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3章 悪魔裁判
24.反撃
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クリストフが楽しげに宣言した。
その瞬間。
「お止めなさい」
ザワザワとした広場に突如、反響するように涼やかな声が木霊した。間を置かず、広場全体が暗く陰る。
そして、広場の中心にスレイプニルが二頭突っ込んできたのだ。
獣の嘶きと、舞い上がる土煙。
いきなり現れた大型の魔獣に、広場は阿鼻叫喚となる。
そこに、スレイプニルに乗ったランバルドとウルリクが声を張り上げた。
「散れ!これより、第一王妃が来臨なされる。」
鋭い声と共に、広場を覆うほどの影----騎士団とその魔獣が、一斉に広場に向かって降下してくる。
場はさらに混乱を極め、我先にと、見物していた民衆達は慌てて広場から散っていった。
見物人達と入れ替わるように、ランバルドの率いてきた騎士団が神官達を取り囲む。
騎士団員達は、皆、戦闘体勢で甲冑を身に付け、騎獣の上で得物を構え、壇上に向けて、いつでも攻撃可能な体勢をとっていた。
息を飲む程の緊張感の中、一台の真っ白な馬車がするすると広場の中央に向かって進んで行く。
その馬車が戴く紋章を見て、広場に残って様子を伺っていたわずかな貴族たちは、慌てて自分の馬車を降り、その場に叩頭した。
ランバルドはスレイプニルから降り、真っ白の馬車に向かってエスコートの手をさしのべる。
ゆっくりと開いた馬車から、優雅に降りてきたベアトリスは、壇上を見上げにこりと微笑んだ。
そして、ベアトリスは侍従に用意させた踏み台を使用し、自らも壇上に上がる。
先程の混乱で、壇上でエヴァを拘束していた神官達は姿を消していたが、エヴァは極度の緊張から動けず、呆然とその場に座り込んだまま、事の成り行きを見守っていた。
エヴァを見て、優しく笑うベアトリスに、エヴァは曖昧に笑みを返した。
エヴァには、彼女が誰かは分からなかったが、団長がエスコートする相手ということは、少なくとも敵ではないだろう、と考えたからだ。
「初めまして、エディ。私は、ベアトリス。アンナリーナの母ですわ」
「あ、アンナのお母さん………」
口に出してから、はっとすると、エヴァは震える足で立ち上がった。アンナリーナの母に対峙するにしてはあまりにも無礼な姿だからだ。
礼をとろうとしたエヴァに、ベアトリスはゆっくりと首を振る。
そして、視線をエヴァから、自身の周囲を護衛で固めた神殿長に移した。
「クリストフ、これはなんの騒ぎかしら?」
ベアトリスは、特別声を張っているようには見えないのに、不思議と反響してその場にいるもの達に良く聞こえた。
何か魔道具を使っている?エヴァは心の中で首をかしげる。
「お、王妃。この様なところで何を……」
狼狽えたように、クリストフはベアトリスに向かって声をかけた。
「わたくしが質問しているのです。もう一度聞きます。わが娘の婚約者をこんなところで晒し者にして、一体何をしてるのかしら?」
「お聞きください!こやつは悪魔なのです!ですから、我が教会で裁判を……」
ベアトリスは首をかしげる。
「おかしいですね?エディの捜査権は騎士団にあると思っていましたが?ランバルド、いつの間に捜査権を神殿に委任したのです?」
「いいえ、第一王妃。騎士団は捜査権を教会に譲ってはおりません。神殿長は不当にエディを拘束しています」
ランバルドの言葉にベアトリスは、ひとつ頷くと、にいっと真っ赤な唇をつり上げる。
「そう、不当に……クリストフ、あなたは自分が何をしたか、お分かりかしら?」
追求を弛める気のない、ベアトリスにクリストフは口をパクパクさせることしか出来ない。
ベアトリスは畳み掛けるように言った。
「あなたは、我が娘の婚約者を不当に拘束するとこで、我が娘の顔に泥を塗ったのです」
「お、お待ちください!そもそも、そこの悪魔を捕らえるようにと場を用意してくださったのは、王族であるサンドラ様です!私が、アンナリーナ様を貶めるなど滅相もないことです……!」
「そう……サンドラが」
ベアトリスが同意するように頷いたことで、クリストフは身を乗り出すように何度も首を振る。
「あの子は、私怨からアンナリーナの暗殺を企てました。そして、その罪を償うために、つい今朝方修道院に送られましたの。……ということは、あの娘と組んだお前は共に王族の暗殺を企てたと言うことでよろしいかしら?」
「な………!!!!」
話が思わぬ方に飛び火して、クリストフは絶句した。
エヴァも、思わず驚きに目を見開いた。
「滅相も、滅相もございません……!」
「残念です。神殿が王族の暗殺を企てるなどあってはならないことです。……ランバルド」
「はっ」
ベアトリスが視線を移すと、ランバルドは配下を指示して素早くクリストフを拘束した。
「離せ!離せ……!私を誰だと……!!!」
「お話は騎士団で伺いましょう」
連れられていく神殿長を眺めながら、エヴァは展開につて行けず目を白黒させた。
----た、助かった?
