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しおりを挟む「はじめまして!」
旭がノエルに言った。
「旭ちゃん!会いたかった!なんか乃海君の言ってたイメージと違う感じ。」
ノエルが嬉しそうに旭に言った。
「乃海、あんた私の事何つってた?」
旭が俺をジロリと睨んだ。
「あ、変な意味じゃなくて、旭ちゃんがすごく美人で、おーまぶしいぃ~!と思っただけなの!」
「そう?おい!類!私そんなにイケてるっ?」
「はいはい、旭の美貌はおまえの食欲と共に比例して増大していってるよ…。」
類は半開きの目で言った。
「類君、はじめまして。」
「あ、どうも。」
類はニヤニヤしながら赤くなって頭を掻いた。
そして横にいる俺の背中を肘で突き続けていた。
「おい、乃海!栗原凜という女がいるにも関わらず、俺の胸の鼓動は高鳴っている!どうしたらいい!」
類が小声で俺に囁いた。
「類よ!いいか、よく聞け!まず栗原凜はお前の女では無い。ノエルの可能性は無い。俺が潰す。おまえの胸の鼓動はまやかしだ。安心しろ。」
「そうか!まやかしか!わかった!」
類の思考回路は単純なのか思慮深すぎて一周回ってこうなっているのか分からないが、ニコニコしながらノエルに話しかけて、ショートコントやモノマネまで始めている。栗原凜も、コイツと付き合ったらずっと笑っていられるんだけどな…。栗原が類の素晴らしさに気付きますように!俺は祈りを捧げた。
「ちょっと待って!ノエルちゃん、まさかこいつらも一緒に連れて行かないよね?」
安藤がノエルに問い詰めた。
「先生、乃海君たち、わざわざ遠くから来てくれたんです。一緒に連れて行ってください!お願いします!」
ノエルが安藤に懇願した。
その後ろで旭が白目の上目使いで口元に薄っす笑みを浮かべて安藤を睨んでいた。怖すぎる!!!
「ったく、しょうがねーな。」
安藤は嫌そうに吐き捨てて車に乗った。
「で、何で君が横に乗ってのっ?」
安藤の横にはすでに旭が足を組んで腕組して寛いでいた。
「私、後部座席だと酔うんだよね!」
旭はダルそうに言った。
「あー、もう!ったく!」
安藤はしょうがなくエンジンをかけた。
後部座席は両端に俺と類が座って、真ん中にノエルが座った。いくら類でもノエルが他の男に触れるのが嫌だったから俺が真ん中に座ると言ったのだが、体の大きい男の子が真ん中だと疲れるだろうからとノエルが言って、真ん中に座った。まあ、類にはおまえの胸の高鳴りはまやかしだといい続けているので、大丈夫だろう。
「やっぱ高級ドイツ車は乗り心地が違うね!後部座席でもこの快適さ!」
類はシートの座り心地を満喫している。
旭は来る途中のカフェで人数分のキャラメルラテを買ってきていた。いつもながら気が聞くというか準備がいいというか…。
「ほら、あんたの分も買ってきた。」
旭がキャラメルラテを安藤に渡した。
「…どうも…。」
安藤は旭をチラリと見てお礼を言った。
車は市街地を抜け、高速道路に入っていった。
安藤の野郎!いったいノエルとどこまで行く気だったんだ!
考えるだけでも腹が立つ。今日はやっぱり思い切って来てよかった。横を見るとノエルがいる。ストローでキャラメルラテを飲んでいる。ストローを加えた姿もかわいいな。じっと見ていると視線を感じたのかこっちを見た。目が合って、顔を赤くして前に向き直った。やっぱ可愛いなぁ…。
俺は窓の外を見たまま、そっとノエルの手を握った。ノエルの手が少し震えていた。きっと顔も赤くなってるのかな。俺は外を眺めたまま想像していた。
「あ!ここにもトラクター王国がある!」
旭が叫んだ。
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