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第二章 大国での失恋
皇太后は王家の朝食の席にクリスを訪ねていらっしゃいます
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翌朝は朝早くから晴れていた。
オーウェンはゆっくりと伸びをして起き上がる。
昨日は結局そのあとクリスは捕まらないままだった。
あの後、必死に迫りくる令嬢の大軍をやっとまいた後、クリスを探したが見つからず、
既に寝室に戻ったとウィルと話していたガーネットに言われた。
「お兄様。クリス姉様の手を放すなんて信じられない」
と呆れられたが。
クリスがいる日数もあと5日くらい。
でも、今日は午前中はアレクが来る。
何でも、一緒に不可侵条約を結びに行くなど、絶対にあいつ邪魔しに来たんだ。
下手したら今日から出立しようと言いかねない。
今回の事を逃せば次に会えるのはいつになるか判らない。
どんなことをしても今日中に決着をつけないと。
オーウェンは焦っていた。
アレクとの予定があるので早めに階下の食堂に行くが既に先着がいた。
「おばあさまとクリス」
二人は食事を終えて、楽しげに話していた。
皇太后がこちらに来るのはめったにない。
母とも合わなかったはずだ。
なおかつ、今回オーウェンの婚約者にクリスを推すことも反対していたはずだ。
皇太后の一番の押しはイザベラ嬢だったはずなのに。
昨日は何があった?
オーウェンは訳が分からなかった。
「相変わらず、遅いわね。オーウェン」
「おはようございます。皇太子殿下」
皇太后のいつもの嫌味とクリスの挨拶を聞きながらオーウェンはクリスの横に座る。
「どうしてこちらに?」
オーウェンが尋ねる。
「こっちに来てはいけないのかい」
「えっいえそんなわけでは」
オーウェンは皇太后の嫌味にしどろもどろに応える。
「皇太后殿下の畑で朝からいろいろ教わっていたのです」
「まあ、クリスと朝から畑で一仕事してきたのさ。
お前が夜遊びして疲れて寝ている間に」
「えっ本当に?」
貴族令嬢に畑を付き合わせたのかよ。
と驚きだったが、そのあとの言葉の夜遊びはないだろうと思いながら。
まあこれだけ仲良くなったのなら、婚約に反対されることは無いかとオーウェンは喜んだ。
「お母様。今日はどうされたんです?」
続いて起きてきた国王が驚いて聞いた。
「オーウェンと同じこと聞くね。
ここに来たのは間違いだったかね」
皇太后が嫌味を言う。
「いえいえ、そんな事は無いですよ」
慌てて国王が否定した。
「クリスと朝から畑に出ていたのさ」
「なんと客人に畑仕事を手伝わせていたんですか」
国王は呆れる。
「おだまり。国の基本は農業だよ」
「皇太后さまに畑づくりの基本をいろいろと教わっていたんです。」
言い争いになりそうな二人をクリスは取り持つ。
「そう、どこかの陰険王妃に比べて本当によくできた娘だよ。クリスは。
是非ともうちの嫁に欲しいね」
「まあ、皇太后様ったら、御冗談を。
私は自分の至らなさから自国の王族から婚約破棄されたところですし、大国ドラフォードの王族なんて、到底務まりませんわ」
クリスはかわした。
「まあ、うちのろくでなしの孫が釣り合わないの間違いのような気がするが…」
オーウェンをじろっと睨むと皇太后は立ち上がった。
「まだ、少し王宮にいるんだろう。また、畑に来なさい」
「ありがとうございます」
クリスは立ち上がって礼をする。
「私としては本当に是非とも嫁に来て欲しいと思っているんだからね!」
「そう言って頂いてありがとうございます。でも、私では恐れ多いですが」
クリスはニコッと笑って見送った。
そこへクリスの母らが入ってくる。
「あなたどうしたの?突っ立ってて」
立っていた国王に王妃が聞く。
「まあ…」
適当に国王は言葉を濁す。
「まあ、クリス早いのね!もう食べたの?」
クリスの前の席にシャーロットが座った。
「はい。お母様」
「皇太子殿下はよくお眠りになれましたか?」
シャーロットは聞く。
「もうゆっくりと。ミハイル夫人はいかがてすか?」
「私はダメですね。年いってくるとどうしても夜更かしすると朝が弱くなって」
シャーロットは笑って答えた。
「ミハイル嬢は今日はどうされるののですか?」
さりげなくオーウェンが聞く。
「午前はドーブネル将軍が厩にご案内頂けるそうなんです。
なんでも、ドーブネル将軍の僚友のウィンザー様をご紹介いただけるとか」
「えっ」
オーウェンは驚いた。
ウィンザーって元第一師団長、その息子は第三師団で今急速に頭角を現している軍事一家だ。近衛にも1人いる。気難しい存在で自分でもほとんど会った事無いのに。
何故クリスは会える?
