241 / 243
与太話
海の旅
しおりを挟む
無事に出航したところから!
「おー! すげー!」
見渡す限りの、海!
出航した港はもうすでに見えなくて、潮風が気持ちいい。
「内陸だったから海みるとテンションあがる……」
出航前からずーっと甲板にいたけど、そろそろ部屋にいくかなーと荷物を持つ。
出航の時は皆見送りの人に手をふったりとか、外にいたけど時間がたつとそれぞれ部屋に戻ったりしてるみたいだ。
豪華客船、ってだけあってでかい。
内装も豪華だ。食堂、というよりレストランか。それからバーみたいなとこと、遊技場もあるらしい。
ま、海の旅の間の社交場ってとこか。
雑魚寝部屋もあるみたいだけど、そこは商人とか、そういう人が多いらしい。
で、もろもろの都合で俺は一等船室に大枚をはたいたわけだが。
うーん、周りの人たち、俺と服装が違うー。めっちゃ貴族で豪華。
身なりが汚い、ってわけじゃないけど着なれたぼろ服というか。旅装のままの俺は浮いてる。
お前なんでここにいるの、って感じだ。
で、部屋の前。渡された鍵を使うと。
「あれ、開いて……」
んん?
扉をそっと開くと、そこには。
「お、甲板から戻ってきたか」
「…………」
俺はぱたんと、扉を閉めた。
いや、えっと。
見間違いじゃない?
一つ息を吐いて扉をあけると。
「なんだよ、早く入って来いよ」
「あっ、ハイ……あの、なんでいるんですか、ガブ様」
手招きされて中に入り、椅子に座りつつ問えばめっちゃいい笑顔。
「えっ?」
「いえ、何故ここに?」
「うん?」
これ聞かない方がいいやつ? そもそもなんで俺が旅に出ることを知っているのか!
知ってないと来ないよな……という胡乱毛な視線を向けているとガブ様は笑って。
こんな豪華客船のチケットを本名でとってるならすぐに報せが入ると言う。報せ? 報せ!?
「お前の親には返しきれない恩があってな。その名前は有名なんだよ。で、礼をした俺の兄貴の耳に入れば色々面倒なことになる。その前に俺のとこに報告が来るようになってるわけだ」
「うん、あんまりよくわからないんですけど」
「簡単に言うと」
「簡単に言うと?」
「ファンテールでの保護者は、俺ってこと!」
「まったく関係ないし本当に意味がわからないんですが」
じとーっとした視線を向けてもガブ様はけらけら笑うだけだ。なんだこのおっさんはー。
「ま、ワノ行くんだろ? 言語違うぜ? それから金は?」
「いってから考えるつもりでした」
「行き当たりばったりだな。それでもやれただろうけど……俺の事は財布だと思って連れていけ」
「財布? そ……それは、つまり」
「あっちで全部おごってやるよ」
任せろというようにどんと胸を叩いてガブ様はにやりと笑う。
まじでかー! やったー! たかってやるー!!
一人旅は一人旅で自由気ままで楽しいもんだけど、おごってくれる人がいるのもまた楽しいと俺は思う。
なんか、ガブ様は親父達の友人、というよりは近所の気のいいおっさん、みたいな感じがする。
皇族といいつつ、その堅苦しさがあんまりないというか。
一緒にいても嫌な感じはないから大丈夫だろう。それに、だ。
「ガブ様は、親父の事とか知ってるんですよね?」
「ああ。留学中は色々と弄……遊んでたから」
今、弄ってとか、そういう事言おうとしてた。
つまり、だ。
いっつもにこにこスパルタァな親父の弱みをもしかしたらご存知で!?
人の弱みを握ることが良い事じゃないとは思う。思うけどさ。ちょっとこう、切り札的な、実はこういう事知ってるんだぜみたいなのがあると心に余裕が生まれる。
と、俺は思っている。
「テオドールの昔の話とか聞きたいのか?」
「聞きたいです!」
あの親父殿を一度でもいいから黙らせてみたいなぁとは思うけど、それできるの母さんだけだし。あと伯父さん伯母さんもできるか。
という感じで。
俺の船旅は始まった!
優雅な船旅になるといいな(ならない)
「おー! すげー!」
見渡す限りの、海!
