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第三章 王弟反逆

赤い死神と北の皇帝

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「アレク!どういうことだ。お前のところの魔導部隊に攻撃されたけど。」
魔導電話をつないだジャンヌが怒鳴っていた。

「えっ知らないぞ。」
アレクは慌てた。
自分の部隊は勝手に動かないはずだ。

「すまん、今はまだ、戻っていないから、折り返しかける」
アレクは驚いて言った。
自分に黙って部隊を動かせるものなどこの世には一人しかいない。
アレクの目は怒りで赤く光った。


「皇帝陛下!どういうことなのです」
トリポリの帰り、久々に帝都の宮殿に寄ったアレクは謁見の間で叫んでいた。

「これはアレク、久々に帰ってきたのに、父を怒鳴るなどどういうことだ?」
皇帝は動ぜずに言った。

「私はマーマレードに手出し無用と申したはずですが」

「私には皇帝としての責務があるのだよ。
廷臣どもからは皇太子は暴風王女に骨抜きにされたとか突き上げを食っての」

「その挙句に特殊魔導部隊を全滅させられたとか」
アレクは薄笑いをした。

「魔導士一人を育てるのにどれだけ時間がかかるとお思いか」

「貴様が暴風王女と遊んでばかりで仕事をしないからだろう」

「そういう陛下はやることなすことドラフォードのたぬき親父にやられておいでですが」
お互いに言い合いになる。

「人の事よりもマーマレードを何とかしろ!」

「それで侵略して兵を無駄に失うのですか?
3年前は2人の王子と2個師団が壊滅しましたが。
相も変わらず野蛮な考えですね」

「ではどうしろと言うのだ。」
皇帝は聞いた。ここ3年間ほとんど戦争はしていない。
侵略国家として恐れられているノルディン帝国がだ。
それもマーマレードに侵攻して2個師団と2人の優秀な侵略王子を殺されてからだ。
あの2個師団は超精鋭でうち1師団は魔導騎士ばかり集めた虎の子の師団だったのだ。

「マーマレードには例え20個師団を投入しても勝ち目は無いですよ」

「そんなことはやってみないと、判るまい」

「2個師団は1日もせずに壊滅したのです。
それもノルディンの超精鋭部隊が。
20個師団でもその日数が多少伸びるだけですよ」

確かにアレクの言うところも一理あった。
20個師団はこのノルディン帝国の全師団数だ。
これが無くなればノルディン帝国は消滅するだろ。

「貴様に任してどうなる?」

「逆侵攻されず、戦力を他に回せます。
それにうまくいけば、ノルディン帝国にとっても将来の安定につながると思いますが」
アレクは迂遠な策を話す。

「将来の安定か。まどろっこしいの」
皇帝はドラフォードの国王と違い、時間がかかる作戦は性には合わなかった。

「普通にやっても最近はほとんど領土も広がっておりませんが」
アレクの言うとおり、ドラフォードの陰険王に阻まれてそれ以前から南進できていない。
中央部で。それで西部の国境を接する技術大国のマーマレードに攻め込んだのだが。

「次に私に無断でやったら将官の命の保障は致しませんよ」
そう釘を刺して笑うとアレクは謁見室を退室した。

「皇帝陛下。宜しいのですか。あのような事を言わしめて」
首相のイヴァン・ドロビッチは言った。

「まあ、生意気ではある。
しかし、今残っている王子の中では一番能力は高いだろう。
脳筋だけではあの陰険王に勝てまい。
それにアレクがマーマレードの王女と結婚して王位を継いだら、マーマレードの併合もあり得る。」
皇帝は自らも好まない迂遠な策を言った。

マーマレードは鬼門だ。
精鋭2個師団を失い、まだその補充が出来ていない。
ボフミエ魔導王国とも組んで魔導士の訓練もしているがまだまだだ。
今回その育てた一部を投入したがあっという間に壊滅させられた。
マーマレードに侵攻するのは経済的に割が合わなかった。

それよりはアレクが王女の配偶者になった方が後々都合が良い。

「しかし、我らが併合される可能性もありますが」
首相は危惧した。
特にアレクが先陣切って攻め込みかねない。

「ふんっその時はその時だ。しかし、奴らは基本的に甘い。
平和主義者だ。その軍を動かすのはなかなか大変だろう」
アレクの恐ろしさは皇帝でも思い知っているが基本的にマーマレードは平和主義。、
いくらアレクが権力を握っても侵略には進みにくい。

そもそも王権もこの帝国のようには強くない。
例え、何らかの間違いで併合されたところで、そのトップは自分の血を引くものなのだ。
そうノルディン帝国の血筋のものがトップに立つ。

「奴らの考えは甘い。
例え、併合されても我らの出る幕もあろう。
わが民族の向上心は強い。
例え併合されても実質支配すればよいのではないか?
そのトップは我の血筋を引くものとなればなおさらな」

「なるほどさすが皇帝陛下。そのようなことまでお考えとは存じ上げませんでした」
イヴァンは皇帝の言葉に感動はした。
ただ、それが他の王子の総意となるかと言うと決してそんなことは無い事を皇帝は理解していないようであったが。
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