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最終章
遠くないうちに
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パーティーを抜け出していつものように、お城の上。
ちょっと肌寒いかも、と思っているとテオがもっと近くにと私を引き寄せる。
最初にここに来たときは、身長は差はあったけどここまで差はなかったと思う。
体格が違う。
テオはもうしっかりとした大人の男性だし、私は。
私は……あれっ、あんまり、かわってなっ……む、胸、かわってない……えっ、なんでこんな時にそんな現実突きつけられるの?
「くっ、世界は私に厳しい……!」
「何言ってるの」
「いや、うん、ちょっとこう……うん」
テオはいつものか、というように笑う。いつものって何よと思うけど、思い当たる節はいろいろある。
本当にいろいろ。
「これでお兄様、本当に家を出ちゃうわね」
「そうだね。寂しい?」
「寂しいのはちょっと違うかな……でもいなくなってすっきりー! っていう感じでもない、かな」
まぁ、どうせちょこちょこ遊びに来るだろうし、私も遊びに行くだろうし。
「俺達の時はどうする?」
「え?」
「いや、まだ先だけど……どんな結婚式、したいのかなぁって」
「き、気が早ーい!」
「えー? 案外すぐだと思うけどな……」
かーっと顔が赤くなる感覚。
今日、お兄様達の結婚式みていいなぁ、素敵とは思った。思ってた!
でもそれがすぐ、自分がどうこうって思えないのにつっこんでくるテオ。
これいつものわかっててやってるってやつよね。
「わ、私たちはジゼルちゃんたちの後! それに結婚式続けて、なんてお金かかるじゃない?」
「ああ、お金は別に心配しなくても」
「あっ、そうだったわね。テオ、お金持ちだったわ!」
テオはファンテール留学中に、私が置いていった食べ物とか送ったあの転移のを、もっと簡素化して簡単に。多少魔力が扱えれば誰でも使えるようにした。
そして一回の物量も多くして荷運びを簡単にしたの作って、特許みたいなの貰って。
けど、それが簡単に出回ると物流混乱しちゃうから。それを使うのは国の物流のみらしい。
それもお急ぎのみ。遠方に生ものおくりたーい! っていうときとか、使うらしい。
お値段も高くないから、街の人は結構使ってるみたい。それも、そのうちいろんな国に出回るだろうって。
つまり、使われるとお金が入ってくるという……なんという。私がぺってしたのを整えてくれたって感じだけど。
テオ曰く、場所固定しちゃえばお決まりルーチンでそんなに問題ないよ、らしいけど。
えー、そんなに簡単に行かないでしょー。なんでー、どうしてーというのが私の気持ち。
最終的に私たちは、人が誰でも転移できるようなものを作りたい。
というか誰でも使えるようになるまで行かなくても最低限、領地の家と王都の家とは繋ぎたい。
馬車の旅、お尻痛い、やだ。
「あ」
と、テオが突然声零して。
「レティ、俺は大事なことを忘れてた」
「え、何」
「好きだって言ってるけど、まだその先を言った事がないし、言われたことがない」
「うっ」
「……何その声」
「え、だ、だって、その」
今更ー! 恥ずかしいじゃないー!
めちゃくちゃ、恥ずかしいじゃないー!!
「レティ」
向けられる笑みは私だけのもの。
けど面と向かって紡ぐのは、紡がれるのはお互いに恥ずかしかった。
テオはそっと私の耳元で愛してると囁く。
ふんぎゃあ。
私はもうそれでいっぱいいっぱいで、あうあうと変な声しか出ない。
「俺と結婚してくれますか」
「う、うん。する、したい」
「ありがと。で?」
「え?」
「レティは、言ってくれないの?」
あっ。
こ、これ言うまで許してもらえないやつだ。
にこにこと笑って、テオは待っている。
私が同じように紡ぐのを。伝えるのを。
私の視線は右左と忙しく動いて、でも逃げられないのはわかってる。
わかってるの。
でもまだ、そう。
あいしてると言うのは気恥ずかしくてたまらなくて。
「世界で」
「世界で?」
「い、いちばん」
「一番?」
「………あ」
「あ?」
「…………い、いじわるするみたいに重ねないでよ!」
「えー? 意地悪してないよ?」
「してる!」
で、結局。
私は言えなくて。
でも最後にはちゃんと、特別なんだって伝えた。
世界で一番大好きって。
これからも一緒にいてねって。
ちょっと肌寒いかも、と思っているとテオがもっと近くにと私を引き寄せる。
最初にここに来たときは、身長は差はあったけどここまで差はなかったと思う。
体格が違う。
テオはもうしっかりとした大人の男性だし、私は。
私は……あれっ、あんまり、かわってなっ……む、胸、かわってない……えっ、なんでこんな時にそんな現実突きつけられるの?
