転生令嬢はやんちゃする

ナギ

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与太話

妹の爆弾

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息子ちゃんと娘ちゃんのお話
息子ちゃんが一年猶予を貰ったあとのこと



「久しぶりの王都だなー」
 旅装を纏い、領地から王都へ。
 移動手段は徒歩か馬か馬車かってとこなんだけど、俺は商隊なんかに混ぜてもらってここまできた。
 身元が怪しい、って見られたけど家の紋章を出せばどうぞどうぞ、というか。
 親父殿が色々と手を伸ばしてる商業関連の人らには話が回ってたらしくて問題なく受け入れて貰えた。
 なんていうか、親の世話になりっぱだなぁとも思うんだけど、その人らにすれば俺は後継ぎだし。
 そう思えば、まざって色々と見ていくのも良いもんかと思った。
 久しぶりの王都について、まず行くのはじいちゃんばあちゃんとこ。
 妹のノエルは寮だからなー。てか、そこいくとシエラもいるし。いやそもそも、フラウに挨拶せずにいくとまた何か言われそうだから、伯父さんちにも挨拶いくべきかー。
 なんて、つらつら思いつつ歩いてればついてしまう。
 今日つく、とは言ってないけど領地でる少し前に手紙書いたし俺が来ることはわかってるはず。
 そんなわけで気にせず、館に足を踏み入れた。
 ノックして、馴染みの執事が顔をみせ表情緩ませる。
 それから風呂入って、ちょっと腹に物いれて、身を整えてじいちゃんばあちゃんのとこに。
 二人にこれから旅に出ることを話して、しばらく会えないことを告げて。
 二日三日の滞在をお願いする。もっといても良いのにって言われるけど、世界のいろんなところ見てきたいし。
 で、二人はノエルに連絡をいれてくれたらしく、ノエルもいそいそと帰ってきた。
「お兄様!」
「の、のえるー!!」
 たたっと走ってきてじゃんぷ。それを俺は受け止める。
 あああああああ妹くそかわいいいいいいいいい!!!!!!!
 ノエルは、年の割にちっちゃい。ちっちゃくて、かわいい。
 俺は親父に似てるんだけど、ノエルは母さんに似てる。でも瞳の色は、親父のものだ。
 あー、学校でももててるんだろうなぁと思うと、とりあえず付き合いたい奴は俺を倒してからいけ、みたいな気持ちになる。
「お久しぶりですね! 私、皆にお兄様がきてること話してきちゃった!」
「え?」
「だってお兄様、まだお一人ですし! お父様もお母様も早くお相手をって言ってたし!」
 やばい、何かもうすでに手を回されていた。
 俺は背中に冷や汗かきつつ、ノエルにこれからの事を話す。
 一年、旅に出る事。お土産かってくるからと言うと、うぅんと唸って。
「じゃあ行く前に、私のお友達とお茶をしてから行ってくださいね! 明日お呼びしますから!」
「え?」
「だってお兄様、私にお友達を一度も紹介させてくれてないじゃない! 皆に自慢したいのに!」
 これは、断りきれない。俺がわかったと頷くと、ではとノエルは瞳輝かせた。
「ちゃんと着飾ってくださいね!」
「えっ、あ、うん」
「おばあ様にお願いしておきますから!」
「お、おう……」
 きらきらと輝くひとみで。え、なんだろうこれちょっと嫌な予感もする、と思いつつ。
 かわいいノエルからのお願いだからー!
 ふふーとご機嫌のノエルに苦笑しつつ、今日は泊まるっていうから夕食も一緒に食べて同じ時間過ごして。
 領地にずっといた俺は、王都の学校にも通ってないから心許せる友達、みたいなのはいない。
 というより、貴族の同年代男女比率が、3:7くらいで。ハーレムじゃないかよ! っていそいそと学校いくっつーほどに俺は世間知らずじゃなかったし。
 そんなわけで、学校いってないんだよなー。勉強なら領地の学校で十分だったし。
 貴族は俺だけだったけど、気の合うやつらばっかりだったからすげー楽しかった。
 男子校みたいで変な事になりそうなこともあったけど、まぁそれは……記憶の彼方にな。
 とにかく。
 領地で事足りてた俺は王都に来るのも年に一度か二度かくらいで社交界もあんまりでない。社交シーズンは最低限、顔だすけど、率先してそういうとこいくより、母さんと親父のツテで王宮の魔導研究のあれそれのほうに遊びにいってたから。
 そもそも、この年齢で結婚相手決めるっつーのが、なんかな。なんかな……転生してきた俺にとっては無理ってなる。
 そりゃ、好きな子いないってのもあるとは思うけど。あっ、これもしかして出会いがないってやつ?
 そう思うと、ノエルの友達を紹介するっていうのは。いやしかしでもまてよ妹の友人だぜ?
 とりあえず良いお兄ちゃんあることは必須だし。そもそも、だ。
 ノエル13歳だし。
