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12歳

決意を新たに

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緊張が解けた部屋でジークはカテリーナの所まで足早に歩いて行き、自分の上着を脱いでカテリーナに着させている。簡易なドレスが目に余ったのか咎める様にカテリーナに何かを囁き、カテリーナの顔を真っ赤にさせていた。
全く、ミレイユといいカテリーナといいラブラブしおって、けしからん。
……いや、ミレイユはちょっと違うか……


「ところでロベルトは最近登城もしないでここで何やってんの?」


アレクセイは呆れた様にロベルトに語りかける。


「婚約者のエスコートです」


礼を解いて後ろからミレイユを抱きしめているロベルトがしれっと言い放った。


「いや、要らないよね?お茶会にエスコート要らないよね?」


アレクセイのツッコミが虚しく響く。




向こう側では既に二人の世界のジークとカテリーナがとりささみの鶏ハムを囲んで歓談中だ。


「カテリーナ、この料理すごく美味いな。ささみなのにしっとりしてて食べやすい」

やはり肉はジークのウケがいいらしい。そんなジークを見てすごく嬉しそうにカテリーナは微笑んでいる。


なんだかカオスな空間にちょっと笑えてきて、いつもの余裕が出て来た。


「殿下、良ければ座って少しお話しして行きませんか?ミレイユが持って来てくれた(ロベルト作の)焼き菓子、美味しいですわよ」



アレクセイは誘われて少しびっくりした様子だったが、年相応の笑顔でお茶会へ参加してくれた。



ーーーーー



「ところでさっきの高度魔術結界の重ね掛けは凄いね。ちょっと梃子摺っちゃったよ」


じゃあ壊さないでよという思いでアレクセイを見ると目を細められた。


「あのレベルの結界を展開してるとなると、中で国家の要人を一堂に会して軍事機密を共有しているとしてもおかしくないセキュリティレベルだったよ」


「その割に殿下にあっさり消されてましたが………」

「僕のはそういう能力だからね。僕が要らないと判断した魔法は無効化出来るんだよ」


え………そうなの?何そのチート能力。流石メインヒーローと言ったところか……


そんな私の顔を見ながらクスクスとアレクセイは笑う。


「オリヴィアは顔になんでも出過ぎだよ。そんな無防備にしてると僕みたいなのに付け込まれるんだから気を付けないと」


なんだか言葉の調子が不穏でお茶を飲みながらチラリと様子を伺う。
ただ紅茶を飲んでいるだけなのにそこだけ切り取った絵画の様に美しい。


ーーーー私はこの綺麗な少年にも捨てられるのか。




私は自嘲を込めた乾いた笑いがこみ上げてくるのを必死に耐えた。まったく私の男運のなさは前世込みで筋金入りである。


前世の旦那とは結婚して5年、3年以上セックスレスだった。何度か話し合いの場を作ろうかとも思ったが、旦那の部屋のゴミ箱に一人で形跡を見つけてからは馬鹿馬鹿しくてどうでも良くなった。

しかし、いつの世も子供が出来ないと女のせいにされるもので余計なお世話な事を言われることも多かったが、旦那もきっと同じ立場だろうと思い特段何も思わなかった。
そんな時に旦那から珍しく外にディナーに誘われ何かと思えば、昔旦那の同僚として紹介されていた女性が旦那との子を身籠ったと報告された。打ち拉がれ、裁判の末多額の慰謝料を手にしたが自分の中の欠けた何かは埋まらなかった。

慰謝料を糧に引き籠り、いつの間にか携帯小説の異世界転生ライトノベルに想いを馳せる痛いアラサーが爆誕していた。

いつ死んだのか、なぜ死んだのかは覚えていないが関係ない。


折角転生したのだ!あんな思いをする位ならもう男なんて要らない。

私は一人でも生きていけるんだ。


私は決意を新たにしたのだった。





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