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「うわぁぁぁぁぁーーーー!」
僕はビックリして後ろにひっくり返った。

―何なんだ、コレ? 生きてんのか?

 恐る恐る立ち上がって、もう一度タヌキの目を見てみた。

「この、ばかちんがぁーーーー!」
どっかで聞いた事があるような有名な先生のモノマネをしてタヌキが僕の頭を小突いた。

「痛ってぇ…。」
僕が頭を押えると、タヌキは大きな目をクリクリさせて話しかけてきた。

「おまえオラが見えるのか?」

―これもまたどっかで聞いたようなセリフ…。

「見えますよ。見えてますけど何かっ?」
半分ヤケになってタヌキに吐き捨てるように言った。

「はいぃー、こっからが大事ですぅ~! いいですかぁー? メモは取るなぁ~! メモはぁ~! 書くと勉強した気になるだけで頭には入りませんよ~。頭に叩き込みなさぁ~い!」
タヌキは、またどっかの有名な先生のマネをしている。

「何なんスか、いったい?」

「おまえに私が見えるということはぁ~、おまえは選ばれし運命の相手だと言う事ですぅ~!」
タヌキは口を尖らせて言った。

「はぁ~?」

―何で僕がタヌキの置物の運命の相手なんだ?

「この、バカちんがぁ~!」
またタヌキに小突かれた。

「愚かなおまえに一つ教えてあげよう。この辺に住む、ある娘がいた。娘はいつもワシに挨拶をしてくれ、頭やお腹を撫でてくれた。ワシはその子が来てくれるのを毎日楽しみにしていた。しかしある日、その子の命は突然終わりを迎えようとしていた。ある悲惨な事件のせいで! ワシはその子の魂の半分を自分の体の中に避難させた。その子は一命を取り留めたが、彼女の魂の半分は奴に持っていかれてしまった。ワシの力もそう長くは及ばぬ。あの子の魂を守ってあげられるのにも限界があるのじゃ。そう…時間はあまり残されてはおらぬのだ…。」
タヌキは悲しそうに涙を浮かべて語った。

「救いは、おまえさんがワシの姿を見ることが出来たということじゃ。」
タヌキは目の奥をピカっと光らせて強い口調で言った。

「何? 何? 何なんですかぁ~?」
僕には全く訳が分からない。

―僕がこのタヌキの姿を見る事が出来たからって何なの? まさか僕がその子を助けられるとでもいう訳? でも僕にはそんな力なんてあるはずも無い…。ケンカだってほとんどしたこと無いし、腕力にも自信は無い。ましてや超能力や霊能力も持ち合わせていない! 一体このタヌキは何が言いたいんだ?

「後はお前に任せたぁぁぁ…。」
タヌキはそう言うだけ言って、また元の信楽焼きの置物になって動かなくなった。


 何なんだよ、後は任せたって?

 話は最後までしろよ~!

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