様であるだけですから。

王妃様からは1ミリ首の位置が違っただけでエルフリーダ様は出来たのに。ですよ。
それを毎日毎日2時間以上出来るまでぴっちり。
勉強もしないといけないのに、物理は全然できないのに。
さっさと私が終えないと侍女も帰せないとか言われて、その侍女小さい子供がいるんですよ。
グリッド君と言うんですが、お父さんがノルディン戦で死んで。
早く帰してあげたいのに、私が出来ないから帰せないって
お前のせいだからって王妃様にいじめられて。

でも、その王妃教育もやっと皇太子妃を降りられたのに、やっとエルフリーダ様の怨念から逃れられてほっとしてたんです。

なのに、今度はエルフリーダ様の遠い親戚だから許せないっておかしく無いですか?

なりたくてなったわけではないし、はっきり言ってお会いしたこともありませんし、
そのエルフリーダ様は出来たのに出来ないのはおかしい、
本当に親戚かっていじめられたと思ったら、今度はお前はそのエルフリーダの親戚だから許せないって、私ではどうしようもない事ですよね。
そんなに私が憎いんですか?」
クリスはきっとコールマンを見た。

コールマンがびくっとする。

「いや、しかし、エイミー様は本当にエルフリーダにいじめられてだな」
老騎士の人が言う。

「で、代わりに私を殺して良いんですか?」

「いや、そういうわけでは…」

「わたし、この3年間、ほとんど遊んだことありませんでした。
来る日も来る日も王妃教育でエルフリーダ様には到底及ばない。
と言われ続けて、学園に帰ったら宿題の山で、寝る暇も削られて。
コールマン様みたいに寄宿舎抜け出して楽しく遊ぶことなんて全然できなかったんです。
ご飯も満足に食べる暇なくて。
皆さん若い時はもっと楽しんだりしたんじゃないんですか?」
一同をぐるりと見渡す。

一同どきりとした。どんなものでも青春時代に多少は楽しいことがあったはずだった。

でも、この少女はごはんさえ満足に食べる暇も無かったって、それは少し酷くないだろうか。

「私なんてそんな暇も無くて、
でも、それだけ我慢して必死にやってきたのに、皇太子にお前は機械みたいだから人の心も判らないから首だって。かわいい公爵令嬢の方が良いって。
死にもの狂いでやってきたのに。
楽しい事もほとんど無かったのに。
学校でもかわいい公爵令嬢に机の上にゴミ箱ひっくり返されたり、教科書に死ねって落書きされたりしてたのに」
その公爵令嬢はたしかにヘンリーがいろいろ面倒を見ていたのは確かだ…

全員メチャクチャ良心の呵責を感じ出した。

確かにエイミー様はいじめられていた。

でも、おんなじことをそれもこんな小さい子にして、喜ばれるだろうか?

「それ我慢してきたのに、首って言われて…
でも、首になって良かったこともあったんです。

久しぶりに少し暇になって生まれて初めて城下の屋台に連れて行ってもらってクレープ食べさせてもらって・・・生まれて初めてそんなことできてとてもうれしかったんです。

でも、帰ってきたらエルフリーダの親戚だから死ねって、
そんなにこの小娘いじめてうれしいんですか…」
クリスは泣き出した。

皆唖然としていた。

いや、軍使としてここに来て泣き出すのはおかしいだろうとみんな思ったが、まだ18の令嬢をみんなしていじめている気分になってしまった。

「いや、ミハイル嬢」
周りの大人連中は大半がクリスの倍以上年取っていた。
いや3倍、下手すると4倍。
何も王弟もこんな子を殺そうとかしなくてもいいものを。

それは元々みんな少しは考えていた。

張本人のエルフリーダやロポックを殺すならいざ知らず、この子は何も悪くないのだ。

それも、エルフリーダみたいにできないと散々いじめられていたとか、まるでエイミー様みたいじゃないかと。

「王弟殿下もあなたのような子供を殺そうなどと」

「でも、軍隊が攻撃してきました」

「いやあなたを捕えようとしただけで」

「捕えて私をもてあそぼうと」

「まさか、そんなことは」
コールマンが言う。

「しかし、王弟殿下からは私を後妻にすると父に申し出が」

えっ、こんな年はの行かない子を王弟殿下が後妻に。

それは酷すぎねのではないか。

いくら、エイミー様の恨みとはいえ、こんなにかわいい子を40も年の離れている王弟の後妻にするなんて、そんなにひどい目にあわすなど。

もともと残った皆は王弟に心酔してここで死のうとしたのだった。

討ち死にしようと。

しかし、目の前の女の子に泣かれている現実に唖然としていた。

この子を慰み者にするためにここにいるのかと
いや、それは騎士としての矜持が許さない。

「もう、王宮は王弟殿下のものです。
このままでは私は慰み者になるしかありません。
それならいっそのことここで殺してください。」
クリスはコールマンに迫った。

「いや、それは・・・・」

「コールマン殿。いつまでもこの子のいう事を聞いていては」
横から厳しい声でダニエルが言う。

「じゃあダニエル様が私を殺していただけるのですね。」

「えっ!」
火の粉がこちらに飛んできたことにダニエルは唖然とした。

「私なんて、礼儀がなっていない、
エルフリーダ様のようには全然できないんです。
王弟殿下に慰み者にされて、そのあとにそのまま恨みを込められて刺し殺されるんです。」

「いや、ミハイル様。ヘンリー様はそのような」

「しかし、抵抗できない国王陛下を宝剣で刺されたと、
そのあとこのまま殺すのは惜しいからじっくりといたぶってやると。
私も切り刻まれてゆっくりと慰み者にされるのです。
お願いですからその前に殺してください。」
と言って前に出る。

確かにそのように王弟は言ったと報告が入って来ていた。

エイミーは慰み者にされて殺されたからその娘もそうしてやるというような事を聞いたこともある。

その時はエイミー様はかわいそうだ。

その娘がそうなるのも多少は仕方がないのだろうとは思った。

その張本人を目の前にしないうちは。

しかし、その娘が実際に目の前で泣いていた。

実際にそうされるのが嫌だから殺してくれと言われたら…

戦う以前の問題だった。

殺せ殺せないの押し問答。

延々泣かれて…

1時間の泣き落としで、ホーエンガウ城は陥落した…
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