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掌編
結末は変わらない
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こういう話をするのは、やっぱり出会いとかなんとかに後ろめたさというか。
何かしら抱えているからだと思うのですが。
例えば、とか。もし、という話はリヒトはよくする。
今日もそう。
例えば――ディートリヒ様が死んでおらず、真っ当に王位を継いで。
そして自分は従弟として、ディートリヒ様を支えるリヒトであったなら、と。
「どちらにせよあなたが一生懸命自分を磨いて、高くあろうとするのは変わらないでしょう?」
根本的なものはきっとかわらないのですから、とわたくしは言う。
そうだが、とリヒトは呻くのは肯定してほしいからなのか、否定してほしいからなのか。
さぁどちらかしら。
「リヒトのその、例えばとかもしの話をするのは、わたくしはあまり好きではないのだけれど」
「ならやめる」
「別にしても良いのよ。ただそう言う時、決まってうじうじしているのだもの」
しっかりしなさいよと頬を撫でればそうか? となんだか情けない顔をする。
今更してもどうしようもない話をするのはあまり面白くないと思っていたのに――そんな顔をみることができるのと面白くなってしまうのだけれど、わたくしは。
「もう……でも、そうね。きっと今よりも自由奔放だと思うわ。というか、それならわたくしとの出会いもないのではなくて?」
「それはない」
「ないかしら?」
「ない。俺は……留学するとでも言って他国に出ただろうし、外交を担うだろう。となればリヒテールにも行く」
夜会に招かれてわたくしに出会う、という所かしら。
それだと、もっと早いうちに出会っていそうな気もするわ。
「それなら、わたくしがまだ少女の内に出会っていたかもしれませんわね」
「幼くても扱いづらい女だったんだろう?」
「ええ、そうよ。でも簡単には出会えないと思うのよね」
というのも。
わたくしが少女のころはまだ上手に周囲をあしらえないこともあったから。
犬達の鉄壁の守りがついてましたし。それを乗り越えて出会うか、というと。どうかしら、とも思う。
だって落ち着きのない犬達の頃だもの。まぁ、あれはわたくしも悪かったかもしれないけれど。
「わたくし、あなたに興味が持てるかしら。そもそも犬達があなたの事を教えてくれないと思うのよね」
「……確かに。それでも、きっとどこかでは出会う」
「そうね」
「見つけると思う。普通に出会って、真っ当に」
「真っ当? それはないわね、絶対ないわ」
きっとわたくしたちの出会いは最悪のはずよとわたくしは笑う。
だって、わたくしのほうが普通にときめいたりなんてこと、ないと思いますもの。
そう言うと、つまり俺はお前を普通にときめかせられないのだなと唸っている。
「拗ねないでよ」
「拗ねてない」
「拗ねてるわ。まぁ、普通に出会ったとしてあげるわ。でも簡単にわたくしはなびかないわ」
まず一番の問題は、あの三人だなとリヒトは言う。そうね、そこを乗り越えてくださらないと。
どうにかして乗り越えて、やっと私の前に立ってもわたくしはなかなかなびかないでしょうし。
きっとわたくしを楽しませてくれるのでしょう。
やだ、なんだかわたくし、悪女のようではなくて?
