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1章 幼少期編

あ、仲間外れにした訳ではないですよ

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 ところで……私は一体なぜこのような事になってるのかしら?




 時は少しだけ遡る。

 騎士団からブルームフィールド邸へ帰ろうとして騎士団の敷地を出た所であるお方に捕まり、有無を言わせず連行され何故か私室に連れ込まれた挙句、お膝の上に強引に座らされ一緒に優雅にお茶をしている←今ココ。

「あの?なぜこんな事になってるのでしょうか?ジュリアン殿下」

 フレディ様とはマブダチになった今、一緒に居る事も珍しくなくなったけれど、ジュリアン殿下とはあの対面した日以来会う機会もなかったはずなのだけど……。

 私の頬を撫でながら、王族の血が濃く現れた紫の瞳を細めるとクスっと笑う。
 
 王様と言うか、お妃様によく似た美人なジュリアン殿下。

 初対面の時も思ったけれど、ゲームのジュリアン殿下と違って物凄くチャラいチャラすぎてとても気になる。

「リアン」

「え?」

「リアンだよ。フレディの事は愛称で呼ぶんだから僕の事も愛称で呼んでくれるよね?」


 私をここに連れてくる時にも有無を言わせないような王族特有の強い威圧を感じたけれど、これは無意識に威圧しちゃってるのかな?

「申し訳ありません。私とフレディ様はお互いに親友だと認識していますので愛称で呼び合いますが、ジュリアン殿下は私が愛称で呼んで良い立場ではありませんので、殿下をそのような呼び名で呼ぶ事は出来ません」

 ジュリアン殿下は将来のこの国の王となる方、いとことは言え私ごときモブが愛称で呼んでいい立場ではない。
彼を愛称で呼んでいいのは家族や婚約者など、特別な人だけだ。
 だからしっかりとジュリアン殿下の目を見てお断りを入れる。

「うーん。さすがアスの妹だね。普通の令嬢なら嬉々として僕に馴れ馴れしくしてくる所だけど、いとことは言え自分の立場をきちんと理解している所は……益々欲しくなるよね」

 そう言うと、ジュリアン殿下は私の額に口づけを落とした。

「ひぐうっっっ」

 殿下の予想もしなかった動きに思わず私は変な声が出てしまった。

「あー可愛いな僕のいとこ殿は。愛称は無理強いしないけど、せめて殿下はやめて。なんだか僕だけ仲間はずれをされてるようで寂しかったんだよ。スカーレット嬢はフレディとは一緒に居るけれど、僕とのお茶会はいつも断るんだから」

 少し頬を膨らませなんだか拗ねたような表情をするジュリアン殿下。
 ゲームの時ですら拗ねたりする表情なんか見たことが無かった私は思わず、可愛いと思ってしまった。

 それにしても……お茶会のお誘いなんか知らないのだけど?

「分かりました。ではジュリアン様と呼ばせていただきます。私の事もお好きな呼び名で呼んでください」

 そう私がニッコリ笑ってジュリアン様に言うと。

 顔を赤くしたジュリアン様が、あーとかうーとか、何やら唸っている。

「ありがとう。じゃあ僕もみんなが呼ぶように今はスーと呼ぶよ。いつか僕だけの呼び方で呼べるように頑張るからね」

 王子様スマイルで私にそう宣言するジュリアン様。
 なんだか良く分からない事を言っていた気もするけど、とりあえず納得してくれたのならそれでいいか。



 それからはお膝から降ろしてくれたジュリアン様。和やかにお茶会をしていると突然お兄様が迎えに来て、お兄様とジュリアン様が言い争いをはじめてしまったけれど、なんとかお兄様を宥める事に成功した私はお兄様と一緒に家に帰る事になった。

 別れ際ジュリアン様に。

「スー。また一緒にお茶会しようね」

 と、ひらひらと手を振られお別れをした。

「あいつ、あれだけスーに近づくなと言ってたのに……ブツブツ」

何やらお兄さまとジュリアン様の2人の中での決め事でもあったのかしら?なんて検討違いな事を考えながら私はようやく家路へとついた。








私とお兄さまがジュリアン殿下の私室から退出した後の事。



「クッ。あんなに可愛いなんてこれじゃ、アスやフレディがめろめろになるのも頷けるな。どうにか僕の物に出来ないかな……」

天を仰ぎ、ソファーに凭れかかっていると。

「リアン、入るぞ」

無造作に部屋のドアを開け入って来たのは、僕の幼馴染みで将来僕の側近の1人となるフリードリヒ。

「フリードか。どうした?珍しいな」

「あぁ、お前が王宮に戻っていると聞いてな。少し話があって……。ん?なんだかこの部屋甘ったるい匂いが酷いな」

僕の部屋の匂いが気になるのか、やたら匂いを意識するフリード。
嫌な匂いなのかと思えば、どっちかと言うとその匂いにうっとりとしている感じだ。

「さっきまでアスの妹とお茶会していたからその時に用意したお茶菓子の匂いかな?甘いのが多かったから匂いがキツかったか?済まないな」

「いや、そう言う訳じゃないんだが……」

何かを言い淀むフリードは珍しいな。まぁ、特段気にする事でもないか。

と、この話を無かった事にした自分をのちのち悔やみきれない程の後悔で泣きたくなる事を僕はまだ気が付かずにいた。


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