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しおりを挟む期末試験が終わった週末、ノエルが俺の街に遊びに来た。気の早い街中は、もうクリスマスの飾りつけがしてあった。夜にはイルミネーションが輝くだろう。俺はノエルを放課後に類や旭とよく行く横綱に連れて行った。そしていつもの如く、オムそばとクリぜんを注文した。
「乃海君!これ、やばい!私の町にもこのお店欲しい~!」
ノエルは気に入ったようだ。
「だろ?類や旭とほぼ毎日来てるんだ。もう部活みたいなもん!」
「いいなー。私も入れて欲しい…。」
いつもの店にノエルがいるのが不思議な感じがした。
でも悪くないと思った。きっとノエルがいない方が違和感を感じる日が来るのだろう、そうでなければいけないなと思った。
横綱を出て、俺たちは宝探しに出かけた。俺はアプリを開いて宝の場所を探した。この近くにも何箇所かあるようだった。俺達は、バスで少し行った山の上にあるカッパを奉ったお堂に行くことにした。バスで揺られて登って行くと、だんだん街並みが見えてきて、入江にかかる大きな赤い橋も見えた。バスを降りて展望台の方へ行くと、そのお堂はあった。階段を上がってお堂の中に入ると、真ん中にお地蔵様の仏像があった。後ろに回ると、そのお地蔵様の背中に大きな釘が打ち込まれていた。ノエルはそれを見て、少し怖がっていた。昔このあたりで悪さをしていた河童を封じ込めるために、その釘が打ち込まれたらしい。
俺たちはお堂の中を探してまわったが、宝は無かった。階段を下りてお堂の周辺を探してみる事にした。しばらく探すと、階段裏の窪みに宝箱を見つけた。さっそく俺とノエルは宝箱を開けた。すると…、
なんと!四葉のクローバーのキーホルダーが入っていた!
俺とノエルは顔を見合わせた。そのキーホルダーはもちろんノエルの手作りではなかった。それはあるはずが無い。そのキーホルダーは本物の四つ葉を閉じ込めてある訳ではなく、四葉の形の金属で出来た物だった。だけど、数ある宝の中で、四葉のクローバーのキーホルダーをわざわざ選ぶ人間が、地球上の、しかもこんなに限定された地域でいるのだろうか?これは偶然なのだろうか?しかし偶然しては出来すぎている!俺は中に入っているメモ帳を取り出して見てみた。
― 10th Nov 2018 Rui Kinoshita
夢に出てきた君をずっと君を探してる。連絡下さい。ruikinoshita@******
「なんじゃコリャ!」
俺は呆れて笑いが込み上げてきた。。
まったく類らしいと言えばそうだけど…。
ノエルはツボに入ったようで、さっきからお腹を抱えて大笑いしている。
月曜、学校に行ったらとっちめてやろう!
早速、旭にも報告しよう。きっと大笑いするだろう。
ノエルはさんざん笑いまくって、涙を流した目でこっちを見た。
俺もノエルを見て笑った。
そして俺たちは手を繋いで展望台へ行った。真っ赤な夕日が街を染めていた。
夕日の向こうに、じーちゃんや澄子さんの姿が見えた。。
大丈夫。
俺たちは大丈夫だよ。
だからずっと見守っていてくれな。
夕日の向こうでじーちゃんたちが微笑んでいるような気がした。
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