 俺18歳で、妹の友達ってことは13歳くらいだろ。
 いやいや……手ェ出したら駄目な感じだろって思う。
 で、次の日に学校に行くノエルを見送って、俺はばあちゃんに捕まった。
 え、なんで、どうしてと思ってるとノエルに頼まれたからとにっこり微笑んで。
 は? え? とうろたえる俺はあれよあれよという間にばあちゃんに好きにされた。
 長かった髪は、ぶっちゃけ最低限整えてた系だったから綺麗に整えられ。
 さすがにじいちゃんばあちゃんちだからと思って、しまっておいてもらった服を着てたけどそれは流行遅れとなんか高そうな店に連れていかれ、色々誂えられ。
 本当はオーダーメイドすべきなんだけどすぐに出ていくし仕方ないとばあちゃんは唸っていた。
 そして俺を見て、お嫁さんを見つけるのよ! と息巻いている。
 やばい、本気だ。目が笑ってない。
 親父たちより、ばあちゃんのほうが俺の嫁とりについて盛り上がっているのを、察した!
 ばあちゃんには、俺はまだそういう気は、っていう感じの話は通じない気がする。
 馬車の中でどんな子がいいの、とか尋ねられまくって、これは俺がいない一年の間に、探す気なんだなと思った。
 そんなこんなでちょっとお疲れな感じで戻ると、ノエルも帰ってきた所みたいだ。
 馬車から降りている姿に、ばあちゃんはお待ちなさいと俺を馬車の中に置いて出ていく。
 どうやら俺の登場タイミングは指定されるようだ。
 で、ノエルと友達、ばあちゃんたちも家に入って、しばらくすると侍従がきて苦笑しながらどうぞと言う。
 俺の心中は察しているような感じだ。
 それからしばらく待っていると、ノエルが姿を現してわぁと声をあげる。
「お兄様かっこいい! 素敵!! そうやっていつもちゃんとしてればいいのに」
「うーん、領地じゃ皆と山の中うろついたり、こういう格好してないからなー」
「元はいいのに……社交シーズンの時だって!」
「あはは、まぁまぁ。それくらいで……友達に紹介するんだろ?」
「そうだった!」
 ノエルは俺の手を引いて友人らがまつ所へ。
 小さい手だなぁ、かわいいかわいい!
 そんなかわいい妹のために立派なお兄ちゃんしなきゃな!
 そう思って、素敵でカッコイイお兄ちゃんをした。
 ノエルの友達は三人いて。
 はきはきとよくしゃべる子、ちょっとおとなしそうな子と、うん。
 男装っ子、だと……?
 お前またすごい子を友人に持っているんだな、と思う。
 けど、相手を13と侮ってはいけなかった!
 どの子もちゃんと目を見て話せるし、しっかりしてる。話の広げ方もうまい。
 いやー、しっかり教育受けてる令嬢ってすごい。ノエルのほうが自由奔放な気もする。
 と、まぁそれなりに楽しく過ごして、三人からお兄様と呼ばれるようになって、帰るのを見送った。
「…………お兄様!」
「何? 何かだめだった? かっこよくなかった?」
「だ、駄目じゃなかったしかっこよかったけど! でも! でも!」
 ううーと唸りながらノエルが抱き着いてくる。
 どうしたーと笑いながらそれを受け止めると、お兄様は私のお兄様なの! と唸っている。
 これはあれか、たとえ社交辞令でも他の子を褒めたり楽しそうにするのは、という、嫉妬か!
「俺はノエルだけのお兄ちゃんだ、大丈夫」
「ううー、でも……旅にでちゃうんでしょ?」
「うん」
 そう、ゴマダレとポン酢を探しに。
 それは話しても変な顔されるだけなのわかってるから言わないけどな。
 俺は妹が大好きなのだが、妹も俺を好きでいてくれる。それはとてもうれしい事だと思う。
「……やっぱり、おかしいわ」
「え?」
「だってお兄様、こんなに素敵でかっこいいのに! なんで婚約者いないの!? お兄様はやく身を固めてよー!」
「え、な、なんで? なんでそういうこと言うんだ?」
「お兄様がちゃんと家を継がないと私が安心してお嫁にいけないじゃない!」
「は?」
「お兄様が家を継ぐならお嫁さんみつけて、ちゃんと大丈夫っていうの見たいの! そうじゃないと、私、私安心してヒューイ君のところにいけないー!」
「え? 何? ヒューイ? ちょ、だ、だれだ、それは」
「えっ、恋人」
「!!??」
 お、おにいさまは初耳なんですけど!!??
 え、なに、え?
 俺の? かわいい妹に? 恋人がいて?
 嫁? 13歳なのに、嫁? は? 嫁に行く? は??
「ヒューイ君のおうち、良い所でお金もあるから色んな子に狙われてるの!」
「ごめんおにいちゃんちょっとよくりかいできない」
 棒読みになるほどに、俺の頭は真っ白。
 え、ちょ。
 ヒューイって誰だよ俺の前にでてこい!!





力関係は娘ちゃん>息子ちゃんだと思う。
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