おばあさまも陥落させられたし、クリスはどんな魔法を使ったのだろう。
「いや、じゃあ私も」
オーウェンが参加したそうに言うと
「オーウェン!お前はノルディン皇太子がいらっしゃるからそれに合わせろ」
国王が注意する。
「午後は?」
慌ててオーウェンが聞くと
「クリス嬢。午後は私に付き合ってね。王宮のお茶会よ」
「はい、王妃様。宜しくお願いいたします。」
クリスが元気よく返事する。
「じゃあ、それ終わったら少し時間取れる?」
「大丈夫だと思います。」
クリスは頷いた。
******************************************************
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
新作はじめました
「赤い死神の大侵攻作戦で王国を蹂躙します…しかし、その前に無敵の戦神が立ち塞がりました」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/237012270/167498546
このお話の3年前の話。
赤い死神が何故シャラザールを恐れるのか。読んでいただければよく判ります。
クリスがシャラザールに憑依された理由とか
ぜひともお読み下さい。
オーウェンはゆっくりと伸びをして起き上がる。
昨日は結局そのあとクリスは捕まらないままだった。
あの後、必死に迫りくる令嬢の大軍をやっとまいた後、クリスを探したが見つからず、
既に寝室に戻ったとウィルと話していたガーネットに言われた。
「お兄様。クリス姉様の手を放すなんて信じられない」
と呆れられたが。
クリスがいる日数もあと5日くらい。
でも、今日は午前中はアレクが来る。
何でも、一緒に不可侵条約を結びに行くなど、絶対にあいつ邪魔しに来たんだ。
下手したら今日から出立しようと言いかねない。
今回の事を逃せば次に会えるのはいつになるか判らない。
どんなことをしても今日中に決着をつけないと。
オーウェンは焦っていた。
アレクとの予定があるので早めに階下の食堂に行くが既に先着がいた。
「おばあさまとクリス」
二人は食事を終えて、楽しげに話していた。
皇太后がこちらに来るのはめったにない。
母とも合わなかったはずだ。
なおかつ、今回オーウェンの婚約者にクリスを推すことも反対していたはずだ。
皇太后の一番の押しはイザベラ嬢だったはずなのに。
昨日は何があった?
オーウェンは訳が分からなかった。
「相変わらず、遅いわね。オーウェン」
「おはようございます。皇太子殿下」
皇太后のいつもの嫌味とクリスの挨拶を聞きながらオーウェンはクリスの横に座る。
「どうしてこちらに?」
オーウェンが尋ねる。
「こっちに来てはいけないのかい」
「えっいえそんなわけでは」
オーウェンは皇太后の嫌味にしどろもどろに応える。
「皇太后殿下の畑で朝からいろいろ教わっていたのです」
「まあ、クリスと朝から畑で一仕事してきたのさ。
お前が夜遊びして疲れて寝ている間に」
「えっ本当に?」
貴族令嬢に畑を付き合わせたのかよ。
と驚きだったが、そのあとの言葉の夜遊びはないだろうと思いながら。
まあこれだけ仲良くなったのなら、婚約に反対されることは無いかとオーウェンは喜んだ。
「お母様。今日はどうされたんです?」
続いて起きてきた国王が驚いて聞いた。
「オーウェンと同じこと聞くね。
ここに来たのは間違いだったかね」
皇太后が嫌味を言う。
「いえいえ、そんな事は無いですよ」
慌てて国王が否定した。
「クリスと朝から畑に出ていたのさ」
「なんと客人に畑仕事を手伝わせていたんですか」
国王は呆れる。
「おだまり。国の基本は農業だよ」
「皇太后さまに畑づくりの基本をいろいろと教わっていたんです。」
言い争いになりそうな二人をクリスは取り持つ。
「そう、どこかの陰険王妃に比べて本当によくできた娘だよ。クリスは。
是非ともうちの嫁に欲しいね」
「まあ、皇太后様ったら、御冗談を。
私は自分の至らなさから自国の王族から婚約破棄されたところですし、大国ドラフォードの王族なんて、到底務まりませんわ」
クリスはかわした。
「まあ、うちのろくでなしの孫が釣り合わないの間違いのような気がするが…」
オーウェンをじろっと睨むと皇太后は立ち上がった。
「まだ、少し王宮にいるんだろう。また、畑に来なさい」
「ありがとうございます」
クリスは立ち上がって礼をする。
「私としては本当に是非とも嫁に来て欲しいと思っているんだからね!」
「そう言って頂いてありがとうございます。でも、私では恐れ多いですが」
クリスはニコッと笑って見送った。
そこへクリスの母らが入ってくる。
「あなたどうしたの?突っ立ってて」
立っていた国王に王妃が聞く。
「まあ…」
適当に国王は言葉を濁す。
「まあ、クリス早いのね!もう食べたの?」
クリスの前の席にシャーロットが座った。
「はい。お母様」
「皇太子殿下はよくお眠りになれましたか?」
シャーロットは聞く。
「もうゆっくりと。ミハイル夫人はいかがてすか?」
「私はダメですね。年いってくるとどうしても夜更かしすると朝が弱くなって」
シャーロットは笑って答えた。
「ミハイル嬢は今日はどうされるののですか?」
さりげなくオーウェンが聞く。
「午前はドーブネル将軍が厩にご案内頂けるそうなんです。
なんでも、ドーブネル将軍の僚友のウィンザー様をご紹介いただけるとか」
「えっ」
オーウェンは驚いた。
ウィンザーって元第一師団長、その息子は第三師団で今急速に頭角を現している軍事一家だ。近衛にも1人いる。気難しい存在で自分でもほとんど会った事無いのに。
何故クリスは会える?
おばあさまも陥落させられたし、クリスはどんな魔法を使ったのだろう。
「いや、じゃあ私も」
オーウェンが参加したそうに言うと
「オーウェン!お前はノルディン皇太子がいらっしゃるからそれに合わせろ」
国王が注意する。
「午後は?」
慌ててオーウェンが聞くと
「クリス嬢。午後は私に付き合ってね。王宮のお茶会よ」
「はい、王妃様。宜しくお願いいたします。」
クリスが元気よく返事する。
「じゃあ、それ終わったら少し時間取れる?」
「大丈夫だと思います。」
クリスは頷いた。
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ここまで読んで頂いてありがとうございます。
新作はじめました
「赤い死神の大侵攻作戦で王国を蹂躙します…しかし、その前に無敵の戦神が立ち塞がりました」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/237012270/167498546
このお話の3年前の話。
赤い死神が何故シャラザールを恐れるのか。読んでいただければよく判ります。
クリスがシャラザールに憑依された理由とか
ぜひともお読み下さい。
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