上 下
37 / 72

37

しおりを挟む

「あの…もしかして…ヒロキさんのお姉さんですか?」

「はぁ?」

「あ、あの、やっぱり私、お部屋間違えてなくて…。」

「私がヒロキの姉に見える? あんたこそ誰なのよ?」
女の人は私を上から下まで舐め回すようにジロジロ見た。

「あ、すみません! わ、私は玉森珠羅と申します。ヒロキさんとお付き合いさせてもらっていて…い、一緒にここに住まわせてもらってます。」

「はぁ~??? 一緒にここに住んでるですってぇ? ったくあの男何考えてんの!」

「あの~どうかされました?」

「私はね~、ヒロキの彼女よ! もう4年も付き合ってんだから!」

 その女性の言葉に衝撃を受けて動悸が激しくなった。頭の中が真っ白になって体の力が抜けてきてた。

―やばい、倒れそう!

 その時、ドアが開いてヒロキが帰ってきた。

「ただいま……!」

 ヒロキは私とその女性を見て、時間が止まったみたいに硬直した。沈黙を破ったのはその女性だった。

「ちょっとヒロキ、何なの、この女? 私ってものがありながら、よく家に女を連れ込んだり出来るよね!」
ヒロキの自称彼女さんは、そう言った。

「サ、サキ~?」
ヒロキは声が裏返っている。足もガクガク震えてる。

「何で? 何で? %$#&*……。」

 ヒロキは驚きのあまり、発する言葉はもはや意味を成していなかった。

「あなた! 分かったでしょ? 私とヒロキは付き合ってるの。ここはあなたの居場所じゃないの! 帰ってくれる?」
ものすごい威圧感でサキさんというその人は私を指さして言った。

「ちょっと待てよ! 俺たち別れたんだろ? さよならって言って去っていったじゃないか? その後も音信不通だったじゃないか!」
ヒロキがそう言うと、サキさんは呆れたように溜息をついた。

「ヒロキ、あのさぁ~、長い付き合いなんだから私の性格なんて分かってるでしょ? 今までだって、別れるって言っちゃあ、いつも別れなかったじゃない。いい加減学びなさいよ!」

「はぁ~? 何、言ってんだ! 一ヶ月二ヶ月ならまだ分かるよ。もしかしたらいつものヤツかなって…。だけど一年だぞ、一年! 音信不通になって、電話着信拒否されて、SNSも全部ブロックされて、一年も放置されたんだぞ! どんなマヌケでも別れたんだって思うだろ!」
ヒロキは怒り狂って言った。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

転生幼女の怠惰なため息

(◉ɷ◉ )〈ぬこ〉
ファンタジー
ひとり残業中のアラフォー、清水 紗代(しみず さよ)。異世界の神のゴタゴタに巻き込まれ、アッという間に死亡…( ºωº )チーン… 紗世を幼い頃から見守ってきた座敷わらしズがガチギレ⁉💢 座敷わらしズが異世界の神を脅し…ε=o(´ロ`||)ゴホゴホッ説得して異世界での幼女生活スタートっ!! もう何番煎じかわからない異世界幼女転生のご都合主義なお話です。 全くの初心者となりますので、よろしくお願いします。 作者は極度のとうふメンタルとなっております…

オカンの店

柳乃奈緒
ライト文芸
大阪のような街の賑やかな繁華街を 少し外れた細い裏通りを歩いて行くと ひっそりある『オカンの店』 本当にあったら、毎日通ってしまいそうな アットホームな飲み屋のオカンと 店を訪れる客のほのぼの現代風のドラマです♪ 時々、ファンタジーあります。 作中に掲載している挿絵画像は、マダラさんと シンカワメグムさんから頂きました。

夢の国警備員~殺気が駄々洩れだけどやっぱりメルヘンがお似合い~

鏡野ゆう
ライト文芸
日本のどこかにあるテーマパークの警備スタッフを中心とした日常。 イメージ的には、あそことあそことあそことあそこを足して、4で割らない感じの何でもありなテーマパークです(笑) ※第7回ライト文芸大賞で奨励賞をいただきました。ありがとうございます♪※ カクヨムでも公開中です。

【完結】婚活写真、お撮りします。

たまこ
ライト文芸
新天地で婚活をスタートさせようと意気込む梨奈。結婚相談所へ申し込むための写真を撮ろうと、写真館へやって来た。そこで出会った尚也と過ごす優しく暖かい日々の中で、梨奈は少しずつ過去に向き合い、心を癒していく。

僕と私の最後の49日。

翠sui
ライト文芸
僕と君の最後の49日を書いた薄暗いラブストーリー。

カラスの恩返し

阪上克利
ライト文芸
やりたいことなどなく毎日ぼんやりと好きなライトノベルを読みながら生きている植竹義弘は上尾にある実家を出て横浜の会社に就職する。 はじめての一人暮らしで苦労しながら実家にいたとき感じなかったことに気づく。入社後もぼんやりと仕事をする中でいろんなことを学ぶ義弘。 それでも自分が何がやりたいかが分からず、ついにはそれを考えることもなく流れるままに毎日を過ごすようになってしまう。 そんなある日、ごみ捨て場で瀕死になっているカラスを助ける。 助けたカラスは……

パパラッチ!~優しいカメラマンとエース記者 秘密はすべて暴きます~

じゅん
ライト文芸
【第6回「ライト文芸大賞」奨励賞 受賞👑】 イケメンだがどこか野暮ったい新人カメラマン・澄生(スミオ・24歳)と、超絶美人のエース記者・紫子(ユカリコ・24歳)による、連作短編のお仕事ヒューマンストーリー。澄生はカメラマンとして成長し、紫子が抱えた父親の死の謎を解明していく。  週刊誌の裏事情にも触れる、元・芸能記者の著者による、リアル(?)なヒューマン・パパラッチストーリー!

処理中です...