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第五章
気付かれないように
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お兄様とデジレ様も加わってしまったので、それからみんなでわいわい騒いだ。
そもそも、なんで私達ここにいるの感はあったらしい。
まぁ、式典のために来てたのよ、ということに。しておいて!!
ガブさんが危ない目にあって助けてくれた人がいる、っていう話は出回ってるみたいなんだけど、それが私達とまではまわってないってことが三人と話しててわかった。
うん、きっとこれはばれちゃいけないやつ。
そう、思ってたのにですね!
「ガブ殿を助けたのは、テオドールとレティだぞ、知らないのか?」
お酒に酔ったデジレ様がですね。
「ガブ殿がばーんとなってそれをぎゅぎゅーっとこう、ばばーん! って治して」
語彙がない!!
いやそれはおいといてしゃべってしまったわけで。
またまたそんな、みたいな感じだったけど私とテオが否定も何もしないので本当だとわかってしまったらしい。
「……これは黙っておいた方が?」
「その方が賢明だと思う」
「おっけーわかったわかった……お前ほんとうに、何してんの?」
「俺のせいっていうかレティのせい」
「わ、わたしのせいにしないでよー!」
もー! とばたばたしてると暴れない、と手を捕まえられて、そして降ろされた。
けど、上手に指先を絡めてきて。見えないところで、手を繋いできたのだ。
するりと指が指を撫でる。さりげない動きで、そう、ただ手を繋いでいるって。
そんな気がしなくって。
ふおー!? なにしてるの!? えー! ちょ、えー!
私は動揺するしかない。
「テオ」
「何?」
「うー」
「何?」
にこーっと笑って。何か、俺悪い事してるー? みたいな。
は、恥ずかしいじゃない! 見つかったら絶対ちゃかされるじゃない!
そんな視線を向けるとばれないから、って感じで笑うばかりで面白がってない?
「だってずっと会ってなかったし」
それは、うん。そうだけど。
「しばらく一緒じゃない?」
「まぁね」
「ちょっとー! お二人さんいちゃいちゃしてないでさー!」
「どうせならなんで二人が付き合うに至ったかを俺達は知りたい」
「んっ、そ、それは秘密ー!」
テオの友人達は確実に面白がっているのがわかる。
絶対、話さないし!
「いや、これは予想してあてる方が楽しいんじゃないかな。お兄さんとお姉さんはヒントください、ヒント!」
「……ヒントか……そうだな」
「俺もいつ、こうなったのかは知らん。おい、いつどうなった」
ちょっとお兄様やめてくださいません!?
何いってるの!?
デジレ様も真面目に考えないでほしいんですが!!
何この、収集つかない状態。ぎゃあ!
「私の記憶の限りでは、最初からテオはレティが好き好きだったな……」
「俺の記憶だと、そうだな……確かに、最初からそうだな」
おおー! と三人が声そろえる。
もうあてる気とかまったくなくて完全に聞きに回る態勢というか。
それから、あることないこと。
やめてよもう! って感じでいじられた私達。
テオは三人を眺めて、あとでおぼえてろよみたいな事いってたけど、私には何も聞こえなかった。はい。
お兄さまとデジレ様は私達と、三人をからかって遊んでるようで。
ねぇこの二人くっついたら、殿下もだけど私とテオも苦労するんじゃない? と思う。
あ、いや待って。
なんか、この旅から戻ったら正式にとか言ってたような気もするんだけど。
「レティ、唸ってないでそろそろ止めないと話が膨らみまくってるよ」
「え!?」
「俺はもう諦めたけど」
「それって修正不可能って事!? 待ってなんで三人泣いてるの!?」
すごい、そんな。そんなことがあったなんて、と三人は泣いている。
なに、どんな壮大なストーリーを盛り込んだんです!?
「うっ、し、幸せになれよ……ま、まさかそんな後ろ暗い過去がテオにあるなんて」
なに聞いたの、本当に。
「それに命をかけて、そんな重い病を……乗り越えて」
重い病!?
「ぐすっ。いろんな苦難と戦ってきたんだな……ごめん、ちゃかしてごめんな!」
いろんな苦難ってどんな苦難。
完全に酒に酔ったデジレ様と悪乗りしたお兄様が変なこと言ったんだな、としか思えないわけで。
これはきっと後で、テオが正してくれるはず、多分。
「俺の妹もテオドールも苦労をしている。だから俺は二人を応援したい……お前たちも、わかってくれるな?」
はい、それはもちろん! と声が重なる。
ちょっとお兄様が悪い顔してるんですけど!?