「けれど、あなたと一緒にあの学園で過ごすのは楽しそうね。色々とやっかみは受けそうですけれど」
「そんなものは問題ではないのだろう?」
「ええ、それも面白さよ」
「俺が、リヒトのままだったら年も、同じくらいだからな」
「あら、そういえばそうね」
「まずリヒテールの王子に根回しから始めそうだ」
もし、友として付き合えたならとリヒトは零す。
ミヒャエルとあなたが友人として学園に、なんて……それはまぁ令嬢方の視線を集める事でしょう。
金の王子、銀の王子というところかしら。
「ふふ、きっと仏頂面なんでしょうね、二人とも」
「仏頂面?」
「令嬢達に騒がれるのは好きではないでしょう?」
「……内心、仏頂面だな。表面的にはにこにこする」
「ええ? そんなのできるわけないわ」
そうやって笑うと、馬鹿にするなと言われ。
もしもの、ありもしなかった幻を話す。
きっとどこかでは出会うでしょうけれど、そうね。それはそれで、楽しかったとも思うわ。
でも、わたくしはこうしてあなたと築いたものが一番だと思っているのよ。
それはちゃんと、わかっていてくれるかしら。
いつものいちゃついてたにしかならなかった。
いやなにか、なにか入れようとしてたんだけどそれを忘れてしまった感が…
思い出したらかきます。
何かしら抱えているからだと思うのですが。
例えば、とか。もし、という話はリヒトはよくする。
今日もそう。
例えば――ディートリヒ様が死んでおらず、真っ当に王位を継いで。
そして自分は従弟として、ディートリヒ様を支えるリヒトであったなら、と。
「どちらにせよあなたが一生懸命自分を磨いて、高くあろうとするのは変わらないでしょう?」
根本的なものはきっとかわらないのですから、とわたくしは言う。
そうだが、とリヒトは呻くのは肯定してほしいからなのか、否定してほしいからなのか。
さぁどちらかしら。
「リヒトのその、例えばとかもしの話をするのは、わたくしはあまり好きではないのだけれど」
「ならやめる」
「別にしても良いのよ。ただそう言う時、決まってうじうじしているのだもの」
しっかりしなさいよと頬を撫でればそうか? となんだか情けない顔をする。
今更してもどうしようもない話をするのはあまり面白くないと思っていたのに――そんな顔をみることができるのと面白くなってしまうのだけれど、わたくしは。
「もう……でも、そうね。きっと今よりも自由奔放だと思うわ。というか、それならわたくしとの出会いもないのではなくて?」
「それはない」
「ないかしら?」
「ない。俺は……留学するとでも言って他国に出ただろうし、外交を担うだろう。となればリヒテールにも行く」
夜会に招かれてわたくしに出会う、という所かしら。
それだと、もっと早いうちに出会っていそうな気もするわ。
「それなら、わたくしがまだ少女の内に出会っていたかもしれませんわね」
「幼くても扱いづらい女だったんだろう?」
「ええ、そうよ。でも簡単には出会えないと思うのよね」
というのも。
わたくしが少女のころはまだ上手に周囲をあしらえないこともあったから。
犬達の鉄壁の守りがついてましたし。それを乗り越えて出会うか、というと。どうかしら、とも思う。
だって落ち着きのない犬達の頃だもの。まぁ、あれはわたくしも悪かったかもしれないけれど。
「わたくし、あなたに興味が持てるかしら。そもそも犬達があなたの事を教えてくれないと思うのよね」
「……確かに。それでも、きっとどこかでは出会う」
「そうね」
「見つけると思う。普通に出会って、真っ当に」
「真っ当? それはないわね、絶対ないわ」
きっとわたくしたちの出会いは最悪のはずよとわたくしは笑う。
だって、わたくしのほうが普通にときめいたりなんてこと、ないと思いますもの。
そう言うと、つまり俺はお前を普通にときめかせられないのだなと唸っている。
「拗ねないでよ」
「拗ねてない」
「拗ねてるわ。まぁ、普通に出会ったとしてあげるわ。でも簡単にわたくしはなびかないわ」
まず一番の問題は、あの三人だなとリヒトは言う。そうね、そこを乗り越えてくださらないと。
どうにかして乗り越えて、やっと私の前に立ってもわたくしはなかなかなびかないでしょうし。
きっとわたくしを楽しませてくれるのでしょう。
やだ、なんだかわたくし、悪女のようではなくて?
「けれど、あなたと一緒にあの学園で過ごすのは楽しそうね。色々とやっかみは受けそうですけれど」
「そんなものは問題ではないのだろう?」
「ええ、それも面白さよ」
「俺が、リヒトのままだったら年も、同じくらいだからな」
「あら、そういえばそうね」
「まずリヒテールの王子に根回しから始めそうだ」
もし、友として付き合えたならとリヒトは零す。
ミヒャエルとあなたが友人として学園に、なんて……それはまぁ令嬢方の視線を集める事でしょう。
金の王子、銀の王子というところかしら。
「ふふ、きっと仏頂面なんでしょうね、二人とも」
「仏頂面?」
「令嬢達に騒がれるのは好きではないでしょう?」
「……内心、仏頂面だな。表面的にはにこにこする」
「ええ? そんなのできるわけないわ」
そうやって笑うと、馬鹿にするなと言われ。
もしもの、ありもしなかった幻を話す。
きっとどこかでは出会うでしょうけれど、そうね。それはそれで、楽しかったとも思うわ。
でも、わたくしはこうしてあなたと築いたものが一番だと思っているのよ。
それはちゃんと、わかっていてくれるかしら。
いつものいちゃついてたにしかならなかった。
いやなにか、なにか入れようとしてたんだけどそれを忘れてしまった感が…
思い出したらかきます。
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