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第一章 婚約破棄

婚約破棄されましたが、弟が助けてくれました

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クリスはその寂しそうな姿を見る間もなく、男たちに囲まれていた。
その姉をウィルが魔法をかけて男共を遠ざけて守る。


次の曲はしかしかからなかった。

そして、いつの間にか近くにエドと取り巻きたちが来ていた。

「クリスティーナ・ミハイル。貴様との婚約をここに破棄する」

音楽が無くなって静かになったホールにエドの声が響き渡った。

クリスは固まっていた。

というか、エドが何を言っているか判らなかった。

今まで友達も異性の知り合いも作らず、ただひたすら王妃に与えられた課題と授業の勉学に励んできた。
それも全ては今婚約破棄を言い渡したエドのためだ。

なのに、なのに何なの。

クリスはエドのいう事が判らなかった。

「理由はここにいるマティルダ嬢が平民であるという理由で幾多の嫌がらせをし、また色目を使って男共にも悪戯をさせたことだ」
クリスには全く覚えのないことだった。

というかそんな事考える暇もなかった。

口を切ろうとしたその時に、それよりも前にウィルが切れた。

「何ふざけたことを言う。
姉上に対する侮辱例え皇太子であろうとも許さん」

「ウィル」
クリスはウィルを止めようとした。

このようなところで王族に剣を向けたらただでは済まない。

「貴様。皇太子殿下に対して反逆するのか」
慌てて近衛兵が駆けてくる。

「はっ?俺は姉上に命を捧げた騎士だ。
姉上を侮辱した者は必ず成敗するとこの剣に誓っている。
それがたとえ王族でも許すなとジャンヌ王女からも言われている。
へっぽこ近衛が邪魔するなら、一緒に成敗してくれるわ」
反逆の言葉にびくともしないウィルに近衛は少し引いた。
それもウィルはあの暴風王女と言われるジャンヌ王女の直衛、王女と共に3年前のノルディン戦では12歳で最前線で戦ったことが知られている。
剣技においては絶対に皇太子ではウィルに勝てないはずだった。

更に王女が出てくれば、皇太子と言えどというか、皇太子が相手では絶対に王女には勝てない。

魔法はもとより剣技も力関係も全てにおいて。

そもそもクリスは王女のおきにいりでもあった。一緒にノルディン戦を戦ったことも知られている。
そのクリスを皇太子がふった事を知って王女が許すとはとても思えなかった。
いや、下手したら皇太子をかばった近衛に矛先が来るかもしれない。
下手をしたら婚約破棄を言い出す前になぜ止めなかったと。
というか、王妃からも叱責を受けそうだった。
そもそもこの件を知ったら王女が転移してくる可能性もあった。

そう思った近衛師団長のギルティは魔導師団員がいなくなっているのに気付いた。

これははめられた…・

ギルティは最悪の予感がした。
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