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10章 明子の三回目の章

希望

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船の中はだいぶ賑やかになった。
私、私の子供達、歴、塁、加藤さん、田中、優香さん、優香さんの子供、重屋、朱里ちゃん。
これだけの人が居たら、きっと永遠に船の中で生きていけるだろう。
でも、何か違う。
彼なら、この生活でいいと思うだろうか。
ずっと、ここに居てもいいのだろうか。
こんな世の中になってしまったから、子供達が成長して、満足出来る生活を送れるのだろうか。
凄く悩む。

歴が、重屋と話しをしている。
どうやら、重屋が何処から来て、何処で何をしていたか。を聞いているみたい。
私は、そんな話しには首を突っ込まない。
私は、歴がやる事に何も反対はないから、でも、歴が危険な事になるのなら、私は止めたい。
歴が真剣な顔をして、塁を連れて、私の所に来た。
話しを聞くと、重屋がここに来る途中に、私達の住んでた地域に寄った事がわかった。
重屋の話しに寄ると、そこで気を違えた人達を治す研究をしている人が居たそうで、歴はその人に会ってみたいといい出したのだ。
確かに、気を違えた人を治す事が出来るのなら、今、こんな世の中に希望を与えるだろう。
けど、私達の住んで居た地域には、彼も居るし、貴方達のお母さんも居る。
私には、耐えられない。彼が気を違えた人になっている姿を見るなんて。
歴と塁は声を揃えて言った。
だから、行きたいんだよ。
パパとママが治せれば、ゆり子さんも、皆を治して、普通の世の中に戻したいんだよ。
私は、内心治せるはずが無い。世の中を普通に戻せる訳がない。と思っていた。
でも、歴と塁の目は輝いていた。
きっと止めても、二人は行くだろう。
でも、二人が出て行ってしまうのはこの船が、守れなくなるだろう。
それは、不安でいっぱいだ。
そこで、歴が話し始めた。
行くのは、塁と田中君と加藤さんに行って貰って、僕は、ここに残って、明子さん達を守る。
三人に行って貰って、情報を集めて、誰かに帰って来て貰う。
これなら、安全に生活も続けられる。
私は改めて思った。流石彼の息子達、彼が居たのであればきっと同じ事を言っていたであろう。
私には、止めることは出来ない。
塁が外に行ってしまうのは、凄く悲しいけれど、息子の旅立つ時。
私は笑顔で承諾した。

思い立ったら即行動。
これも彼の血がそうさせるのね。
翌日、塁が加藤さん、田中を連れて私達の住んで居た地域に向かった。
こんな世の中になってからは、夢とか希望なんて、持てないと思っていたけれど。
今日からは、塁が彼を連れてここに戻って来る事を希望に生きて行こう。

塁と加藤さんと田中が居なくなってから、私達は希望を持ったおかげで明るく、元気に生活している。
魚を釣っている姿を見れないのは寂しいけれど、今日も私は窓から海を眺めている。

10章終
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