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第五章
ジゼルちゃんからのお小言
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勝手をした分はあれそれ償わないといけないという事で。
お兄様はお父様にずーっとついて回ることをしばらく義務付けられたとか。
しばらくデジレ様の所にいくのも禁止らしいけど。お兄様は余裕で夜、抜け出してますよお父様。
告げ口しないけど!
そんな黙っててあげてる兄想いの私はというと、お母様と楽しいマナーのお勉強です。
楽しいマナー教室です。
嘘です、全然楽しくありません。
というか! 今更! って本当に思ったんだけど、お辞儀の角度とかミリ単位で言われて。
ええええ、ここまで誰もしませんよね!? っていう!!
顎の角度、とか指先は、とか。そこまで見られるとは思ってなかった。
そしてどうにかこうにか、お母様から及第点を頂くことができたので、ジゼルちゃんとの面会が許された。
及第点を貰うまで? 一週間かかりました……ほんと、お母様スパルタ、ウッ。
という涙の一週間の話はまた別として。
ジ、ジゼルちゃんー!!
我が家に遊びに来てくれたジゼルちゃんは、私をみるなりまずぎゅっと抱きしめてくれた。
私も久しぶりのジゼルちゃんー! と抱き締めかえす。あっ、お胸の感触久しぶり!
「もう、レティ! 心配したのよ!」
「無事に帰ってきました! あ、お土産あるのよ」
「レティ……いえ、あなたから手紙が来て無事なことに喜んで開いたら……あなたのお父様宛のもので、絶句しましたのよ」
「私もそれを帰ってきてから知って、世界が終わったと、思ったのよ……」
ちなみに。
手紙を間違えたのはお兄様のせいだ。お兄様が私がよそ見してる間に手紙をみて、置き場所をすっと逆にした。ような、記憶があるとか言ったので。
ちょ、え、お兄様のせいか! と思ったけど私も確認しなかったし。でも九割方お兄様が悪い。
「何にせよ、無事で良かったわ。本当に……心配したんだから」
「え、ちょっ、ジゼルちゃん!?」
「ごめんなさい、安心したら……涙が」
ぼろっと零れ落ちた大粒。ジゼルちゃんは本当に私を心配してくれてた。
ごめんね、それからありがとう。そんな気持ちでいっぱい。
ジゼルちゃんが泣き止んで、それから私は何があったのかを話した。ガブさんをお助けして式典までは、色んな話が出回ってるらしい。
何が正しいか、とか色々尾ひれもついているらしく。
「殿下とデジレ様に呼ばれて、お話は聞きましたが……レティ、色々とごまかし切れないことをしてしまったようですよ」
「え?」
「まず今の自分の立場をわかってます?」
立場? なにそれ、と私は首を傾げる。
するとジゼルちゃんはばしばしと瞬いて、わかってないのねと冷えるような声を落とした。
そしていいですか、と私を座らせ、そして自分は対面に座り。目の前にあるテーブルをぺしぺしと叩いた。
「まず、レティとトリスタン様が行った転移。これが大問題です」
「あっ、はい」
「膨大な魔力は必要になりますが、仕込みがあればここからファンテールまでいけるのです。その魔術的価値、商業的価値はわかってますか?」
「えーっと、なんとなく。便利になるなぁ、くらいで」
「もう! 確かに便利に、というのはあります。けれどそれを、補助があったとしても行えるものは少ない……というより、あなたとトリスタン様だけなのです」
「そうなの?」
「ええ。再びできるかどうかは……できます? できません?」
できると思うけど、と私の声は小さくなる。だってジゼルちゃんの勢い怖いー!
私の答えに、それは絶対に誰にも言ってはいけませんよと言って話続ける。
「いいですか。トリスタン様はわかっておられるようですが、レティはまったくわかって無いようなので私のいう事をちゃんと聞いて理解してくださいね」
「はい」
「あなた達にはファンテール王族を助けたという名誉という価値。それから、長距離転移という魔術的な可能性の価値、それを実現する魔力量という価値があるのです。他にもありますが特にこの三つは重いのです。あちらでの治癒は奇跡、ということで……それを行おうと思うものはそんなにいませんがゼロではありません。貴方の魔術知識、魔力などを欲しいと、よこしまなことを考える貴族はいるんですよ」
「あ……」
「今、こうして御家で謹慎のようなことになっているのも、そういった事から守る為です。トリスタン様は、すでにデジレ様とのことが決まっていることを皆様ご存じですから手は出せません」
すると、手が出せるのはとジゼルちゃんは私を見る。
「手が出しやすいのは、私ってこと?」
「ええ、そうです。勝手に街にふらーっと一人で遊びに行って捕まって。そのまま既成事実でなんてことにならないように守られているの、わかりました?」
「……とってもよく、わかりました」
ジゼルちゃんに言われて、気付くことがたくさんある。
私はここに帰ってきたら今まで通りだと思ってた。思ってたけど、実際はそうじゃない。
それにまったく気付いてなくて、お母様のマナーやだーとか思ってそろそろ抜け出そうかなと。実はちょっと思ってた!