戸惑い周囲を見渡したエヴァは、跪いたまま不安そうにこちらを見ているラーシュと目があった。
エヴァは、ラーシュにへらりと笑って見せる。
「お待ちください」
一瞬緊張が緩んだ最中、また別の声があがった。
その瞬間。
「お止めなさい」
ザワザワとした広場に突如、反響するように涼やかな声が木霊した。間を置かず、広場全体が暗く陰る。
そして、広場の中心にスレイプニルが二頭突っ込んできたのだ。
獣の嘶きと、舞い上がる土煙。
いきなり現れた大型の魔獣に、広場は阿鼻叫喚となる。
そこに、スレイプニルに乗ったランバルドとウルリクが声を張り上げた。
「散れ!これより、第一王妃が来臨なされる。」
鋭い声と共に、広場を覆うほどの影----騎士団とその魔獣が、一斉に広場に向かって降下してくる。
場はさらに混乱を極め、我先にと、見物していた民衆達は慌てて広場から散っていった。
見物人達と入れ替わるように、ランバルドの率いてきた騎士団が神官達を取り囲む。
騎士団員達は、皆、戦闘体勢で甲冑を身に付け、騎獣の上で得物を構え、壇上に向けて、いつでも攻撃可能な体勢をとっていた。
息を飲む程の緊張感の中、一台の真っ白な馬車がするすると広場の中央に向かって進んで行く。
その馬車が戴く紋章を見て、広場に残って様子を伺っていたわずかな貴族たちは、慌てて自分の馬車を降り、その場に叩頭した。
ランバルドはスレイプニルから降り、真っ白の馬車に向かってエスコートの手をさしのべる。
ゆっくりと開いた馬車から、優雅に降りてきたベアトリスは、壇上を見上げにこりと微笑んだ。
そして、ベアトリスは侍従に用意させた踏み台を使用し、自らも壇上に上がる。
先程の混乱で、壇上でエヴァを拘束していた神官達は姿を消していたが、エヴァは極度の緊張から動けず、呆然とその場に座り込んだまま、事の成り行きを見守っていた。
エヴァを見て、優しく笑うベアトリスに、エヴァは曖昧に笑みを返した。
エヴァには、彼女が誰かは分からなかったが、団長がエスコートする相手ということは、少なくとも敵ではないだろう、と考えたからだ。
「初めまして、エディ。私は、ベアトリス。アンナリーナの母ですわ」
「あ、アンナのお母さん………」
口に出してから、はっとすると、エヴァは震える足で立ち上がった。アンナリーナの母に対峙するにしてはあまりにも無礼な姿だからだ。
礼をとろうとしたエヴァに、ベアトリスはゆっくりと首を振る。
そして、視線をエヴァから、自身の周囲を護衛で固めた神殿長に移した。
「クリストフ、これはなんの騒ぎかしら?」
ベアトリスは、特別声を張っているようには見えないのに、不思議と反響してその場にいるもの達に良く聞こえた。
何か魔道具を使っている?エヴァは心の中で首をかしげる。
「お、王妃。この様なところで何を……」
狼狽えたように、クリストフはベアトリスに向かって声をかけた。
「わたくしが質問しているのです。もう一度聞きます。わが娘の婚約者をこんなところで晒し者にして、一体何をしてるのかしら?」
「お聞きください!こやつは悪魔なのです!ですから、我が教会で裁判を……」
ベアトリスは首をかしげる。
「おかしいですね?エディの捜査権は騎士団にあると思っていましたが?ランバルド、いつの間に捜査権を神殿に委任したのです?」
「いいえ、第一王妃。騎士団は捜査権を教会に譲ってはおりません。神殿長は不当にエディを拘束しています」
ランバルドの言葉にベアトリスは、ひとつ頷くと、にいっと真っ赤な唇をつり上げる。
「そう、不当に……クリストフ、あなたは自分が何をしたか、お分かりかしら?」
追求を弛める気のない、ベアトリスにクリストフは口をパクパクさせることしか出来ない。
ベアトリスは畳み掛けるように言った。
「あなたは、我が娘の婚約者を不当に拘束するとこで、我が娘の顔に泥を塗ったのです」
「お、お待ちください!そもそも、そこの悪魔を捕らえるようにと場を用意してくださったのは、王族であるサンドラ様です!私が、アンナリーナ様を貶めるなど滅相もないことです……!」
「そう……サンドラが」
ベアトリスが同意するように頷いたことで、クリストフは身を乗り出すように何度も首を振る。
「あの子は、私怨からアンナリーナの暗殺を企てました。そして、その罪を償うために、つい今朝方修道院に送られましたの。……ということは、あの娘と組んだお前は共に王族の暗殺を企てたと言うことでよろしいかしら?」
「な………!!!!」
話が思わぬ方に飛び火して、クリストフは絶句した。
エヴァも、思わず驚きに目を見開いた。
「滅相も、滅相もございません……!」
「残念です。神殿が王族の暗殺を企てるなどあってはならないことです。……ランバルド」
「はっ」
ベアトリスが視線を移すと、ランバルドは配下を指示して素早くクリストフを拘束した。
「離せ!離せ……!私を誰だと……!!!」
「お話は騎士団で伺いましょう」
連れられていく神殿長を眺めながら、エヴァは展開につて行けず目を白黒させた。
----た、助かった?
戸惑い周囲を見渡したエヴァは、跪いたまま不安そうにこちらを見ているラーシュと目があった。
エヴァは、ラーシュにへらりと笑って見せる。
「お待ちください」
一瞬緊張が緩んだ最中、また別の声があがった。
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