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6 全く性格の違う菜々子と夏子が入れ替わった! 会社は? 夫婦生活は? どうすればいいのよ~!
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しおりを挟む「いい! パッケージは顔! いくら中身が良くてもブサイクだと売れないの! これ、メーカー側がデザインしたの?」
「いや…それは…うちの専務が陣頭指揮をとって…。なんか妙に張り切ってくれて、デザイン案を見た時は、さすがに僕もどうかとは思ったんだけど、専務は会長の代から頑張ってくれている人で、僕より年配だからダメとは言えず…。」
「ほら、言ったことじゃ無い! いい! ビジネスは情や慣れあいでするもんじゃないの! そんな半端な物作ったって、喜ぶのはその専務だけよ! あんた、社長でしょ? 社長ってのはね、嫌われてなんぼなのよ! 大事なのはお客様でしょ? 買ってもらえなかった意味ないじゃん! いくら専務が嫌な気分になったって、ダメな物は却下するべきなのよ! そんな物売ろうなんて、消費者ナメ腐ってるわよ! デザインはケチんないでデザイン事務所に頼まなきゃ。それからさ、物は欲しい人がいる場所で売らなきゃ売れないよ。こんな所帯じみたド田舎で誰が使うの? ちょっとどこにチェーン店出してるのか教えなさいよ!」
「はいっ!」
社長は棚から会社案内を持ってきた。ふ~ん、けっこう手広くやってんだ…。でもどこも似たり寄ったり。この価値を分かってくれそうな場所は無い…。東京出店か…と思った時、私はある一店舗に気が付いた。
「ここ…。」
「あ、光ヶ丘店? ここいいでしょ? 最近開発された新興住宅街。」
「テレビで見たことある。大企業が協力して最新のテクノロジーを駆使した未来都市を作ろうっていうコンセプトで作られたモデル地区だよね…。」
「そうそう! 僕、初めてその計画聞いた時、何でこんな田舎にって思ったんだけど、逆に何もない田舎だから出来る事なんだなって感心したんだ。」
「ここで売る! あんた、ぼさっとしてる暇無いよ! デザイン事務所行くから準備しな!」
「は、はいっ! って、でも…会長の許可を得ない事には…」
「あんた社長でしょ? いつまでパパのご機嫌伺ってりゃ気が済むのよ! とりあえず形にして絶対に売れる確信持てりゃ、会長だって文句言わないわよ! そのレベルまで完成させるの! あ、それと、誰か秘書やれる人間連れてきて。今すぐ!」
「…えっと…秘書は鈴原さんなのでは…?」
「は? ブレインの私が雑務なんか出来るわけないでしょっ!」
「はいっ! 只今!」
社長は大急ぎで部屋を出て行った。その間に私は知り合いのデザイン事務所に連絡した。「HR DESIGN OFFICE」というそのデザイン事務所の代表のヒロキさんは尚之の同級生で、尚之の会社の内装も彼にやってもらったのだ。ヒロキさんのデザイン事務所は、内装だけではなく商業デザインも手掛けているので、このパッケージやその他諸々を一括してそこに頼もうと思った。
でもあの事務所…最近何故か、オフィスを信楽焼のタヌキの置物だらけにしていて…そんな一抹の不安はあるけど腕は確かでセンスはピカイチなのでスルーすることにしておこう…。(何故デザイナーのヒロキが信楽焼のタヌキの置物を集めているかは、以前投稿した小説「タヌキな彼女」をご参照ください)体が菜々子と入れ替わっているので、ヒロキさんには夏子に紹介されたという事で話をした。
電話が終わった頃に社長が男性社員を連れて戻ってきた。ここに来る前に社長室の場所を聞いた若い男性社員だった。
「あんた、さっきの…」
「彼、今までPOPを書いてもらっていた若村君。」
社長は男性社員を紹介した。
「あんなダサいPOP作るようなセンスの持ち主に私の秘書なんて勤まるの?」
「…鈴原さんって…こんな性格でしたっけ?」
若村は社長にヒソヒソと聞いた。
「事故で頭を打って記憶障害なんだって…」
「…そうでしたか…」
「何コソコソ話してんのよ! デザイン事務所は連絡出来たから今から東京に行くわよ! 若村! 車回してきて! 社長! 資料整理して持ってきて! さ、みんな早く!」
私はソファにどかっと座って、さっき社長が入れたハーブティーを優雅に飲んだ。二人は顔を見合わせて一つ溜息をつくと、大急ぎでそれぞれの役割に走った。
…フッフッフッフッ…ひと儲けしてやろうじゃないの…
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