「くっ、世界は私に厳しい……!」
「何言ってるの」
「いや、うん、ちょっとこう……うん」
テオはいつものか、というように笑う。いつものって何よと思うけど、思い当たる節はいろいろある。
本当にいろいろ。
「これでお兄様、本当に家を出ちゃうわね」
「そうだね。寂しい?」
「寂しいのはちょっと違うかな……でもいなくなってすっきりー! っていう感じでもない、かな」
まぁ、どうせちょこちょこ遊びに来るだろうし、私も遊びに行くだろうし。
「俺達の時はどうする?」
「え?」
「いや、まだ先だけど……どんな結婚式、したいのかなぁって」
「き、気が早ーい!」
「えー? 案外すぐだと思うけどな……」
かーっと顔が赤くなる感覚。
今日、お兄様達の結婚式みていいなぁ、素敵とは思った。思ってた!
でもそれがすぐ、自分がどうこうって思えないのにつっこんでくるテオ。
これいつものわかっててやってるってやつよね。
「わ、私たちはジゼルちゃんたちの後! それに結婚式続けて、なんてお金かかるじゃない?」
「ああ、お金は別に心配しなくても」
「あっ、そうだったわね。テオ、お金持ちだったわ!」
テオはファンテール留学中に、私が置いていった食べ物とか送ったあの転移のを、もっと簡素化して簡単に。多少魔力が扱えれば誰でも使えるようにした。
そして一回の物量も多くして荷運びを簡単にしたの作って、特許みたいなの貰って。
けど、それが簡単に出回ると物流混乱しちゃうから。それを使うのは国の物流のみらしい。
それもお急ぎのみ。遠方に生ものおくりたーい! っていうときとか、使うらしい。
お値段も高くないから、街の人は結構使ってるみたい。それも、そのうちいろんな国に出回るだろうって。
つまり、使われるとお金が入ってくるという……なんという。私がぺってしたのを整えてくれたって感じだけど。
テオ曰く、場所固定しちゃえばお決まりルーチンでそんなに問題ないよ、らしいけど。
えー、そんなに簡単に行かないでしょー。なんでー、どうしてーというのが私の気持ち。
最終的に私たちは、人が誰でも転移できるようなものを作りたい。
というか誰でも使えるようになるまで行かなくても最低限、領地の家と王都の家とは繋ぎたい。
馬車の旅、お尻痛い、やだ。
「あ」
と、テオが突然声零して。
「レティ、俺は大事なことを忘れてた」
「え、何」
「好きだって言ってるけど、まだその先を言った事がないし、言われたことがない」
「うっ」
「……何その声」
「え、だ、だって、その」
今更ー! 恥ずかしいじゃないー!
めちゃくちゃ、恥ずかしいじゃないー!!
「レティ」
向けられる笑みは私だけのもの。
けど面と向かって紡ぐのは、紡がれるのはお互いに恥ずかしかった。
テオはそっと私の耳元で愛してると囁く。
ふんぎゃあ。
私はもうそれでいっぱいいっぱいで、あうあうと変な声しか出ない。
「俺と結婚してくれますか」
「う、うん。する、したい」
「ありがと。で?」
「え?」
「レティは、言ってくれないの?」
あっ。
こ、これ言うまで許してもらえないやつだ。
にこにこと笑って、テオは待っている。
私が同じように紡ぐのを。伝えるのを。
私の視線は右左と忙しく動いて、でも逃げられないのはわかってる。
わかってるの。
でもまだ、そう。
あいしてると言うのは気恥ずかしくてたまらなくて。
「世界で」
「世界で?」
「い、いちばん」
「一番?」
「………あ」
「あ?」
「…………い、いじわるするみたいに重ねないでよ!」
「えー? 意地悪してないよ?」
「してる!」
で、結局。
私は言えなくて。
でも最後にはちゃんと、特別なんだって伝えた。
世界で一番大好きって。
これからも一緒にいてねって。
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