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しおりを挟む「あの!」
「あの!」
俺とノエルは同時に言った。
そしてお互い、どうぞどうぞとどこかのコメディアンみたいに発言を譲り合った。
「私のはたいした事ないから、乃海君からどうぞ。」
「あのさ…ノエルの家って…水原工務店っていう会社やってる?」
ノエルは驚いた顔をした。
「ごめん!気持ち悪がらないで!俺、ストーカーとかそういうんじゃないから!」
しまった。
いきなりこんな事言うんじゃなかった。
俺は早くも後悔し始めた。
「大丈夫。乃海君、そういう風に見えないし。でも何で知ってるの?」
「じつは…俺のじーちゃんが、水原澄子さんていう人を探してて…。」
ノエルはすごく驚いて、動かなくなった。
そしてそのキレイな目から涙がポロポロ溢れてきた。
「えっ?何っ?俺なんかまずいこと言った?どうしよう!ごめん!忘れて!ほんとにごめんなさい!」
「おじいさんの名前…和夫さん…?」
今度は俺が驚いてしまった。
「うん。岩崎和夫だよ。この街の施設にいるんだ。」
「そうだったの…。」
ノエルの涙はしばらく止まらなかった。
さっき会ったばかりなのに、俺にはどうしてもこれが初対面だとは思えなかった。俺はこの子の事を知っている。この子は絶対に夢に出てきたあの由紀子だ。そうだとしか思えない。でも、ノエルに俺の見た夢の事を言うのは、さすがに頭がおかしいと思われる気がして、言い出せなかった。俺はノエルをじっと見つめていた。ノエルの震える肩を見て、抱きしめてあげたいと思った。彼女が泣いているのは、もしかしたら…、なんとなく悪い予感がしてきた。ただ、ノエルがうちのじーちゃんの事を知っていたのは、澄子さんもじーちゃんに会いたいと思っていたんだろうと思った。
「ノエルのおばあちゃん…が、澄子さんなんだよね。」
「うん。」
「乃海君のおじいさん、何て言ってたの?」
「澄子さんの事を探してくれって言われたのは、じーちゃんがここの施設に入った時なんだけど、じーちゃん、前に澄子さんが夢に現れたんだって。」
「それ、いつ頃?」
「えっと、確か去年じゃないかな。その時一年前って言ってたから。」
「それ、おばあちゃん、会いに行ってたと思う。」
「え?」
「おばあちゃん、去年倒れて何日か意識不明だったの。意識が戻った時、和夫さんに会いに行ったって言ってた。」
「マジで!」
俺たちは驚いて顔を見合わせた。
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