転生令嬢はやんちゃする

ナギ

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第五章

お別れの前に

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 私が快適にスヤァ……だった次の日。テオは明らかに寝不足だった。
「どしたの?」
「ほぼ徹夜で……お二人が」
「……お兄様が、ごめん」
 テオがお兄様とガブさんに連行されているのはちらっとみたんだけど。
 徹夜で何を話すのか。
 あ、もしや私をはぶって魔術談義……!
「ず、ずるい! なんで私呼んでくれないのー!」
「え?」
「だって、魔術談義してたんでしょ? 私もしたい……」
「…………してないよ」
「あれ、そうなの? ならいいけど」
 何の話を―っていうの聞くのは野暮かな! ということで私はそっかーで流した。
「……明日、帰っちゃうんだよね」
「うん、そうなっちゃってる」
「……今日は、二人で過ごしたいな」
「えっ」
「そのために、昨日の夜、お二人に付き合ったんだけど……」
 んあー!
 そういうこと!
 私はちょっと視線をさまよわせて、うんと頷いた。
「じゃあ今すぐ行こう」
 テオは私の手をとって、窓へ。あ、やっぱりそこから行くのね。
 お兄様とガブさんに見つからないうちにってとこかな。
「どこいくの?」
「どこに行きたい?」
「……屋台街」
「そう言うと思った」
 けど、ドレスじゃねとテオは言う。
 確かにそうね、と私も足を止めた。ぼろっちい……というのは無いけど軽いワンピースならある!
 ということでちょっと後ろ向いてて、とテオに言う。
 私は荷物からワンピース取り出して着替え始める。
 と、そこで気づいた。
「ちょっ、なんで後ろ向いてないの!?」
「いや、気づくの遅いよね……」
「レディの着替えを見るとかよろしくないわよ!」
「普通はね。でもレティと俺だし」
 ううう、背中でさえ見られるの、恥ずかしい。
 早くあっち向いてと唸ればはいはいとテオは背中を向けてくれた。
 それをちゃんと確認して、私は素早く着替えた。
「もうこっち見ていいわ」
「今更隠さなくても良いのに」
「そ、そういう事言わないの! 着替えなんて見て楽しい?」
「楽しい、っていうか……見たい」
「……なんで」
「そりゃ、…………言わせるの?」
 じっとりした視線。これきいちゃダメだった? と思ってもういいーと話を打ち切った。 
 多分きっと、これは深く聞いちゃダメなやつ。
 テオは笑って、行こうかと改めて仕切り直し。
 そうね、お兄様たちに見つかる前にと抜け出す。姿見えないようにして飛んじゃえばこっちのものよ!
 近くの路地に降りて、私とテオは手を繋いで街へ。
 でもまだご飯には早いから、屋台街じゃなくて街の中をうろうろ。
 テオが、此処でよく文具買うとか、本屋はこことか。
 私がいつも、どこで何してるのか知りたい! っていったのをかなえてくれる。
「あと、あそこでアイスが」
「アイス!」
「食べる?」
 うん、もちろんと頷く。だよねとテオは笑って店へ足向けた。
 お店に入って、色々並んでるの見て、迷うーと零すと俺のも選んでいいよとテオは私にもうひとつ、選択肢を開けてくれた。
「テオのそういうとこ、すごく好き。ありがと!」
「どういたしまして」
 で、私が選んだのは塩キャラメルリボンー! バニラと塩キャラメルのマーブル。
 テオのは、チョコミント。
「チョコミントかぁ」
「こっちとかえる?」
「いや、どっちでもいいよ」
 どうせ半分はレティが食べるしね、と。
 当たり前のように言うんだけど、ええその通りですとも!
「テオもこっち食べる?」
「じゃ、一口」
 そう言って口開けるから私は自然と、そのままアイスを向ける。
 テオはそれをぱくっと一口。
「美味しい?」
「塩キャラメルっていうけど、キャラメルって感じしかない」
「えー! ちょっとこう、しょっぱいじゃない!」
「そう?」
 よくわかんない、というテオ。私はわかるーと残りを食べる。
 するとふふとテオは笑い零して。
 何、その笑いと私は問う。
「レティ、俺と間接キスしてる」
「ぶふっ」
「……そこで、ふく? もう今更なのに……」
「だ、だって! い、いいい、いきなりそんなこと言われたらびっくりするし!!」
 慌てる私を見てテオは笑うばかり。
 あー! もうこれ、絶対! 私の反応みて楽しんでる!! やだこういうの本当にお兄様に似てきた!!
「ま、俺もしたけど」
「もー! だからしれっとそういう、ことを! 言うの恥ずかしいから!」
 な、なんだろう。
 なんだろう本当に!
 留学する前からこういうとこはちょっとあった。あったと思う。
 私をつついてる感じの行動は、あった。
 あった、あったけど!
 悪化? 進化? なんて言えばいいのかな、これ!
「テオ、いじめっ子みたいよ」
「レティ限定でね」
「だ、だからそういうのがー!」
 もーと頬ふくらます私に、ごめんとテオは言うけどそれ悪いと思ってない声色。
 テオは苦笑して、こういう風にレティといるのは楽しいと、突然。
 そう。
 私の! 大好きな!
 美少年スマイルを!! かましてきて!!
「あう……」
「え、何? 何、今の声」
「いや、ちょっと、その……なんでもなくないけどなんでもないって言う……」
「?」
「察してよ!」
「いや、わかんないよ」
 理不尽な私の逆ギレもどきにも不思議な顔。
 いや、もう、説明するとか、面倒だし。したらしたで、何それっていわれる気しかしないし!
 そもそも恥ずかしいから言わないけど!!!
「俺はレティのツボがよくわかんないよ」
「ツボ?」
「そう、なんか時々……言葉にするのこらえるような、何かはあるよね?」
 その何かの基準がよくわからない。
 さっきのもそうだろ、と言われて。
 おっしゃる通りです、となる。
「ま、それはこれから何か、ちゃんと理解するからさ」
「理解されると逆に困る」
「なんで?」
「だって、理解すると連発してくるでしょ? そして私の心臓がもたなくなるのがわかる……ああ……テオ魔性」
 魔性という表現にテオは笑う。
 そう、魔性。
 私限定魔性!!
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