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幼い私のささやかな夢

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 以前の私の夢は、アダマスにエスコートされて夜会に行く事だった。

 夢の中のアダマスは豪奢で逞しい騎士の正装に身を包み、私は彼の瞳と髪色に合わせた少し大胆なドレスをその身に纏う。
 他の男の視線から私を守るようにどこへ行くにもぴたりと横に寄り添ってくれて、私が目線を向ければ彼の透き通ったブルーの瞳に愛情が灯り、そのままダンスへと誘ってくれる。そんなロマンティックな夢を見ていた時もあったのだが、現実はどうもうまくいかないものだ。

 結局、一年前に作ったこのドレスはエスコートがいなければ着ていけるものではなかったのでクローゼットの中でずっと眠り続けていたが、今日ようやく日の目をみた。

 試着の時以外で初めて袖を通したが、去年とサイズに大きな変わりはないようで、すべてがちょうど良く仕上がっており大変着心地がいい。
 婚約者のアダマスの髪色に合わせたシルバーとブルーを基調とした生地に映えるように金糸と朱糸で見事な刺繍が施されており、匠の技を感じさせる逸品だ。下品にならない程度に胸元も大きくあいており、ふくらはぎにかけてスリットが入ることで持ち前の脚線美もいかんなく発揮できているはずだ。
 自慢の長い金髪は高い位置で結い、なるべく動いても崩れないように固定してもらった。

 コークスは私が指定した時間ピッタリに来たようで、使用人が呼びに来てくれた。
 今まで公務だ当番だと言われ続けて蔑ろにされ続けていたため、時間通りに来てくれるというだけでありがたいという気持ちが沸いてしまう。我ながら驚きのチョロさだ。

 王族専用通路を通り、控室にたどり着き中で待っているとノックがされてコークスが部屋の中へと入室した。
 彼は濃紺の厚手で高級感のあるロングコートを纏い、飾鎖など精巧に付けられたピッタリとしたベスト、すらりとした足元は磨かれたオートクチュールの革靴が光っている。一応私の瞳に合わせて選んでくれたのであろうガーネット色のループタイも着けてくれているのを見ると、不思議と気分が上向くのを感じた。
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