でも、うん。これ聞くとそれはできなくなってしまった。
「夜会でも、公爵夫妻はお嬢様はと問いかけられるばかりですよ。それから縁談もたくさん送られているはずです。茶会の誘いやレティに会いたいというのもあると思いますが」
「えっ、それはまったく知らないかも!」
「……ということは、公爵様がすべてお断りしているのだと思います。だって、レティは私への手紙にテオ君との事書いてたでしょう?」
「書いたわね……」
つまりはその気持ちを、お父様が組んでくれているってことだと思う。
お、お父様ー! ありがとう、お父様ー!
「何にせよ、少し落ち着くまではレティは学園にも来ない方が良いでしょうし、街を一人で歩いたりしない。変な誘いには乗らない、いいです?」
「はい!」
それ、お返事だけにしないでくださいねとジゼルちゃんは言う。
う、うん。気を付ける。ジゼルちゃん本当に私をよくわかってるぅ。
こくこくと頷く私をみて、ジゼルちゃんはふわりと表情緩めた。
「それじゃあ、お話聞かせてくださいな。テオ君と何か進展ありました?」
「えっ、そこ!?」
「これ以外に何を聞くというのか……式典の後のお話をしてくださいな」
ジゼルちゃんはわくわくといった風で。
私はファンテールの民族衣装着せてもらったとか、テオの友達に会った事とか。
それから海辺の街で一緒に過ごしたり、プレゼント貰った事を話した。
どんなのを、と問われたので見せてあげたらテオ君なかなかやりますねとジゼルちゃんは零す。
ベルはこういうの、気が利かないのよね。あとセンスがいまいちと。
ベ、ベルー! がんばってベルー!
で、私はジゼルちゃんにお土産を渡した。パールの髪飾り!
ジゼルちゃんは好きなデザイン、ありがとうと笑って受け取ってくれた。
久しぶりに会ってお話して、それはとっても楽しい時間で。
ジゼルちゃんはそのまま我が家にお泊りして、夜も遅くまで二人で話をした。
お兄様はお父様にずーっとついて回ることをしばらく義務付けられたとか。
しばらくデジレ様の所にいくのも禁止らしいけど。お兄様は余裕で夜、抜け出してますよお父様。
告げ口しないけど!
そんな黙っててあげてる兄想いの私はというと、お母様と楽しいマナーのお勉強です。
楽しいマナー教室です。
嘘です、全然楽しくありません。
というか! 今更! って本当に思ったんだけど、お辞儀の角度とかミリ単位で言われて。
ええええ、ここまで誰もしませんよね!? っていう!!
顎の角度、とか指先は、とか。そこまで見られるとは思ってなかった。
そしてどうにかこうにか、お母様から及第点を頂くことができたので、ジゼルちゃんとの面会が許された。
及第点を貰うまで? 一週間かかりました……ほんと、お母様スパルタ、ウッ。
という涙の一週間の話はまた別として。
ジ、ジゼルちゃんー!!
我が家に遊びに来てくれたジゼルちゃんは、私をみるなりまずぎゅっと抱きしめてくれた。
私も久しぶりのジゼルちゃんー! と抱き締めかえす。あっ、お胸の感触久しぶり!
