約束

まんまるムーン

文字の大きさ
上 下
46 / 71

46

しおりを挟む

「はじめまして!」
旭がノエルに言った。
「旭ちゃん!会いたかった!なんか乃海君の言ってたイメージと違う感じ。」
ノエルが嬉しそうに旭に言った。
「乃海、あんた私の事何つってた?」
旭が俺をジロリと睨んだ。
「あ、変な意味じゃなくて、旭ちゃんがすごく美人で、おーまぶしいぃ~!と思っただけなの!」
「そう?おい!類!私そんなにイケてるっ?」
「はいはい、旭の美貌はおまえの食欲と共に比例して増大していってるよ…。」
類は半開きの目で言った。

「類君、はじめまして。」
「あ、どうも。」
類はニヤニヤしながら赤くなって頭を掻いた。
そして横にいる俺の背中を肘で突き続けていた。
「おい、乃海!栗原凜という女がいるにも関わらず、俺の胸の鼓動は高鳴っている!どうしたらいい!」
類が小声で俺に囁いた。
「類よ!いいか、よく聞け!まず栗原凜はお前の女では無い。ノエルの可能性は無い。俺が潰す。おまえの胸の鼓動はまやかしだ。安心しろ。」
「そうか!まやかしか!わかった!」

 類の思考回路は単純なのか思慮深すぎて一周回ってこうなっているのか分からないが、ニコニコしながらノエルに話しかけて、ショートコントやモノマネまで始めている。栗原凜も、コイツと付き合ったらずっと笑っていられるんだけどな…。栗原が類の素晴らしさに気付きますように!俺は祈りを捧げた。

「ちょっと待って!ノエルちゃん、まさかこいつらも一緒に連れて行かないよね?」
安藤がノエルに問い詰めた。
「先生、乃海君たち、わざわざ遠くから来てくれたんです。一緒に連れて行ってください!お願いします!」
ノエルが安藤に懇願した。
その後ろで旭が白目の上目使いで口元に薄っす笑みを浮かべて安藤を睨んでいた。怖すぎる!!!
「ったく、しょうがねーな。」
安藤は嫌そうに吐き捨てて車に乗った。
「で、何で君が横に乗ってのっ?」
安藤の横にはすでに旭が足を組んで腕組して寛いでいた。
「私、後部座席だと酔うんだよね!」
旭はダルそうに言った。
「あー、もう!ったく!」
安藤はしょうがなくエンジンをかけた。

 後部座席は両端に俺と類が座って、真ん中にノエルが座った。いくら類でもノエルが他の男に触れるのが嫌だったから俺が真ん中に座ると言ったのだが、体の大きい男の子が真ん中だと疲れるだろうからとノエルが言って、真ん中に座った。まあ、類にはおまえの胸の高鳴りはまやかしだといい続けているので、大丈夫だろう。

「やっぱ高級ドイツ車は乗り心地が違うね!後部座席でもこの快適さ!」
類はシートの座り心地を満喫している。
旭は来る途中のカフェで人数分のキャラメルラテを買ってきていた。いつもながら気が聞くというか準備がいいというか…。
「ほら、あんたの分も買ってきた。」
旭がキャラメルラテを安藤に渡した。
「…どうも…。」
安藤は旭をチラリと見てお礼を言った。

 車は市街地を抜け、高速道路に入っていった。
安藤の野郎!いったいノエルとどこまで行く気だったんだ!
考えるだけでも腹が立つ。今日はやっぱり思い切って来てよかった。横を見るとノエルがいる。ストローでキャラメルラテを飲んでいる。ストローを加えた姿もかわいいな。じっと見ていると視線を感じたのかこっちを見た。目が合って、顔を赤くして前に向き直った。やっぱ可愛いなぁ…。
俺は窓の外を見たまま、そっとノエルの手を握った。ノエルの手が少し震えていた。きっと顔も赤くなってるのかな。俺は外を眺めたまま想像していた。