「そうか……それなら、これから二人に力を貸してやってくれ。何か困難に立ち向かうときには」
「テオ! 俺達はお前の味方だからな!」
「あー、うん。はいはい」
「もし国から追い出されそうになったらうちにこい! お前なら重用できる!!」
「本当に困ったらね」
「うん、できる限り力になるからさ!」
「ありがと」
テオがおざなりな返事をしている。何かもうこの場で納めるのは面倒だな、無理だなと思ってるんだろう。
うん、無理だと思う。
「くっ、これで俺も安心して……婿に行ける」
「…………あっ」
「どしたの、レティ」
「お兄様がのりのりすぎて何かおかしいと思ったんだけど、あれもしかして、お兄様」
飲んでる。
あの兄、お酒飲んでる。
飲んでないと思ってたんだけど、もしかして飲んでる。
もしかして、お兄様もデジレ様もちょっといい気分、ふふふんって感じで出てきた!?
「えっ」
「これは……テオ、これはもうデートどころではないわ。あの二人を連れて、帰った方が良い」
これ以上の! 事件を! 起こされる前に!!
「…………そうだね」
それから、そう。
私達は苦労して、二人を引きずって帰った。
お友達三人は、あた会おうな、応援してる! 結婚式には呼んで! って気が早いことで。
いやそれよりも、ほんとに!
やーだー、まだ帰らないー! ってダダ捏ねるデジレ様とー!
俺? 酔ってない酔ってないって明らかに酔って楽しそうなお兄様とー!
この二人を連れて帰るのに苦労したのなんのって……途中でテオドールはかわいい顔をしているな、とか言い始めたデジレ様を見て、お兄様がもやぁとしたのか酒のテンションなのかはわかんないけど!
ちょっとそっちは私達の行けない、あっはんうっふん街で、入るのアウトな場所だからー! ってとこに連れ込もうとしたとこがハイライト。
お兄様だめです。ここは他国です、アウトです。
アウトです!!
そしてこれ、次の日起きたらどっちも覚えてないとか!!
過度なお酒の摂取はよろしくないということを、他人によって勉強したのでした。
そもそも、なんで私達ここにいるの感はあったらしい。
まぁ、式典のために来てたのよ、ということに。しておいて!!
ガブさんが危ない目にあって助けてくれた人がいる、っていう話は出回ってるみたいなんだけど、それが私達とまではまわってないってことが三人と話しててわかった。
うん、きっとこれはばれちゃいけないやつ。
そう、思ってたのにですね!
「ガブ殿を助けたのは、テオドールとレティだぞ、知らないのか?」
お酒に酔ったデジレ様がですね。
「ガブ殿がばーんとなってそれをぎゅぎゅーっとこう、ばばーん! って治して」
語彙がない!!
いやそれはおいといてしゃべってしまったわけで。
またまたそんな、みたいな感じだったけど私とテオが否定も何もしないので本当だとわかってしまったらしい。
「……これは黙っておいた方が?」
「その方が賢明だと思う」
「おっけーわかったわかった……お前ほんとうに、何してんの?」
「俺のせいっていうかレティのせい」
「わ、わたしのせいにしないでよー!」
もー! とばたばたしてると暴れない、と手を捕まえられて、そして降ろされた。
けど、上手に指先を絡めてきて。見えないところで、手を繋いできたのだ。
するりと指が指を撫でる。さりげない動きで、そう、ただ手を繋いでいるって。
そんな気がしなくって。
ふおー!? なにしてるの!? えー! ちょ、えー!
私は動揺するしかない。
「テオ」
「何?」
「うー」
「何?」
にこーっと笑って。何か、俺悪い事してるー? みたいな。
は、恥ずかしいじゃない! 見つかったら絶対ちゃかされるじゃない!
そんな視線を向けるとばれないから、って感じで笑うばかりで面白がってない?
「だってずっと会ってなかったし」
それは、うん。そうだけど。
「しばらく一緒じゃない?」
「まぁね」
「ちょっとー! お二人さんいちゃいちゃしてないでさー!」
「どうせならなんで二人が付き合うに至ったかを俺達は知りたい」
「んっ、そ、それは秘密ー!」
テオの友人達は確実に面白がっているのがわかる。
絶対、話さないし!
