転生令嬢はやんちゃする

ナギ

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与太話

海の旅

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無事に出航したところから!



「おー! すげー!」
 見渡す限りの、海!
 出航した港はもうすでに見えなくて、潮風が気持ちいい。
「内陸だったから海みるとテンションあがる……」
 出航前からずーっと甲板にいたけど、そろそろ部屋にいくかなーと荷物を持つ。
 出航の時は皆見送りの人に手をふったりとか、外にいたけど時間がたつとそれぞれ部屋に戻ったりしてるみたいだ。
 豪華客船、ってだけあってでかい。
 内装も豪華だ。食堂、というよりレストランか。それからバーみたいなとこと、遊技場もあるらしい。
 ま、海の旅の間の社交場ってとこか。
 雑魚寝部屋もあるみたいだけど、そこは商人とか、そういう人が多いらしい。
 で、もろもろの都合で俺は一等船室に大枚をはたいたわけだが。
 うーん、周りの人たち、俺と服装が違うー。めっちゃ貴族で豪華。
 身なりが汚い、ってわけじゃないけど着なれたぼろ服というか。旅装のままの俺は浮いてる。
 お前なんでここにいるの、って感じだ。
 で、部屋の前。渡された鍵を使うと。
「あれ、開いて……」
 んん?
 扉をそっと開くと、そこには。
「お、甲板から戻ってきたか」
「…………」
 俺はぱたんと、扉を閉めた。
 いや、えっと。
 見間違いじゃない?
 一つ息を吐いて扉をあけると。
「なんだよ、早く入って来いよ」
「あっ、ハイ……あの、なんでいるんですか、ガブ様」
 手招きされて中に入り、椅子に座りつつ問えばめっちゃいい笑顔。
「えっ?」
「いえ、何故ここに?」
「うん?」
 これ聞かない方がいいやつ? そもそもなんで俺が旅に出ることを知っているのか!
 知ってないと来ないよな……という胡乱毛な視線を向けているとガブ様は笑って。
 こんな豪華客船のチケットを本名でとってるならすぐに報せが入ると言う。報せ? 報せ!?
「お前の親には返しきれない恩があってな。その名前は有名なんだよ。で、礼をした俺の兄貴の耳に入れば色々面倒なことになる。その前に俺のとこに報告が来るようになってるわけだ」
「うん、あんまりよくわからないんですけど」
「簡単に言うと」
「簡単に言うと?」
「ファンテールでの保護者は、俺ってこと!」
「まったく関係ないし本当に意味がわからないんですが」
 じとーっとした視線を向けてもガブ様はけらけら笑うだけだ。なんだこのおっさんはー。
「ま、ワノ行くんだろ? 言語違うぜ? それから金は?」
「いってから考えるつもりでした」
「行き当たりばったりだな。それでもやれただろうけど……俺の事は財布だと思って連れていけ」
「財布? そ……それは、つまり」
「あっちで全部おごってやるよ」
 任せろというようにどんと胸を叩いてガブ様はにやりと笑う。
 まじでかー! やったー! たかってやるー!!
 一人旅は一人旅で自由気ままで楽しいもんだけど、おごってくれる人がいるのもまた楽しいと俺は思う。
 なんか、ガブ様は親父達の友人、というよりは近所の気のいいおっさん、みたいな感じがする。
 皇族といいつつ、その堅苦しさがあんまりないというか。
 一緒にいても嫌な感じはないから大丈夫だろう。それに、だ。
「ガブ様は、親父の事とか知ってるんですよね?」
「ああ。留学中は色々と弄……遊んでたから」
 今、弄ってとか、そういう事言おうとしてた。
 つまり、だ。
 いっつもにこにこスパルタァな親父の弱みをもしかしたらご存知で!?
 人の弱みを握ることが良い事じゃないとは思う。思うけどさ。ちょっとこう、切り札的な、実はこういう事知ってるんだぜみたいなのがあると心に余裕が生まれる。
 と、俺は思っている。
「テオドールの昔の話とか聞きたいのか?」
「聞きたいです!」
 あの親父殿を一度でもいいから黙らせてみたいなぁとは思うけど、それできるの母さんだけだし。あと伯父さん伯母さんもできるか。
 という感じで。
 俺の船旅は始まった!




優雅な船旅になるといいな(ならない)
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