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しおりを挟む「だぁ~かぁ~らぁ~さぁ、私が憧れてたのは日本史の小早川先生なんだって! 数学の横宮じゃないっつってんのぉ~!」
モッコがベロンベロンに酔っぱらって言った。
「でもあんた、いっつも横宮と話してたじゃん!」
沙也加が突っ込んだ。
「だぁ~かぁ~らぁ~! 私、数学はいつも欠点だったでしょ! 交渉してたのよ、交渉!」
モッコはフラフラになりながら沙也加の肩を叩いた。
「モッコ、ちょっと飲みすぎじゃない?」
絵梨が心配した。
「何? 今飲まなくていつ飲むって言うのさ? だいたい絵梨! あんたはいっつも自分をさらけ出さないじゃん! もっと飲んでさらけ出しなさいよ!」
モッコはそう言うとテーブルにうつ伏して寝てしまった。
「あらあら…この人もう今日は閉店ね…」
沙也加が呆れて言った。
「そろそろお開きね。みんな、どうするの?」
朋美が聞いた。
「うちは旦那が迎えに来てくれるって。アイツ今まで私の迎えなんか来たことなんかなかったのにさ、今日に限って来るなんて言ってんのよ。変じゃない? 多分…絵梨とか朋美とかに会いたいんじゃないの? 美人って聞いてるからさ…。っとあの野郎ったら…。」
沙也加はグラスに残ったビールをグビっと飲んだ。
朋美と絵梨は困ったように顔を見合わせた。
「こんばんは…。」
輝也がやって来た。
沙也加は輝也を見るなり眉間に皺を寄せた。
「あんた何でそんなにオシャレしてんの? 普段この時間だったら外出してもジャージでしょ!」
「そっ…そんな事…ないだろ…。」
輝也は恥ずかしそうに慌てて言った。そしてモッコの姿を目で探した。
―モッコさん…寝てる…。飲みすぎたのかな…。
「ちょっと美人がいるからって、あんた何鼻の下伸ばしてんのよっ!」
優しい目をしている夫の表情を沙也加は見逃さなかった。
「違うよ!」
輝也はムキになって言った。
「モッコがさぁ、潰れちゃったから、送ってくから、あんた抱きかかえて車乗せてやって!」
「えっ! 俺が?」
輝也の顔は真っ赤になった。
「何赤くなってんのよ! ほら! 行くよ!」
沙也加は立ち上がってモッコと自分のバッグを持った。
「モッコさん! 大丈夫ですか? 僕に捕まって!」
「…えぇ~、私、寝てたの~? あれぇ~、あなたは沙也加の旦那さんじゃありませんか? 相変わらずイケメンねぇ~」
モッコは完全に酔っぱらっていた。
「モッコ! 何言ってんのよ! 輝也がおんぶするから早く背中に乗って!」
沙也加はモッコを立ち上がらせた。
「イケメンの背中…私、幸せだわぁ~」
モッコは輝也の背中をさすった。輝也の顔は益々赤くなった。
「じゃあ、私たち行くから。またね!」
「うん。楽しかったわ。また会おう!」
朋美と絵梨は手を振った。
沙也加はモッコをおぶった輝也に強い言葉を吐き続けながら去って行った。
「…完全に尻に敷かれてるわね…。」
朋美が小さく溜息をついた。
「素敵な旦那様なのにね…。」
絵梨はほうじ茶をすすった。
「これからどうする? 絵梨、まだ時間ある?」
「私は大丈夫よ。もう少し朋美と話したいわ。」
二人は店を出て、駅の近くのバーへ行った。
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