「いや、これは予想してあてる方が楽しいんじゃないかな。お兄さんとお姉さんはヒントください、ヒント!」
「……ヒントか……そうだな」
「俺もいつ、こうなったのかは知らん。おい、いつどうなった」
ちょっとお兄様やめてくださいません!?
何いってるの!?
デジレ様も真面目に考えないでほしいんですが!!
何この、収集つかない状態。ぎゃあ!
「私の記憶の限りでは、最初からテオはレティが好き好きだったな……」
「俺の記憶だと、そうだな……確かに、最初からそうだな」
おおー! と三人が声そろえる。
もうあてる気とかまったくなくて完全に聞きに回る態勢というか。
それから、あることないこと。
やめてよもう! って感じでいじられた私達。
テオは三人を眺めて、あとでおぼえてろよみたいな事いってたけど、私には何も聞こえなかった。はい。
お兄さまとデジレ様は私達と、三人をからかって遊んでるようで。
ねぇこの二人くっついたら、殿下もだけど私とテオも苦労するんじゃない? と思う。
あ、いや待って。
なんか、この旅から戻ったら正式にとか言ってたような気もするんだけど。
「レティ、唸ってないでそろそろ止めないと話が膨らみまくってるよ」
「え!?」
「俺はもう諦めたけど」
「それって修正不可能って事!? 待ってなんで三人泣いてるの!?」
すごい、そんな。そんなことがあったなんて、と三人は泣いている。
なに、どんな壮大なストーリーを盛り込んだんです!?
「うっ、し、幸せになれよ……ま、まさかそんな後ろ暗い過去がテオにあるなんて」
なに聞いたの、本当に。
「それに命をかけて、そんな重い病を……乗り越えて」
重い病!?
「ぐすっ。いろんな苦難と戦ってきたんだな……ごめん、ちゃかしてごめんな!」
いろんな苦難ってどんな苦難。
完全に酒に酔ったデジレ様と悪乗りしたお兄様が変なこと言ったんだな、としか思えないわけで。
これはきっと後で、テオが正してくれるはず、多分。
「俺の妹もテオドールも苦労をしている。だから俺は二人を応援したい……お前たちも、わかってくれるな?」
はい、それはもちろん! と声が重なる。
ちょっとお兄様が悪い顔してるんですけど!?
「そうか……それなら、これから二人に力を貸してやってくれ。何か困難に立ち向かうときには」
「テオ! 俺達はお前の味方だからな!」
「あー、うん。はいはい」
「もし国から追い出されそうになったらうちにこい! お前なら重用できる!!」
「本当に困ったらね」
「うん、できる限り力になるからさ!」
「ありがと」
テオがおざなりな返事をしている。何かもうこの場で納めるのは面倒だな、無理だなと思ってるんだろう。
うん、無理だと思う。
「くっ、これで俺も安心して……婿に行ける」
「…………あっ」
「どしたの、レティ」
「お兄様がのりのりすぎて何かおかしいと思ったんだけど、あれもしかして、お兄様」
飲んでる。
あの兄、お酒飲んでる。
飲んでないと思ってたんだけど、もしかして飲んでる。
もしかして、お兄様もデジレ様もちょっといい気分、ふふふんって感じで出てきた!?
「えっ」
「これは……テオ、これはもうデートどころではないわ。あの二人を連れて、帰った方が良い」
これ以上の! 事件を! 起こされる前に!!
「…………そうだね」
それから、そう。
私達は苦労して、二人を引きずって帰った。
お友達三人は、あた会おうな、応援してる! 結婚式には呼んで! って気が早いことで。
いやそれよりも、ほんとに!
やーだー、まだ帰らないー! ってダダ捏ねるデジレ様とー!
俺? 酔ってない酔ってないって明らかに酔って楽しそうなお兄様とー!
この二人を連れて帰るのに苦労したのなんのって……途中でテオドールはかわいい顔をしているな、とか言い始めたデジレ様を見て、お兄様がもやぁとしたのか酒のテンションなのかはわかんないけど!
ちょっとそっちは私達の行けない、あっはんうっふん街で、入るのアウトな場所だからー! ってとこに連れ込もうとしたとこがハイライト。
お兄様だめです。ここは他国です、アウトです。
アウトです!!
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