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しおりを挟む寝てる!
これぞ本物のタヌキ寝入り!
さっき吐き出していきなさいよって言ったばかりなのに、このタヌキ寝てやがる!
コクリコクリと頭を揺らしながらヨダレを垂らして寝てる…
「…ま、他人にとっては退屈な話だよね…。」
私は女将の出してくれたハイボールをグイっと飲んだ。女将は寝続けている。
「…そう言えば…浩平も私が話を始めるとよく寝てたな…。私の話、そんなに退屈だったかな…。すぐ寝ちゃうほど、仕事がキツかったのかな…」
女将は頭を前後に揺らしながら幸せそうに寝つづけている。薄っすら笑みを浮かべたその寝顔はなんだか可愛い。
「…こうやって、寝ている浩平を起こさずに寝かせてあげられてたら…こんな事にはなってなかったのかな?」
…認めたくなかったけど…私は自分のことしか考えて無かった。
毎晩、仕事の愚痴や他人の悪口、そして自分がどれだけ不幸かを、ただひたすら浩平にぶつけていた。仕事で疲れて寝かせてくれと言うのが、自分から逃げ出そうとしてるように思えて、愚痴を言っている時、話を逸らそうとされると、あたかも私の話はどうでもいいように思われているようで、怒りが爆発して当たりまくった。
私は浩平がそれを受け止めてくれるのが当たり前だと思っていた。だって彼氏だから! 彼氏とはそういうものだと思っていた。
でも…そうじゃなかったんだ。
私は浩平の事を、汚い物をぶち込むゴミ箱代わりにしていたんだ。垂れ流して吐き出して、自分だけスッキリして、浩平が汚れようと腐れようと、そんなこと頭にもなかった。
浩平だって人間なんだ。悪い環境なら、そこから逃げようとして当たり前だ。
今になって気付くなんて…。
ううん、こんな状況にならないと、私は気付けなかったんだ。あのままでいたら、もしかしたら、DVにまで発展してたかもしれない…。
「…最低だね…私…」
「ま、気づけただけマシじゃない?」
女将、起きてたのか…
私の脳内独り言まで…もしかして聞いてた?
「…もう…元には戻れないですよね…?」
「そうね…無理ね…」
「はっきり言いますね」
「よかったじゃない! 男なんてたくさんいるんだから! 世の中にはね、もっといい男がたくさんいるのよ! この人、私の為に生まれてきたんじゃないかしらって思える人が必ずいるのよ!」
「そんな出会い…私に訪れるのかな…」
「まあ…無理でしょうね…」
無理なら言うなよ…。
上品にお酒を飲みながらそう言う女将にイラっとした。
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