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1章 やり直し人生のはじまりのはじまり

繰り返す人生は作られた人生だった

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 モフモフの神様が私に語りだしたのは。

 私がフローリア・ナイトレイの魂として初めて生を受け死を迎えた時の人生の話。

 侯爵家の娘として生まれ、望まれて王家に嫁ぐはずだった彼女。

 ある日現れたポッと出の男爵令嬢に王太子の寵愛は奪われ、存在自体を否定された悲劇の侯爵令嬢。

 自分の命と引き換えに国の安寧を願う聖女のような彼女だったが、それは王太子を愛していたからの行動ではなく、愛せないが故の諦めの行動だった。

 本来ならフローリアの寿命はその時ではなく、もっとずっと長生きできる人生だったのに例の男爵令嬢の存在が運命を捻じ曲げてしまった。

 それでも、寿命を全うせずに身体から離れた魂は全てこの空間に導かれるはずなのにフローリアの魂はこの空間に来ることなく、輪廻転生の輪にも乗る事がなく彼女の魂は何者かによって何らかの手段で魂が肉体から離れた瞬間、辿ったはずの時間軸に戻されるというあり得ない事態に陥っていた。

 一度目の人生を終わらせた時の状態から本来はすぐにこの部屋に回収されるはずの魂が、いつまでたっても現れない事にこの部屋を管理している前のモフモフの神様がその異変の調査をさせた。

 輪廻転生の輪に乗った形跡もなく転生したという記憶もない。

 フローリアの魂はどこへいってしまったのかと、フローリアの魂は重要回収魂案件にされていた。

 そしてフローリアの魂を回収出来ないまま数え切れないほどの時間と年数が流れた。その間全く彼女の魂の足取りが掴めない。

 こんなに長い間足跡すら残らずに輪廻転生の輪にも乗らない魂ははじめてだった。

 魂は転生を繰り返すたびに少しずつ劣化をしていく。

 正しい輪廻転生をしないままの劣化した魂は消滅すれば輪廻の輪に影響は及ぼさないが、劣化した魂に悪意の塊が植え付けられると大変な事になってしまう。

 悪に染まる魂をそのまま転生させてしまえばその魂が転生した世界が消滅の危機に立たされてしまう。

 だからそんな事にならないためにも魂の管理をする神様が存在する。

 そしてフローリアの魂の担当をしていた前任の神様から引き継いだのが目の前に居るモフモフの神様。

 目の前の神様にフローリアの担当を引き継いだ時に彼はフローリアを見つけた。

 彼女の魂の寿命を待って回収しようと待ち構えていると、なぜか目の前で魂が消滅した。

 いや、正確には誰かに持ち去られたのだ。

 モフモフの神様はどうしてフローリアの魂だけがこの部屋に回収出来ず、必ずと言っていい程直前で奪われるのだ。

 コレはおかしいと思ったモフモフの神様はフローリアの魂を一刻も早く回収して癒さなければ彼女の魂の穢れが暴れだしてしまう。

 それからは他の魂は担当を変えて貰いモフモフの神様はフローリアだけを追いかけてくれていた。


 そして、ようやくどうしてフローリアの魂が回収できなかったかを掴んだ神様。

 フローリアの魂がどこへ連れ去られているのかを知った神様は愕然としたのだ。


 彼女の魂は穢れる事なくむしろ何度も繰り返す時間の中で輝きを増していた。

 しかし、彼女の魂は美しく気高くなる一方自分の心を失っていた。

 その理由が……。



 フローリアの魂が連れ去られていた世界にあった。

 いや、連れ去られたのではない。

 一番最初の彼女の魂が生きた世界。


 その世界は乙女ゲームという聞きなれない言葉の世界だった。

 

 そう、フローリアは乙女ゲームという仮想現実の世界に閉じ込められ、その世界で生きていた。


 彼女の魂は乙女ゲームの中に取り込まれていたのだった。
 
 

 
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