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2:憂鬱の本当の始まり
オウサマの右腕
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俺達を乗せた馬車が止まる。それから降りて、見上げて。
ああなんてすごいと俺は感動した。
この城までたどり着くために、まず岩肌の坂道を登った。それは城塞の面も備えていたんだと思う。
今は平和だけど、昔は戦乱が云々という話は知っているからだ。
岩を、岩場をうまく使って作られた居城は本当に、すばらしいという言葉に尽きる。
岩場の上に作って城は崩れないのか。そういう危険はないのだろうかと思ったんだけど、岩場とうまくハメあっているとでもいうのだろうか。
バランスがすごい。
ほえー! と馬鹿みたいに城を見上げつつ、中にはいるとこれまたすごい。
そのまんまの岩肌ー! という場所もある。ああああ、あの壁の年代いつ? いつからああやって見えてるんだろう。
周囲の装飾はつけたしたんだろうか。柱とか無骨さがにじみ出てるけど良い作り。
城の中をきょろきょろしながら進んで、王様は俺を部屋に案内してくれた。
俺は、でかいトランクひとつに数日分の着替えとかを詰め込んできたくらいだ。あとどーしても持ってきたかった本くらい。もうひとつのトランクは、国の正装なんだけど。一応持っていけって言われたから持ってきたけど。
正直、開けずにこのまま置いておきたい。そう思って、皺になるからついたら出しなさいと言われたのを思い出す。
荷物はそれだけ、と問われたけどこれだけです。必要があれば買うし。
そして、俺が案内されたのは城の二階? 三階?
どっちかよくわからないけど、その日当たりのいい部屋だった。前室、居間、主寝室と風呂とかがあるって感じ。
バルコニーからは城下が見渡せる。来客用の一番良い部屋って感じだ。
「ララトアの部屋はこちらになるよ。ああ、それと……紹介しなきゃいけないやつがいるかな」
「はぁ」
「僕もいつもそばにいれるということはないから」
何かあったらその、今から紹介する相手を頼ってくれと王様は言う。
確かに王様は、王様なんだから多忙だ。俺に構う時間なんてないはず。いやなくていいんだけど。
「本当はもっと、ララトアが好きそうな部屋があるんだけどね。そこは駄目って言われたから」
はは、と王様は笑っている。
のんきなものだなぁと、俺は思うのだ。
自室の探検はあとでするとして、荷物を置いたらこっちと連れ出される。
そして、案内された部屋にはひとりの青年。年は、王様と一緒くらい。
長い茶の髪は首の後ろでひとくくち。深い金色の瞳が少しきつそうな印象を与えるけれど、その視線に敵意はないから安堵する。
「ララトア様、我が王が迷惑をかけております」
「一言目がそれ? まったく……ララトア、僕の右腕だよ。僕がいないときは頼ってほしい」
「ヒースと申します」
「ララトアといいます。お世話になります」
頭を互いに下げ合う。俺のほうが、顔をあげるのが先だった。
そりゃそうか、一応国賓だ。でもこんな風に、ずっと対応されるのも面倒だ。むず痒くて、たまらない。
「あの、かしこまらなくていいんで……人の目があるとこはあれかもしれないですけど、普通でいいです。いつも通りにしてください」
「本当に? じゃあ僕も人のないところではもっとフランクに」
「オウサマは、今でも十分フランクなんでやめてください」
ええーと、けれど楽しんでいるような声色。
我が王が申し訳ありませんとヒースさんはまた頭下げる。この人苦労人ぽい。
「ララトア様。王の言うことのほとんどは話半分に聞くくらいでよいのですが、地下の話だけは本当ですので近寄らぬようにしてください」
「あ、はい」
「地下以外なら多少迷ってもどうにかなりますがあそこは本当に、好奇心で入った者がそのまま出てこれなくというのが何十年に一度出ますので、そうならぬよう」
それは本当に、やばそうだ。王様だけでなくほかの人からも言われるってことは、本当に危ないんだろう。
俺は入りませんと約束する。そもそもわかるとこだけならと王様が約束してくれてるから我慢する。
地下以外でも十分、俺の好奇心は満たされるから。
「なお、夜はしっかり鍵をおかけください。この人、入って来ますからね」
「えっ」
「鍵かけても入れるけどね」
「は?」
オウサマは笑う。笑って、しないよと言う。ほ、本当かー!?
なんだそれ。さすがに不法侵入とかしてきたらどんびく。ちゃんと鍵をかけて寝よう。
それから、ええと……ほかにも色々、気を付けておこう。
「困ったことがあれば何でも言いつけてください」
「はい。あの、改めてよろしくお願いします」
はい、とヒースさんは笑む。
そうだよなぁ、このオウサマ相手にしてるんだからできた人だよなぁ。
そう思ってオウサマを見ると何かなと微笑んでくる。
いや別に何もないかな。
そこでふと、俺は思い出した。ガガ兄から預かった手紙の事を。
「そうだ。ガガトア兄上から手紙を預かっていて……宰相に渡してほしいと」
「それなら私宛です。頂けますか?」
「はい。え、宰相? え?」
「私がそうです」
柔らかに微笑まれた。
宰相わかい。わかい!