出航した港はもうすでに見えなくて、潮風が気持ちいい。
「内陸だったから海みるとテンションあがる……」
出航前からずーっと甲板にいたけど、そろそろ部屋にいくかなーと荷物を持つ。
出航の時は皆見送りの人に手をふったりとか、外にいたけど時間がたつとそれぞれ部屋に戻ったりしてるみたいだ。
豪華客船、ってだけあってでかい。
内装も豪華だ。食堂、というよりレストランか。それからバーみたいなとこと、遊技場もあるらしい。
ま、海の旅の間の社交場ってとこか。
雑魚寝部屋もあるみたいだけど、そこは商人とか、そういう人が多いらしい。
で、もろもろの都合で俺は一等船室に大枚をはたいたわけだが。
うーん、周りの人たち、俺と服装が違うー。めっちゃ貴族で豪華。
身なりが汚い、ってわけじゃないけど着なれたぼろ服というか。旅装のままの俺は浮いてる。
お前なんでここにいるの、って感じだ。
で、部屋の前。渡された鍵を使うと。
「あれ、開いて……」
んん?
扉をそっと開くと、そこには。
「お、甲板から戻ってきたか」
「…………」
俺はぱたんと、扉を閉めた。
いや、えっと。
見間違いじゃない?
一つ息を吐いて扉をあけると。
「なんだよ、早く入って来いよ」
「あっ、ハイ……あの、なんでいるんですか、ガブ様」
手招きされて中に入り、椅子に座りつつ問えばめっちゃいい笑顔。
「えっ?」
「いえ、何故ここに?」
「うん?」
これ聞かない方がいいやつ? そもそもなんで俺が旅に出ることを知っているのか!
知ってないと来ないよな……という胡乱毛な視線を向けているとガブ様は笑って。
こんな豪華客船のチケットを本名でとってるならすぐに報せが入ると言う。報せ? 報せ!?
「お前の親には返しきれない恩があってな。その名前は有名なんだよ。で、礼をした俺の兄貴の耳に入れば色々面倒なことになる。その前に俺のとこに報告が来るようになってるわけだ」
「うん、あんまりよくわからないんですけど」
「簡単に言うと」
「簡単に言うと?」
「ファンテールでの保護者は、俺ってこと!」
「まったく関係ないし本当に意味がわからないんですが」
じとーっとした視線を向けてもガブ様はけらけら笑うだけだ。なんだこのおっさんはー。
「ま、ワノ行くんだろ? 言語違うぜ? それから金は?」
「いってから考えるつもりでした」
「行き当たりばったりだな。それでもやれただろうけど……俺の事は財布だと思って連れていけ」
「財布? そ……それは、つまり」
「あっちで全部おごってやるよ」
任せろというようにどんと胸を叩いてガブ様はにやりと笑う。
まじでかー! やったー! たかってやるー!!
一人旅は一人旅で自由気ままで楽しいもんだけど、おごってくれる人がいるのもまた楽しいと俺は思う。
なんか、ガブ様は親父達の友人、というよりは近所の気のいいおっさん、みたいな感じがする。
皇族といいつつ、その堅苦しさがあんまりないというか。
一緒にいても嫌な感じはないから大丈夫だろう。それに、だ。
「ガブ様は、親父の事とか知ってるんですよね?」
「ああ。留学中は色々と弄……遊んでたから」
今、弄ってとか、そういう事言おうとしてた。
つまり、だ。
いっつもにこにこスパルタァな親父の弱みをもしかしたらご存知で!?
人の弱みを握ることが良い事じゃないとは思う。思うけどさ。ちょっとこう、切り札的な、実はこういう事知ってるんだぜみたいなのがあると心に余裕が生まれる。
と、俺は思っている。
「テオドールの昔の話とか聞きたいのか?」
「聞きたいです!」
あの親父殿を一度でもいいから黙らせてみたいなぁとは思うけど、それできるの母さんだけだし。あと伯父さん伯母さんもできるか。
という感じで。
俺の船旅は始まった!
優雅な船旅になるといいな(ならない)
10
お気に入りに追加
3,169
あなたにおすすめの小説
【完結】引きこもり令嬢は迷い込んできた猫達を愛でることにしました
かな
恋愛
乙女ゲームのモブですらない公爵令嬢に転生してしまった主人公は訳あって絶賛引きこもり中!
そんな主人公の生活はとある2匹の猫を保護したことによって一変してしまい……?
