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1章 幼少期編

とある彼の話 side F

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 その香りをはじめて嗅いだのはいつだったか……。

 甘く芳しく私の心を鷲掴みにすると、心が高揚しふわふわとした気分になった。

 今まで感じた事のなかった衝撃に本能で悟った。

 

 この場所に私の運命の番がいた。



 それは私の番が放つ香り。

 私だけに向かって放たれる物だ。



 この世界には人の他に獣人と呼ばれる種族と竜族と呼ばれる種族と精霊と妖精がいる。

 中でも獣人と竜族には番と呼ばれるただ一人の運命に導かれた唯一の存在がある。

 それが運命の番。

 運命の番は呪いのような物だと言う人もいる。

 自分の気持ちとは別に本能で運命の番を愛したくて仕方がなくなる

 ある意味運命で血の呪いだ。
 
 だから運命の番が存在する獣人や竜族の番は何よりも優先される。

 たとえその人が別の誰かと結婚してようが、運命には逆らえない。

 

 私も運命の番の話を両親から聞いた時は恐ろしくてたまらなかった。

 自分の意思ではない運命という不確かな絆で縛られてしまう運命の番が恐ろしかった。

 
 でも運命の番に簡単には出会えない物らしい。

 寿命の長い獣人や竜族は番が見つからず永い時を独りで過ごすうちに狂って自死をする者もある。

 だから運命の番に出逢えたら生涯幸せになれる。そう言われている。


 その事を理解していたからあの日初めて運命の番の香りを認識した時は、幸福な気持ちと共に恐怖も感じていた。

 運命の番に出逢ったら私はどうなってしまうのか?

 血の呪いのまま愛してしまうのだろうか?

 でもこの香りを知った私はこの香りを持つ人を愛したくてたまらない衝動にかられた。

 自分の中でこんなに狂おしい程誰かを求める感情がある事に驚いた。

 

 私の運命の番の存在は確認できたのにその姿はいまだ確認出来ていない。

 私の番はどんな人なんだろう?

 いや、人かはわからないな。

 早く逢いたい。

 私の、私だけの運命の番。

 たとえこれが血の呪いだとしても。


 私はきっと貴方だけを愛するだろう。

 だから隠れてないで早く私の前に出てきておくれ
 


 

 

 
 
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