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1章 やり直し人生のはじまりのはじまり

繰り返す人生は作られた人生だった 3

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「フローリア、キミはこれからどうしたい?」

 モフモフの神様は私にそう言った。

「どうとは?どういう事ですか?」

 私にはわからなかった。ここは問題のある魂が集められる場所のはずだ。

 この先の人生の行方は神様が決める事では?と思った私は思わず頭をコテンと倒してしまう。

「本来ならこの部屋に来た魂は、私との面談を受け問題なければ魂を浄化し輪廻転生の輪に乗せる。問題ありだと思われたらその魂は制限を付けられ厳しい反省の為の輪廻転生の輪に乗せられるか、魂の消滅。通常はこの3つのどれかに処遇される」

 そうか、やっぱりこの部屋は神様からのこれからの処遇を言い渡されるのね。 

「そしてそのどれにも当てはまらない例外がある」

「例外ですか?」

「そう、この3つに当てはまらないのが迷子の魂だ」

「迷子の……魂。私の事ですか?」

 そう問うと、モフモフの神様はふよふよと傍に寄ってくると私の膝に乗った。

「そうだ。迷子になりやすいのは神や精霊に愛された魂。彼の物たちの魂は清らかで美しいそれ以上に悪い物が惹かれやすい。だから連れ去られやすいのだ」

「私の魂がどうかは知りませんが、確かに清らかな魂には善い物も悪い物も引き寄せる力があると聞きますからそうなんでしょうね」

「ああ、だから特別な1000回目の時を巻き戻される寸前の隙をついて私はキミをこの空間へ転移が成功したんだ。通常ならそんな隙もなくあの世界に取り込まれていたんだ」

「そうなんですか」

「で、話を戻すが。私がいくら神でも出来る事と出来ない事がある。フローリアが繰り返しの人生を送っていた世界からの切り離しは私の力を持っても不可能だった。それは本当に済まない」

「いえ、神様のせいではありませんわ。お気になさらずに」

 本当にそれはモフモフの神様のせいじゃない。だって時が巻き戻っているなんて誰も考えたりしないんですもの。むしろそこまで私の魂を探してくれただけでもありがたいですわ。

「そこでだ。私があの世界に干渉出来た事がいくつかある。あの世界を次の1000回目の巻き戻りを最後に終わらせる事。すなわちヒロインの使える呪文の破棄。だからあの世界で二度と再構築は出来ない。ゆえに次巻き戻ったらそれは現実でやり直しが効かないようにした。魔法が使える世界というのは変わらないが、魅了などの精神干渉系の魔法の無効。ヒロイン特有のチートと言われる者は私が全て取り上げた。だからヒロインと言われる者はただの少女になる」

 え?それっていいのかしら?それだけヒロイン?様の能力を封印して……乙女げーむとやらは大丈夫なのかしら?

「大丈夫だフローリア。今までが変だったのだよ。次の世界は身分差はあれど今までとは違う現実だ。ゲームではない。たった一度・ ・ ・ ・ ・の現実になるのだよ。それを理解していればそれでいい」


 えっと、神様が言ったのは次の巻き戻りが最後。精神干渉系の魔法の無効。ヒロインちーと??なんだろう?の無効。そして念を押されたのが次の巻き戻りの人生は現実・ ・と言う事は次の巻き戻りで死を迎えたら皆死ぬて事?

「そうだ。次の巻き戻りはやり直しは効かない。次の人生は現実で最後の人生だ」

「そう……なんですね」

 自分自身まだ何度も同じ時を繰り返し生きて来たという実感がわかないけれど、モフモフの神様が言うのだからそうなんだろう。

 そうか。次で終わりなんだね。と、私がぼんやり思っていると。

「そこで本題だフローリア。キミには本当に申し訳ないと思うけれど、あの胸糞悪い世界に戻って貰う事になる。私も努力はしたのだけど、あの世界がフローリアを離さない。でもこの繰り返しが終わり君が人生を全う出来れば次は輪廻転生の輪に乗せてあげられる。そして今まで君を苛んでいた役割は破棄した。キミは自由だ」

「自由?」

「そう。次目覚めた時からキミはただの侯爵令嬢フローリア・ナイトレイ誰にも縛られず何にも囚われない」

「私は自分の思った通りに生きても誰も咎めないのでしょうか?」

 不安そうな顔を見せるフローリアにモフモフの神様は

「今までのように献身的に誰かの為に生きなくていい。キミが999回目の死を迎えた時に思った事を願っていいんだよ」

 お膝の上にいたモフモフの神様が私の手にスリッと寄ってきて暖かい光に包まれた。

「わかりました。私最後の巻き戻りの世界に戻りますわ。神様お気遣いありがとうございます」

「すまないフローリア。キミにばかり苦労をかける。最後の人生キミには幸せになる権利がある。僕からの祝福を授けよう。キミが人生の終わりに幸せだったと言えるように……」

 私のお膝に居たモフモフの神様が浮かび上がると私の額にくっつき金色の光を放ったと同時に私の意識は遠くなり瞳を閉じた。


「フローリア。キミの願いが叶いますように。祈る事しか出来ない私を許して欲しい」



 そんな夢か現実かあやふやな記憶を持ちながら私の意識は沈んでいく。

 次目が醒めた時、私はこの夢か現実かあいまいな物語のような出来事を受け入れる事が出来るかは


 目醒めてみなければわからない。
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