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与太話
海といえば
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息子ちゃんはやるときはやる。
はい。
なんだろーなこの、状況。
「魔術士隊は前へ! 足を狙えー!」
今、船の甲板は大騒ぎな、わけで!
「わはははは! すごいな! 100年に一度の引きだぞ!」
「いやどうみても笑い事じゃないですよね!?」
只今、甲板の上では超巨大海の生物――まぁ、ぶっちゃけイカなんだけど。
つまり、その、クラーケン!!
10本足のバケモノと遭遇して戦闘中だ。
豪華客船なので護衛の魔術士、それから騎士も乗ってるんだけど大丈夫か?
なんか、上手にさばけてない。
あんなの一発雷ズドンで終わるんじゃねぇの? と、俺は思うわけで。
でもな、俺は客だし、手ェ出していいものか。
「ああいうのが出てくるのってほとんどなくて、俺も初めてだな……本で読んだりはあるけど」
「任せてて大丈夫なんですか?」
「どうだろうな」
これ大丈夫じゃないやつの気配。
どたばたと戦う様を面白がって見に来てる乗客。俺達もそうなんだけど。
下がってください、部屋にと言われるものの、誰一人そうしない。俺達もだけど。
が、船員は焦ってる感があるわけで。
「イライアス、お前結構、やれるんだろ? 助けてくれば?」
「行って良いんですかね……手、貸してくれって声かかったら行くつもりだったんですけど」
「いいんじゃないか。苦戦してるし……俺も、お前がどの程度やれるのか見てみたい」
明らかに、船の安全どうこうじゃなくて俺に興味があるというような言いっぷり。
ガブ様は、俺の親父殿と母さんならどうするのかなぁと笑っている。
あー。親父殿はともかく母さんは、イカ! あの大きいの食べれるかな!
イカ刺し! イカ天! とかそういうテンションになると思う。俺はあのサイズはちょっと食う気にはならない。
親父殿は母さんが望むならきれーに倒して食べれる状態を残すんだと思う。生で食べるの? 本当に? とか言いながら。火通すなら自分も食べるとかそういう感じだ。生はちょっと……というのはわかる。
ノエルは母様が食べるなら食べるーって感じだろうな。美味しいと瞳輝かせてパクパク食べる。かわいい。おれのいもうとまじえんじぇる!
「それにここでかっこいい所を見せると、この船にいる令嬢にモテると思うけどな」
「!?」
「夜会では散々だったんだろ? まー、ああいう所にいる令嬢はがっついてるから。でも、こういった旅に両親と来てるのは、貴族っつーより金のある商人の家の方が多いだろうし」
な ん だ と 。
夜会のがっつき令嬢はもう勘弁してくれ! とは思う。思うけどやっぱり俺は、出会いが欲しい!
ちらっと周囲を見ると、両親と一緒というような女の子も何人かいる。皆ちょっと不安そうだ。
「お前がやらないなら俺が助けてきてもいいけど」
「え、ガブ様、大丈夫なんですか」
「……まぁ、そこそこ?」
そこそこって言うけど、すごく上手に魔術を紡ぎそうな気もする。
でもここでガブ様でたら大騒ぎじゃないのか。皇族ですよね?
ということでやっぱり俺がということに。
「ちょっとすみません、通してください」
と、人の間を縫って、こっちに来ないでくださいと言っている船員と接触する。
「お客様、危ないのでおさがりください!」
「あの、俺は魔術士なので手伝ってもいいですか」
「え?」
「ま、信じて?」
ためらっている間に横をすり抜ける。止める声も聞こえるけど聞こえないふり。
どの程度の火力でやればいいかな、と思った時、俺の真正面、大きな足が振り下ろされた。
危険があれば全力で相手をのすのよ! という母とほどほどにねという父と。
二人でフルボッコにしたくせに何言ってんだよこの二人と思った小さい頃を思い出した。
別にそれは走馬灯ではなくて、俺の動きの根幹みたいなもの。
咄嗟に紡いだ魔術は雷電の槍。それが無数に襲い掛かる足に突き刺さり空を躍らせる。
「あ、あんまりやったらだめだな、これ」
四本突き刺しただけで足は押した。ゆっくり船に倒れこむように落ちてくる。動かなくなったからだ。本体がその足を制御できなくなったから。
でも、船に落とすわけにはいかないよな、これ!
