上 下
217 / 262
6 全く性格の違う菜々子と夏子が入れ替わった! 会社は? 夫婦生活は? どうすればいいのよ~!

16 夏子→菜々子

しおりを挟む

 事故の衝撃で、何故か私は菜々子の体に入れ替わってしまった。こんな漫画のような事がまさか自分の身に降りかかるとは思ってもみなかった…。しかし何で私がこんな地味な女にならなければならないの!

「姉ちゃん、検査の結果は異状なかったって。しばらく自宅で様子見してくださいって先生言ってたよ。」
扉を開けて私の病室に入って来たのは、菜々子の弟、大輝だ。しょうがない…菜々子のフリをするか…。
「私、帰っていいの?」
「うん。家に帰ってもしばらく安静にしてくださいって。」
大輝という子はとても優しく、私の身を気遣って荷物も全部持ってくれた。なかなか躾が行き届いている。出口に向かって大輝と歩いていると、前から息を切らせた小太りの男が走ってきた。

「鈴原さんっ!」
自分の事を呼んでるって気付かなくてスルーしたら、大輝が肘でつついて私に目配せをした。え…この小太り、私の事を呼んでいたのか…。そういや、菜々子の苗字、鈴原だったわ…。

「…どちら様?」
「ちょ、ちょっとぉ~鈴原さん~、冗談は勘弁してよぉ~」
「すみません! 姉は頭の打ちどころが悪かったようで、記憶障害を起こしているんですよ。」
大輝がすかさずフォローした。
「そ、そうなのっ? 大変じゃない! 歩いて大丈夫なの? 僕、車椅子持ってこようか?」
「大丈夫です。検査したけど異常は無かったようですし、大輝もいるし。」
「異常無かったの…。良かった~。心配したんだよ~! ぼ、僕、車回してくるから出口で待ってて!」
小太りはそう言って走り去っていった。

「誰? あの小太り。」
「姉ちゃんの会社の社長だよ!」
「あ、そう。っぽくないね…。」
「…。」
大輝もそれは認めたようだ。

「大輝! 焼肉でも食べに行くか!」
「えっ? 姉ちゃん、大丈夫なの? 給料日まだ先だよ。」
「快気祝いにあの社長に奢ってもらおう! 大事な社員が事故ったんだから、お見舞い代わり、そのくらいしてくれるでしょ!」
「マジで~! 送ってもらう上にご馳走させるなんて悪いよ~!」

 大輝はそう言ったが、社長に話を持ち掛けると彼は快諾した。頬を赤らめてウキウキしてるぞ! なんだ。コイツ、もしかして菜々子に気があんじゃない?

しおりを挟む
感想 84

あなたにおすすめの小説

出逢いがしらに恋をして 〜一目惚れした超イケメンが今日から上司になりました〜

泉南佳那
恋愛
高橋ひよりは25歳の会社員。 ある朝、遅刻寸前で乗った会社のエレベーターで見知らぬ男性とふたりになる。 モデルと見まごうほど超美形のその人は、その日、本社から移動してきた ひよりの上司だった。 彼、宮沢ジュリアーノは29歳。日伊ハーフの気鋭のプロジェクト・マネージャー。 彼に一目惚れしたひよりだが、彼には本社重役の娘で会社で一番の美人、鈴木亜矢美の花婿候補との噂が……

流星の徒花

柴野日向
ライト文芸
若葉町に住む中学生の雨宮翔太は、通い詰めている食堂で転校生の榎本凛と出会った。 明るい少女に対し初めは興味を持たない翔太だったが、互いに重い運命を背負っていることを知り、次第に惹かれ合っていく。 残酷な境遇に抗いつつ懸命に咲き続ける徒花が、いつしか流星となるまでの物語。

わたくし、残念ながらその書類にはサインしておりませんの。

朝霧心惺
恋愛
「リリーシア・ソフィア・リーラー。冷酷卑劣な守銭奴女め、今この瞬間を持って俺は、貴様との婚約を破棄する!!」  テオドール・ライリッヒ・クロイツ侯爵令息に高らかと告げられた言葉に、リリーシアは純白の髪を靡かせ高圧的に微笑みながら首を傾げる。 「誰と誰の婚約ですって?」 「俺と!お前のだよ!!」  怒り心頭のテオドールに向け、リリーシアは真実を告げる。 「わたくし、残念ながらその書類にはサインしておりませんの」

ラムダラムダ

きもとまさひこ
ライト文芸
広野という名字のハッカーの少年はわりとあちこちにいるようだ。 彼らは親戚かもしれないし赤の他人かもしれない。 共通するのは、クールなこと。 クールな広野はときに熱くなり、それゆえに愛らしい。 こちらの広野は病院に潜り込んで、院内データベースの情報を盗み出す。 そこで出会ったのは、イカれた少女。ラムダラ様のご加護を信じる少女。 こっちは生きるために必死なんだ、だからあんたもご加護なんか求めないで、そうだな、とりあえず金稼げ、ほらよ。 出会い系のサクラのバイトを紹介し、どんどん深まっていく少女との関係。 だけど広野は、そんなに器用なやつではなくて……。

ベッドタイム・ストーリーズ

花野未季
ライト文芸
『ベッドタイム・ストーリー』とは、眠る前に読んだり聞いたりするおとぎ話のこと。 眠りにつく前に読むライトな物語は、少し不思議で少し怖くて、でも少しほのぼの……。 エブリスタ様公式コンテスト『次に読みたいファンタジー ほっこり/ほのぼの』で佳作に選んでいただき、有難くも書評家の三村美衣先生から『新しい昔話』と言っていただけた作品です。 1000〜3000字くらいのショートショートを集めた短編集です。 お楽しみいただけたら嬉しいです!

社内恋愛の絶対条件!"溺愛は退勤時間が過ぎてから"

桜井 響華
恋愛
派遣受付嬢をしている胡桃沢 和奏は、副社長専属秘書である相良 大貴に一目惚れをして勢い余って告白してしまうが、冷たくあしらわれる。諦めモードで日々過ごしていたが、チャンス到来───!?

【完結】婚姻無効になったので新しい人生始めます~前世の記憶を思い出して家を出たら、愛も仕事も手に入れて幸せになりました~

Na20
恋愛
セレーナは嫁いで三年が経ってもいまだに旦那様と使用人達に受け入れられないでいた。 そんな時頭をぶつけたことで前世の記憶を思い出し、家を出ていくことを決意する。 「…そうだ、この結婚はなかったことにしよう」 ※ご都合主義、ふんわり設定です ※小説家になろう様にも掲載しています

トラックメイカー

Luna
ライト文芸
2020年。日本、アメリカ、スイス等々の素粒子物理学研究所の度重なる実験によりパラレルワールドは次々に破壊されていった。加速器やレーザを使った実験は表向きで、裏では黒い噂が絶えなかった。秘密裏に行われている謎の大規模実験、ブラックホール、パラレルワールドの破壊、人類滅亡等々、2020年よりも前からそのような噂はあったのだが学者や専門家は2020年頃から相次いで警告を表明した。 そしてそれから10年が経った2030年。学者や専門家が恐れていたことが現実となった。現実の世界は消失した。

処理中です...