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彼女の
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しおりを挟む「っぅんっ・・・、ふぅ・・・んんんっ・・・。」
息をするのも儘ならないほどの激しいくちづけに、頭は朦朧としていた。 押し入ってきた舌に口腔内を犯される。
厚い舌に舐られて、お互いの舌を擦り合わせて。
飲み込みきれなかった唾液まで、舐めとられ。
濡れた音とお互いの吐息だけが、頭の中で鳴り響いていて湊のキスに夢中になっていた。
突然
「ピコン♫」
と電子音がなり響き我に返った。
お互いにパッと身体を離し、湊とふたり顔を見合わせる。
え? あれ?
今 私 何して…た?
更に、「ピコン!」と電子音。
わたしのスマホ?
我に返り、慌てて足元に転がっていたバッグを拾い上げ、スマホを取り出す。
愛美からのSNSだった。
[篠原さんに今日のも貸し一つですよ、って伝えて。今までの貸しはまとめてお支払い頂きますので悪しからず。ってね。
香奈子、素直になりなよ。]
は? どう言うこと?
[明日の報告 楽しみにしてるよ~]
はい????
「何これ…?」
私のつぶやきに 「ん? どうした? 」と言いながら、湊が横からスマホを覗き込む。
「ああ、愛美ちゃんにはちゃんとお礼しなきゃね。」
そう言ってニヤリと笑い、わたしの腰を引き寄せた。
愛美ちゃん?!え、知り合いだった…?…?
「え? どういう・・・」
こと? と言う前に顔を寄せてきた湊にまた唇を塞がれた。唇を舌でなぞられ、ぬるりと押し入ってきたそれの侵入を容易く許してしまう。唇を食まれ、舌を絡めてまたボーッとしてきた・・・きもちいい・・つい舌を絡め返してしまい湊の抱きしめる力が強くなった。
・・・が!
だめ! まって!
湊の胸を押して離れようともがくがうまくいかない。
「んっむううぅ・・あ、・・はぁっ ・・・ま・・まってみな・・・・まって、湊!」
なおもキスしようとする湊をなんとか引き剥がし、呼吸を整える。
「待って湊。どういうことか説明して。」
クラクラする頭で彼を見上げたら、またあのニヤニヤ顏でわたしを見ていた。
もう!また!! 何なの?!
睨んでやったら、うれしそうに抱き寄せられて頬を撫でられた。湊の目が優しくて、ほっぺたを撫でる手が心地よくてまた流される。湊が私の手からスマホを奪い取った。唇にちゅうっとやわらかくキスされて、そのままほっぺたにちゅっちゅっとキスされる。耳をペロリと舐められ「香奈・・・。」と吐息が耳元を掠め、なんだかもう力が入らなくなった。
しかし不意にわたしの両肩を掴んだ湊は身体を離した。
「おいで。ちゃんと全部話そう。」
手を引かれ奥の部屋へ入ると。
キャンドルの光が温かく照らす室内に…サイドテーブルやカウンター、至る所に白や紫、グリーンなどのカラーが生けられていた。
私の好きな花……
ずっと、昔から好きな花
覚えていてくれてた…の……
胸がいっぱいで苦しい。
部屋の中央で立ち止まる私に
「ちょっと待ってて。タオル取ってくる。」
湊の手が離れた。
そうだった。濡れた髪に手をやる。すっかり忘れていたが、わたしたちは結構な濡れ鼠だった。
「寒くないか? 悪い。忘れてた。」
そう言いながら、わたしの髪を拭ってくれる。
「大丈夫。ありがと」
そう言って湊を見上げれば、タオルごと湊に引き寄せられてキスされた。 ボッと顔が赤くなったのが自分でもわかった。
ウブな反応をしてしまったことがなんだか恥ずかしくて
「み、みなとも拭いて。」
と、湊の肩に掛かっていたもう一つのタオルを取って湊の顔に押し付けた。
クククッと笑っているのがタオルの下からきこえる。湊は髪をワサワサ拭きながら、
「いっそのこと風呂に入る? 一緒に? 」
と言いだした。
え? ムリ!
目を見開き、頭をブンブン横に振る。
ニヤッと笑った湊は、
「まぁ 楽しみは後に取っとこうか。ね? 」
そう言って、私の手を引きバスルームに行くと、
「とりあえずシャワー浴びて温まっておいで。待ってるから。その後話そう。」
そう言って笑顔の湊は、私の唇にキスを一つ落として脱衣所を出て行った。
え? …っと???? いや待て。どういうこと? いや、おかしくないか? わたし シャワーなんて入っていいの? てか、え? ど、ど、ど、どうしようっ???!!!!!!
私は自分を見下ろす。薄手のワンピースは濡れて体に張り付いて体の線を露わにしている。
確かにこのままでは居られないし、濡れた服も乾かさなきゃいけない。湊だって濡れてるんだからシャワーに入らなきゃいけない訳だし……。
ダラダラ考えてるより入ってしまおう! うん、そうだよね。
もう考えるのが面倒になった私は、酔ってるせいだ、とお酒のせいにして、服を脱いだ。
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