そう思って、次に紡いだのは氷結の魔術。落ちてくる足の根元凍らせて固定。固定、固定!
びきびきと凍る足はそのまま破壊もできそうだけどそのまま。
と、俺の紡ぐ魔術に先で戦っていた魔術士は驚いている様子。
ま、まぁそれは……予想、してた。
俺にとってこれは普通だけど、他の人にとっては普通じゃないってのはよく知ってる。
よく、知ってる!
「倒していい?」
「お願いします!!」
魔術士達の、それから騎士の指揮をとっていた人と目があって。
おっけーと俺は頷きつつ。
「あ、これって食えるの?」
そう問えば、えっ、食べる? みたいな顔をされた。
食べないんだな。その表情だけで察した!
そんなわけで一撃。
頭から貫くように、氷の柱ぶっさして倒した。倒したやつはぶくぶく沈んでいったわけだけど。
雷撃にしたら海、そんでもって船にまで来る可能性あったからやめたんだけど、それで正解だったと思う。
なぜなら、氷の柱でも、俺はおそらくやりすぎた!
遠巻きに恐る恐る眺められている。そんな、視線!
えええええ!? 氷の柱、でかいの3本くらいだぜ? 許容範囲だろ?
3本でやりすぎとかそんな、そんな……お、抑えたんだけど、な?
これで雷撃なんか落として一発丸焼き撃沈とかしてたらもっと奇異な視線向けられてたと思う。
ちらっと周囲を見ると、女の子はさっとかくれてしまう。
きゃーかっこいい? そんなものなかった。
ガブ様の言葉を信じた俺が、馬鹿でした!!
ええー? この視線ずっとうけながら船旅とか結構きつい予感。
余談。
ガブさんは魔術使えそうな顔してますけどまったく、上手に、使えません!
むしろ、下手。
はい。
なんだろーなこの、状況。
「魔術士隊は前へ! 足を狙えー!」
今、船の甲板は大騒ぎな、わけで!
「わはははは! すごいな! 100年に一度の引きだぞ!」
「いやどうみても笑い事じゃないですよね!?」
只今、甲板の上では超巨大海の生物――まぁ、ぶっちゃけイカなんだけど。
つまり、その、クラーケン!!
10本足のバケモノと遭遇して戦闘中だ。
豪華客船なので護衛の魔術士、それから騎士も乗ってるんだけど大丈夫か?
なんか、上手にさばけてない。
あんなの一発雷ズドンで終わるんじゃねぇの? と、俺は思うわけで。
でもな、俺は客だし、手ェ出していいものか。
「ああいうのが出てくるのってほとんどなくて、俺も初めてだな……本で読んだりはあるけど」
「任せてて大丈夫なんですか?」
「どうだろうな」
これ大丈夫じゃないやつの気配。
どたばたと戦う様を面白がって見に来てる乗客。俺達もそうなんだけど。
下がってください、部屋にと言われるものの、誰一人そうしない。俺達もだけど。
が、船員は焦ってる感があるわけで。
「イライアス、お前結構、やれるんだろ? 助けてくれば?」
「行って良いんですかね……手、貸してくれって声かかったら行くつもりだったんですけど」
「いいんじゃないか。苦戦してるし……俺も、お前がどの程度やれるのか見てみたい」
明らかに、船の安全どうこうじゃなくて俺に興味があるというような言いっぷり。
ガブ様は、俺の親父殿と母さんならどうするのかなぁと笑っている。
あー。親父殿はともかく母さんは、イカ! あの大きいの食べれるかな!
イカ刺し! イカ天! とかそういうテンションになると思う。俺はあのサイズはちょっと食う気にはならない。
親父殿は母さんが望むならきれーに倒して食べれる状態を残すんだと思う。生で食べるの? 本当に? とか言いながら。火通すなら自分も食べるとかそういう感じだ。生はちょっと……というのはわかる。
ノエルは母様が食べるなら食べるーって感じだろうな。美味しいと瞳輝かせてパクパク食べる。かわいい。おれのいもうとまじえんじぇる!