「あ!ここにもトラクター王国がある!」
旭が叫んだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

JC💋フェラ

山葵あいす
恋愛
森野 稚菜(もりの わかな)は、中学2年生になる14歳の女の子だ。家では姉夫婦が一緒に暮らしており、稚菜に甘い義兄の真雄(まさお)は、いつも彼女におねだりされるままお小遣いを渡していたのだが……

拝啓、私を追い出した皆様 いかがお過ごしですか?私はとても幸せです。

香木あかり
恋愛
拝啓、懐かしのお父様、お母様、妹のアニー 私を追い出してから、一年が経ちましたね。いかがお過ごしでしょうか。私は元気です。 治癒の能力を持つローザは、家業に全く役に立たないという理由で家族に疎まれていた。妹アニーの占いで、ローザを追い出せば家業が上手くいくという結果が出たため、家族に家から追い出されてしまう。 隣国で暮らし始めたローザは、実家の商売敵であるフランツの病気を治癒し、それがきっかけで結婚する。フランツに溺愛されながら幸せに暮らすローザは、実家にある手紙を送るのだった。 ※複数サイトにて掲載中です

公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-

猫まんじゅう
恋愛
 そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。  無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。  筈だったのです······が? ◆◇◆  「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」  拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?  「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」  溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない? ◆◇◆ 安心保障のR15設定。 描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。 ゆるゆる設定のコメディ要素あり。 つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。 ※妊娠に関する内容を含みます。 【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】 こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

妻のち愛人。

ひろか
恋愛
五つ下のエンリは、幼馴染から夫になった。 「ねーねー、ロナぁー」 甘えん坊なエンリは子供の頃から私の後をついてまわり、結婚してからも後をついてまわり、無いはずの尻尾をブンブン振るワンコのような夫。 そんな結婚生活が四ヶ月たった私の誕生日、目の前に突きつけられたのは離縁書だった。

愛することをやめたら、怒る必要もなくなりました。今さら私を愛する振りなんて、していただかなくても大丈夫です。

石河 翠
恋愛
貴族令嬢でありながら、家族に虐げられて育ったアイビー。彼女は社交界でも人気者の恋多き侯爵エリックに望まれて、彼の妻となった。 ひとなみに愛される生活を夢見たものの、彼が欲していたのは、夫に従順で、家の中を取り仕切る女主人のみ。先妻の子どもと仲良くできない彼女をエリックは疎み、なじる。 それでもエリックを愛し、結婚生活にしがみついていたアイビーだが、彼の子どもに言われたたった一言で心が折れてしまう。ところが、愛することを止めてしまえばその生活は以前よりも穏やかで心地いいものになっていて……。 愛することをやめた途端に愛を囁くようになったヒーローと、その愛をやんわりと拒むヒロインのお話。 この作品は他サイトにも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID 179331)をお借りしております。

あなたが望んだ、ただそれだけ

cyaru
恋愛
いつものように王城に妃教育に行ったカーメリアは王太子が侯爵令嬢と茶会をしているのを目にする。日に日に大きくなる次の教育が始まらない事に対する焦り。 国王夫妻に呼ばれ両親と共に登城すると婚約の解消を言い渡される。 カーメリアの両親はそれまでの所業が腹に据えかねていた事もあり、領地も売り払い夫人の実家のある隣国へ移住を決めた。 王太子イデオットの悪意なき本音はカーメリアの心を粉々に打ち砕いてしまった。 失意から寝込みがちになったカーメリアに追い打ちをかけるように見舞いに来た王太子イデオットとエンヴィー侯爵令嬢は更に悪意のない本音をカーメリアに浴びせた。 公爵はイデオットの態度に激昂し、処刑を覚悟で2人を叩きだしてしまった。 逃げるように移り住んだリアーノ国で静かに静養をしていたが、そこに1人の男性が現れた。 ♡注意事項~この話を読む前に~♡ ※胸糞展開ありますが、クールダウンお願いします。  心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。 ※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義です。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。イラっとしたら現実に戻ってください。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

処理中です...