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5.雨
5-12
しおりを挟む「いくぞ! せーの!」
大雨に打たれながら砂原は力の限り石を押したがビクともしない。時折、雷が光って轟音がする。
「これ…無理なんじゃね?」
砂原は弱音を吐いた。
「大丈夫! いい感じになってきた! あと一押し!」
声は自信満々に言った。
―いい感じって…全然そんな風には見えないけど…
「さあ、力を振り絞って!」
声に従って砂原は思いっきり力を込めた。
「うおおおおおおおお」
なんと石は吹っ飛んでいった。
「…まじか…俺…すごくない?」
砂原は呆気にとられた。
「ありがとう。」
振り返ると、爽やかな青年が砂原に微笑みながら立っていた。
「…あんた…どっから出てきたの?」
「どっからって…」
男は地面を指さした。
―本当に岩の下にいたのか?
砂原は首を傾げた。
「助けてくれた君にお礼をしたいところだけど時間がない。急いで行こう!」
「行こうってどこに…って俺も?」
砂原が話終わる前に男は砂原の手を引っ張って走り出した。
「…ここは…森だったのにな…」
男は走りながら呟いた。
「え?」
「今は、自由な世の中かい?」
男は目を細めて砂原を見た。
「えっと…まあ、自由なんじゃないスかね…。」
「そうか…なら良かった。」
男は笑顔で言った。
「あんたノンキに笑ってっけど、こんな大仕事、普通ラーメン10杯奢ってくれるっていってもしないよ!」
砂原は恨めしそうに言った。
「じゃあ、11杯は奢らないといけないわけだ。」
男はハハハと笑った。
砂原と男は繁充と女生徒が会っていた店の軒下へやって来た。
「あんたが来たかったのって、ここ? 誰もないし…」
砂原はキョロキョロと辺りを見回した。男は宙に手をやって何かを探していた。
「何してんの?」
「…まだかすかに感触がある!」
男はぐいと空間に手を入れると肘から先が消えて無くなった。
「ちょ、ちょ、ちょっとあんた! 腕が!」
砂原は怯えて後ずさりした。
「硬い! 君も手伝って!」
「手伝ってって言われても…」
訝りながらも砂原は男が手を入れている所を覗いた。するとそこには不気味な空間が現れていた。
「何なの、これ?」
砂原は中を覗いてみた。すると中には繁充と、繁充の手を引っ張りながら泣き喚いている綾女がいた。
「繁充…。立川さん!」
砂原は男を手伝ってその空間を思いっきり引っ張った。すると人が入れるくらいの空間が出来た。
「ありがとう!」
男は微笑みながら砂原に礼を言うと、その穴の中へ入って行った。
「ちょっと待ってよ! 俺も!」
砂原も男の後を追った。
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