可愛い猫達を可愛がっていたら、とんでもないことに巻き込まれてしまった主人公の無自覚無双の幕開けです!
そしていつのまにか溺愛ルートにまで突入していて……!?
イケメンからの溺愛なんて、元引きこもりの私には刺激が強すぎます!!
毎日17時と19時に更新します。
全12話完結+番外編
「小説家になろう」でも掲載しています。
【完結】名前もない悪役令嬢の従姉妹は、愛されエキストラでした
犬野きらり
恋愛
アーシャ・ドミルトンは、引越してきた屋敷の中で、初めて紹介された従姉妹の言動に思わず呟く『悪役令嬢みたい』と。
思い出したこの世界は、最終回まで私自身がアシスタントの1人として仕事をしていた漫画だった。自分自身の名前には全く覚えが無い。でも悪役令嬢の周りの人間は消えていく…はず。日に日に忘れる記憶を暗記して、物語のストーリー通りに進むのかと思いきや何故かちょこちょこと私、運良く!?偶然!?現場に居合わす。
何故、私いるのかしら?従姉妹ってだけなんだけど!悪役令嬢の取り巻きには絶対になりません。出来れば関わりたくはないけど、未来を知っているとついつい手を出して、余計なお喋りもしてしまう。気づけば私の周りは、主要キャラばかりになっているかも。何か変?は、私が変えてしまったストーリーだけど…
当て馬失恋した私ですが気がついたら護衛騎士に溺愛されてました。
ぷり
恋愛
ミルティア=アシュリードは、伯爵家の末娘で14歳の少女。幼い頃、彼女は王都の祭りで迷子になった時、貧民街の少年ジョエルに助けられる。その後、彼は彼女の護衛となり、ミルティアのそばで仕えるようになる。ただし、このジョエルはとても口が悪く、ナマイキな護衛になっていった。
一方、ミルティアはずっと、幼馴染のレイブン=ファルストン、18歳の辺境伯令息に恋をしていた。そして、15歳の誕生日が近づく頃、伯爵である父に願い、婚約をかなえてもらう。
デビュタントの日、レイブンにエスコートしてもらい、ミルティアは人生最高の社交界デビューを迎えるはずだったが、姉とレイブンの関係に気づいてしまう……。
※残酷な描写ありは保険です。
※完結済作品の投稿です。
性悪という理由で婚約破棄された嫌われ者の令嬢~心の綺麗な者しか好かれない精霊と友達になる~
黒塔真実
恋愛
公爵令嬢カリーナは幼い頃から後妻と義妹によって悪者にされ孤独に育ってきた。15歳になり入学した王立学園でも、悪知恵の働く義妹とカリーナの婚約者でありながら義妹に洗脳されている第二王子の働きにより、学園中の嫌われ者になってしまう。しかも再会した初恋の第一王子にまで軽蔑されてしまい、さらに止めの一撃のように第二王子に「性悪」を理由に婚約破棄を宣言されて……!? 恋愛&悪が報いを受ける「ざまぁ」もの!! ※※※主人公は最終的にチート能力に目覚めます※※※アルファポリスオンリー※※※皆様の応援のおかげで第14回恋愛大賞で奨励賞を頂きました。ありがとうございます※※※
すみません、すっきりざまぁ終了したのでいったん完結します→※書籍化予定部分=【本編】を引き下げます。【番外編】追加予定→ルシアン視点追加→最新のディー視点の番外編は書籍化関連のページにて、アンケートに答えると読めます!!
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢
岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか?
「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」
「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」
マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
【完結】転生地味悪役令嬢は婚約者と男好きヒロイン諸共無視しまくる。
なーさ
恋愛
アイドルオタクの地味女子 水上羽月はある日推しが轢かれそうになるのを助けて死んでしまう。そのことを不憫に思った女神が「あなた、可哀想だから転生!」「え?」なんの因果か異世界に転生してしまう!転生したのは地味な公爵令嬢レフカ・エミリーだった。目が覚めると私の周りを大人が囲っていた。婚約者の第一王子も男好きヒロインも無視します!今世はうーん小説にでも生きようかな〜と思ったらあれ?あの人は前世の推しでは!?地味令嬢のエミリーが知らず知らずのうちに戦ったり溺愛されたりするお話。
本当に駄文です。そんなものでも読んでお気に入り登録していただけたら嬉しいです!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる