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一年の変化

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この出来事の後の、コークスの働きは凄まじかった。

 まずは民意を動かし、父王アレキサンドライトを年齢を理由に王座から引き摺り下ろし、弟であるデマントイドを隣国へ留学させた。賢王としての市井からの支持は、やはり元々はコークスが煽動していたものらしく、父は教会からの圧力もあり退位を表明せざるを得なくなった。
 騎士団を率いていたアダマスは、父の隠居先へ護衛騎士として付き添う事が王命として正式に下ったことで私との婚約も穏便に解消となり、オパールとその他のハーレム要員を引き連れて田舎の領地へ引っ込む事になったという。

 いったい何をどう説得をしたらそうなるのか。

(コークスに聞いても、にこやかにはぐらかされるし……こわっ)

 結局、この国に残った正統な王族は私一人となった。

 教会主催の慈善事業などに積極的に関わった事で、私に関する醜聞はここ一年で完全に消え去っており、私が戴冠することに反対する者はほとんどいなくなっていた。
 唯一、反対していた叔母であるオブシディアン公爵夫人も"コークスを養子にして、王配をオブシディアン公爵家から輩出する"という政治的な背景を条件に、私の強力な支持母体として後ろ盾になってくれる事になった。
 対して、ジルコニア公爵家はアダマスが事実上の左遷となったことで筆頭から外れ、しばらくは表舞台から去る事になったのだ。

「いくらなんでもトントン拍子が過ぎるような……」
「物事がうまく進む時はその道が合っている証拠だ、と貴女もそう言っていたではありませんか」
「そ、それは……そうですけど。何もデマントイドを追い出して私を即位させなくても、弟に王位を譲って私は穏便に国外へ逃していただいても良かったのに……」

 なんだか腑に落ちずモヤモヤと考えている私の首筋を、コークスがわざとチュッチュッと音を立てて口付けをし、所有印を落としていく。
 ここ一年の間、一番変わったのは私とコークスの関係だ。夜会の時は必ずエスコート役として私にピッタリと寄り添い、私にすり寄ろうとする他の男を牽制し、必要とあらば矢面にも立って蹴散らしてくれた。
 私が視線を向ければ愛情のこもった眼差しを返してくれて、どんな美しい貴族令嬢が寄ってきても私への好意を隠しもしなかった。
 コークスが抱え込んでいた仕事量を他の者へと分散して減らさせ、時にコークスに叱責されながらも私も日中に彼と共に国務をこなしている。

 そして、何より。私達は夜も共に過ごすようになっていた。
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