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6 全く性格の違う菜々子と夏子が入れ替わった! 会社は? 夫婦生活は? どうすればいいのよ~!
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しおりを挟む「君も飲む?」
「え、は、はい!」
尚之さんは私にコーヒーを入れてくれた。豆から挽いて入れる本格的なコーヒーマシンだった。部屋の中が一気にコーヒーのいい香りで満たされた。
「どうぞ。」
目の前に出されたコーヒーは、今まで飲んだどのコーヒーより美味しかった。豆が違うのかな? それともコーヒーマシンのせい?
「美味しい…」
美味しそうにコーヒーを飲む私を、尚之さんは不思議そうに頬杖をついて見ていた。
「よくあの姉貴を会心させることが出来たね。」
「…真帆さんも…話せば分かってくれました。」
「話せばって…興信所使ったんでしょ? たいした手を使ったもんだ…」
「…す、すみません! 尚之さんのお姉さんに対してそんな姑息な手を使ってしまって…。その興信所の件なんですけど…私、その分はちゃんとパートに出て働いて返そうって思ってたんですけど…」
「パートって、何するの?」
「いつも買い物をするスーパーに空きがあったので…」
「君がスーパーで働くの? 信じられないな…」
「はい。やっぱり馴染みのある仕事の方が働きやすいかなと思いまして…」
「…馴染みのある?」
ハッ!
スーパーで働いていたのは菜々子であった私だった!
「昔、アルバイトしたことがあるんです。短い間でしたけど…。」
尚之さんは訝しげな顔で私を見た。
「そ、そのっ! 興信所は結局使ってないんです! 実は…」
そう、興信所に頼みに行こうとしたら、ずっと沈黙を続けていたナビが…
「オ久シブリデス、菜々子サン。ア、今ハ、夏子サン デシタネ!」
「ナビ! どうしたの、急に!」
「本日ハ、皆サンニ トッテ 必要ナ 情報ヲ オ届ケニ 参リマシタ。コチラ ヲ ドウゾ! マンション ノ パソコン ニモ 送信シテ オキマス。煮ルナリ 焼クナリ オ好キニ オ使イ 下サイ マセ!」
ナビはそう言うと、生田裕一郎本人や彼の家族の情報、そして仲睦まじい家族写真、今まで真帆さんに貢がせてきた数々の詳細、そして、あろうことか真帆さんと同時進行で付き合っていた別の女性との写真まで画面に映し出していった。
「ソレカラ、コチラノ女性、坂井恵美子サント オッシャルノデスガ、彼女モ 生田裕一郎ノ 被害者デス。オ節介ツイデニ 恵美子サンニモ スデニ 連絡シテ オリマス。絵美香サンハ 夏子サンニ 是非オ会イシテ、裕一郎ノ クズ ブリヲ 話シタイト オッシャッテ オリマス。」
「…ナビ…、根回し速っ!」
「ナンテッタッテ私ハ、最新鋭ノ AIヲ搭載シタ ナビ デゴザイマスカラ~」
妙にナビが照れているように感じた。それにしても家族がいるというのに真帆さんだけでなく他にも付き合っている人がいたとはっ!
「…生田裕一郎…キサマッ!」
私は怒りでワナワナと震えた。
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