「もう、レティ! 心配したのよ!」
「無事に帰ってきました! あ、お土産あるのよ」
「レティ……いえ、あなたから手紙が来て無事なことに喜んで開いたら……あなたのお父様宛のもので、絶句しましたのよ」
「私もそれを帰ってきてから知って、世界が終わったと、思ったのよ……」
ちなみに。
手紙を間違えたのはお兄様のせいだ。お兄様が私がよそ見してる間に手紙をみて、置き場所をすっと逆にした。ような、記憶があるとか言ったので。
ちょ、え、お兄様のせいか! と思ったけど私も確認しなかったし。でも九割方お兄様が悪い。
「何にせよ、無事で良かったわ。本当に……心配したんだから」
「え、ちょっ、ジゼルちゃん!?」
「ごめんなさい、安心したら……涙が」
ぼろっと零れ落ちた大粒。ジゼルちゃんは本当に私を心配してくれてた。
ごめんね、それからありがとう。そんな気持ちでいっぱい。
ジゼルちゃんが泣き止んで、それから私は何があったのかを話した。ガブさんをお助けして式典までは、色んな話が出回ってるらしい。
何が正しいか、とか色々尾ひれもついているらしく。
「殿下とデジレ様に呼ばれて、お話は聞きましたが……レティ、色々とごまかし切れないことをしてしまったようですよ」
「え?」
「まず今の自分の立場をわかってます?」
立場? なにそれ、と私は首を傾げる。
するとジゼルちゃんはばしばしと瞬いて、わかってないのねと冷えるような声を落とした。
そしていいですか、と私を座らせ、そして自分は対面に座り。目の前にあるテーブルをぺしぺしと叩いた。
「まず、レティとトリスタン様が行った転移。これが大問題です」
「あっ、はい」
「膨大な魔力は必要になりますが、仕込みがあればここからファンテールまでいけるのです。その魔術的価値、商業的価値はわかってますか?」
「えーっと、なんとなく。便利になるなぁ、くらいで」
「もう! 確かに便利に、というのはあります。けれどそれを、補助があったとしても行えるものは少ない……というより、あなたとトリスタン様だけなのです」
「そうなの?」
「ええ。再びできるかどうかは……できます? できません?」
できると思うけど、と私の声は小さくなる。だってジゼルちゃんの勢い怖いー!
私の答えに、それは絶対に誰にも言ってはいけませんよと言って話続ける。
「いいですか。トリスタン様はわかっておられるようですが、レティはまったくわかって無いようなので私のいう事をちゃんと聞いて理解してくださいね」
「はい」
「あなた達にはファンテール王族を助けたという名誉という価値。それから、長距離転移という魔術的な可能性の価値、それを実現する魔力量という価値があるのです。他にもありますが特にこの三つは重いのです。あちらでの治癒は奇跡、ということで……それを行おうと思うものはそんなにいませんがゼロではありません。貴方の魔術知識、魔力などを欲しいと、よこしまなことを考える貴族はいるんですよ」
「あ……」
「今、こうして御家で謹慎のようなことになっているのも、そういった事から守る為です。トリスタン様は、すでにデジレ様とのことが決まっていることを皆様ご存じですから手は出せません」
すると、手が出せるのはとジゼルちゃんは私を見る。
「手が出しやすいのは、私ってこと?」
「ええ、そうです。勝手に街にふらーっと一人で遊びに行って捕まって。そのまま既成事実でなんてことにならないように守られているの、わかりました?」
「……とってもよく、わかりました」
ジゼルちゃんに言われて、気付くことがたくさんある。
私はここに帰ってきたら今まで通りだと思ってた。思ってたけど、実際はそうじゃない。
それにまったく気付いてなくて、お母様のマナーやだーとか思ってそろそろ抜け出そうかなと。実はちょっと思ってた!
でも、うん。これ聞くとそれはできなくなってしまった。
「夜会でも、公爵夫妻はお嬢様はと問いかけられるばかりですよ。それから縁談もたくさん送られているはずです。茶会の誘いやレティに会いたいというのもあると思いますが」
「えっ、それはまったく知らないかも!」
「……ということは、公爵様がすべてお断りしているのだと思います。だって、レティは私への手紙にテオ君との事書いてたでしょう?」
「書いたわね……」
つまりはその気持ちを、お父様が組んでくれているってことだと思う。
お、お父様ー! ありがとう、お父様ー!
「何にせよ、少し落ち着くまではレティは学園にも来ない方が良いでしょうし、街を一人で歩いたりしない。変な誘いには乗らない、いいです?」
「はい!」
それ、お返事だけにしないでくださいねとジゼルちゃんは言う。
う、うん。気を付ける。ジゼルちゃん本当に私をよくわかってるぅ。
こくこくと頷く私をみて、ジゼルちゃんはふわりと表情緩めた。
「それじゃあ、お話聞かせてくださいな。テオ君と何か進展ありました?」
「えっ、そこ!?」
「これ以外に何を聞くというのか……式典の後のお話をしてくださいな」
ジゼルちゃんはわくわくといった風で。
私はファンテールの民族衣装着せてもらったとか、テオの友達に会った事とか。
それから海辺の街で一緒に過ごしたり、プレゼント貰った事を話した。
どんなのを、と問われたので見せてあげたらテオ君なかなかやりますねとジゼルちゃんは零す。
ベルはこういうの、気が利かないのよね。あとセンスがいまいちと。
ベ、ベルー! がんばってベルー!
で、私はジゼルちゃんにお土産を渡した。パールの髪飾り!
ジゼルちゃんは好きなデザイン、ありがとうと笑って受け取ってくれた。
久しぶりに会ってお話して、それはとっても楽しい時間で。
ジゼルちゃんはそのまま我が家にお泊りして、夜も遅くまで二人で話をした。
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