うちの国じゃそろそろ引退だよねって宰相なんだけどな。よぼよぼのじーちゃん。
まぁ、うちの宰相は政治をどうこうというよりご意見番に近いんだけど。
ガガ兄から預かった手紙を渡して、俺のお仕事は終わり。
ああなんてすごいと俺は感動した。
この城までたどり着くために、まず岩肌の坂道を登った。それは城塞の面も備えていたんだと思う。
今は平和だけど、昔は戦乱が云々という話は知っているからだ。
岩を、岩場をうまく使って作られた居城は本当に、すばらしいという言葉に尽きる。
岩場の上に作って城は崩れないのか。そういう危険はないのだろうかと思ったんだけど、岩場とうまくハメあっているとでもいうのだろうか。
バランスがすごい。
ほえー! と馬鹿みたいに城を見上げつつ、中にはいるとこれまたすごい。
そのまんまの岩肌ー! という場所もある。ああああ、あの壁の年代いつ? いつからああやって見えてるんだろう。
周囲の装飾はつけたしたんだろうか。柱とか無骨さがにじみ出てるけど良い作り。
城の中をきょろきょろしながら進んで、王様は俺を部屋に案内してくれた。
俺は、でかいトランクひとつに数日分の着替えとかを詰め込んできたくらいだ。あとどーしても持ってきたかった本くらい。もうひとつのトランクは、国の正装なんだけど。一応持っていけって言われたから持ってきたけど。
正直、開けずにこのまま置いておきたい。そう思って、皺になるからついたら出しなさいと言われたのを思い出す。
荷物はそれだけ、と問われたけどこれだけです。必要があれば買うし。
そして、俺が案内されたのは城の二階? 三階?
どっちかよくわからないけど、その日当たりのいい部屋だった。前室、居間、主寝室と風呂とかがあるって感じ。
バルコニーからは城下が見渡せる。来客用の一番良い部屋って感じだ。
「ララトアの部屋はこちらになるよ。ああ、それと……紹介しなきゃいけないやつがいるかな」
「はぁ」
「僕もいつもそばにいれるということはないから」
何かあったらその、今から紹介する相手を頼ってくれと王様は言う。
確かに王様は、王様なんだから多忙だ。俺に構う時間なんてないはず。いやなくていいんだけど。
「本当はもっと、ララトアが好きそうな部屋があるんだけどね。そこは駄目って言われたから」
はは、と王様は笑っている。
のんきなものだなぁと、俺は思うのだ。
自室の探検はあとでするとして、荷物を置いたらこっちと連れ出される。
そして、案内された部屋にはひとりの青年。年は、王様と一緒くらい。
長い茶の髪は首の後ろでひとくくち。深い金色の瞳が少しきつそうな印象を与えるけれど、その視線に敵意はないから安堵する。
「ララトア様、我が王が迷惑をかけております」
「一言目がそれ? まったく……ララトア、僕の右腕だよ。僕がいないときは頼ってほしい」
「ヒースと申します」
「ララトアといいます。お世話になります」
頭を互いに下げ合う。俺のほうが、顔をあげるのが先だった。
そりゃそうか、一応国賓だ。でもこんな風に、ずっと対応されるのも面倒だ。むず痒くて、たまらない。
「あの、かしこまらなくていいんで……人の目があるとこはあれかもしれないですけど、普通でいいです。いつも通りにしてください」
「本当に? じゃあ僕も人のないところではもっとフランクに」
「オウサマは、今でも十分フランクなんでやめてください」
ええーと、けれど楽しんでいるような声色。
我が王が申し訳ありませんとヒースさんはまた頭下げる。この人苦労人ぽい。
「ララトア様。王の言うことのほとんどは話半分に聞くくらいでよいのですが、地下の話だけは本当ですので近寄らぬようにしてください」
「あ、はい」
「地下以外なら多少迷ってもどうにかなりますがあそこは本当に、好奇心で入った者がそのまま出てこれなくというのが何十年に一度出ますので、そうならぬよう」
それは本当に、やばそうだ。王様だけでなくほかの人からも言われるってことは、本当に危ないんだろう。
俺は入りませんと約束する。そもそもわかるとこだけならと王様が約束してくれてるから我慢する。
地下以外でも十分、俺の好奇心は満たされるから。
「なお、夜はしっかり鍵をおかけください。この人、入って来ますからね」
「えっ」
「鍵かけても入れるけどね」
「は?」
オウサマは笑う。笑って、しないよと言う。ほ、本当かー!?
なんだそれ。さすがに不法侵入とかしてきたらどんびく。ちゃんと鍵をかけて寝よう。
それから、ええと……ほかにも色々、気を付けておこう。
「困ったことがあれば何でも言いつけてください」
「はい。あの、改めてよろしくお願いします」
はい、とヒースさんは笑む。
そうだよなぁ、このオウサマ相手にしてるんだからできた人だよなぁ。
そう思ってオウサマを見ると何かなと微笑んでくる。
いや別に何もないかな。
そこでふと、俺は思い出した。ガガ兄から預かった手紙の事を。
「そうだ。ガガトア兄上から手紙を預かっていて……宰相に渡してほしいと」
「それなら私宛です。頂けますか?」
「はい。え、宰相? え?」
「私がそうです」
柔らかに微笑まれた。
宰相わかい。わかい!
うちの国じゃそろそろ引退だよねって宰相なんだけどな。よぼよぼのじーちゃん。
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