「それにここでかっこいい所を見せると、この船にいる令嬢にモテると思うけどな」
「!?」
「夜会では散々だったんだろ? まー、ああいう所にいる令嬢はがっついてるから。でも、こういった旅に両親と来てるのは、貴族っつーより金のある商人の家の方が多いだろうし」
な ん だ と 。
夜会のがっつき令嬢はもう勘弁してくれ! とは思う。思うけどやっぱり俺は、出会いが欲しい!
ちらっと周囲を見ると、両親と一緒というような女の子も何人かいる。皆ちょっと不安そうだ。
「お前がやらないなら俺が助けてきてもいいけど」
「え、ガブ様、大丈夫なんですか」
「……まぁ、そこそこ?」
そこそこって言うけど、すごく上手に魔術を紡ぎそうな気もする。
でもここでガブ様でたら大騒ぎじゃないのか。皇族ですよね?
ということでやっぱり俺がということに。
「ちょっとすみません、通してください」
と、人の間を縫って、こっちに来ないでくださいと言っている船員と接触する。
「お客様、危ないのでおさがりください!」
「あの、俺は魔術士なので手伝ってもいいですか」
「え?」
「ま、信じて?」
ためらっている間に横をすり抜ける。止める声も聞こえるけど聞こえないふり。
どの程度の火力でやればいいかな、と思った時、俺の真正面、大きな足が振り下ろされた。
危険があれば全力で相手をのすのよ! という母とほどほどにねという父と。
二人でフルボッコにしたくせに何言ってんだよこの二人と思った小さい頃を思い出した。
別にそれは走馬灯ではなくて、俺の動きの根幹みたいなもの。
咄嗟に紡いだ魔術は雷電の槍。それが無数に襲い掛かる足に突き刺さり空を躍らせる。
「あ、あんまりやったらだめだな、これ」
四本突き刺しただけで足は押した。ゆっくり船に倒れこむように落ちてくる。動かなくなったからだ。本体がその足を制御できなくなったから。
でも、船に落とすわけにはいかないよな、これ!
そう思って、次に紡いだのは氷結の魔術。落ちてくる足の根元凍らせて固定。固定、固定!
びきびきと凍る足はそのまま破壊もできそうだけどそのまま。
と、俺の紡ぐ魔術に先で戦っていた魔術士は驚いている様子。
ま、まぁそれは……予想、してた。
俺にとってこれは普通だけど、他の人にとっては普通じゃないってのはよく知ってる。
よく、知ってる!
「倒していい?」
「お願いします!!」
魔術士達の、それから騎士の指揮をとっていた人と目があって。
おっけーと俺は頷きつつ。
「あ、これって食えるの?」
そう問えば、えっ、食べる? みたいな顔をされた。
食べないんだな。その表情だけで察した!
そんなわけで一撃。
頭から貫くように、氷の柱ぶっさして倒した。倒したやつはぶくぶく沈んでいったわけだけど。
雷撃にしたら海、そんでもって船にまで来る可能性あったからやめたんだけど、それで正解だったと思う。
なぜなら、氷の柱でも、俺はおそらくやりすぎた!
遠巻きに恐る恐る眺められている。そんな、視線!
えええええ!? 氷の柱、でかいの3本くらいだぜ? 許容範囲だろ?
3本でやりすぎとかそんな、そんな……お、抑えたんだけど、な?
これで雷撃なんか落として一発丸焼き撃沈とかしてたらもっと奇異な視線向けられてたと思う。
ちらっと周囲を見ると、女の子はさっとかくれてしまう。
きゃーかっこいい? そんなものなかった。
ガブ様の言葉を信じた俺が、馬鹿でした!!
ええー? この視線ずっとうけながら船旅とか結構きつい予感。
余談。
ガブさんは魔術使えそうな顔してますけどまったく、上手に、使えません!
むしろ、下手。
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