転生令嬢はやんちゃする

ナギ

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第四章

目が覚めて

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 ふかふかのベッドの上だぁ、と。
 目が覚めてまず思った。
 体動かすのめんどくさいなぁと思うレベルの倦怠感。魔力集めて使ったせいかな、と私はすぐに思い至る。
 時間を巻戻す。そんなことして無事でいられるわけはなかったわけ!
 そして、どうなったのかなと一気に現実に引き戻される。
 けど動けない感じなので諦めていると扉が開く音がして。それが聞こえたほうにごろんと転がると、そこにはデジレ様がいらっしゃった。
「レティ! 目が覚めたのか、よかった」
「でじれさまぁー」
 おう、声がすがす。お水が欲しい、と思っていると察したのかデジレ様がベッド横にあった水差しからお水を、という前に私を起してくれた。
 さすがに寝たままは無理です、はい。
「魔力をぎりぎりまで削って倒れていたのは、わかるな」
「はい。あの、ガブさんは」
「大丈夫だ。意識も戻ってへらへら笑っている。レティが倒れた後の話をしよう」
 ガブさんは無事と言うことをしって、私はほっとした。テオも無事とのこと。
 私が倒れたあとの話。あれから1日たっているらしい。
 私は傷口をふさぐまで、巻き戻しを行った。けど、気を失うことで魔術に終止符を打たずに放り投げたことになる。
 つまり、魔力を皆からもらって巻き戻し状態が続くということ。けれどその方向性を示す人が意識なくしたので、魔術の行く先は迷子だ。
 それをテオが慌てて引き継いで、そしてどうにか事なきを得た。テ、テオごめんー!!
 テオも突然投げ渡されたことによって魔力をごっそりで、意識はあるけど立ち上がれない程度には疲弊したらしい。
 ガブさんも一命を取り留め、というか巻戻ったのでぴんぴん元気。けど、失った血は戻らなかったのでおとなしくしてるとのこと。
 式典はめちゃくちゃな状態で、来ていた人たちはこの状況を見守ることになってしまった。
 このまま続けられるわけもなく、ガブさんは皇族の方が付き添ってその場を離れ。陛下と皇太子殿下でその場を収めたらしい。
「けどな、そう、やらかしたんだ」
「やらかし?」
「……やらかすのは一人しかいないだろう」
「私以外でというと」
「そう」
「お兄様……」
 私も、アレクの傍にいたから止める事ができなかったとデジレ様は仰います。
「え、お兄様は何、を?」
「捕えられてまだ喚いていた男を思い切り殴った……」
 んんー!! それはー! 問題なのではー!!
 いや、この騒動を引き起こしたあれそれの黒幕だとは思う。実際、もうガブさんを大勢の前で大怪我させて殺しかけたんだから、皇族としてはやっていけないはず。
 けど、色んな人がいるところでそれは、お兄様ぁ! 一応、殴った弾k内では皇族の方だし……遠慮なく思い切りやったんだろうなぁ。
「しかも一発ではなくて……その殴るに加えて蹴りもな。蹴り飛ばしてしまってな、それからまぁ……色々と……」
「ひぇ」
「そんなわけで謹慎中だ。けど、気持ちはわからなくもない」
「ええー、でも、ええー」
 デジレ様はレティの事が大事だったんだと苦笑します。
 あれは、なかなか妹想いの良い兄なのだと。
 良い兄? えっ、お兄様が? 良い? えっ?
 えっ?
「とにかく、レティが目覚めたことを皆に伝えてくる。おなかは空いているか?」
「はい、空いています。うん。自覚したらとっても空いてきました……」
 何か用意させようと言って、デジレ様は立ち上がりました。
 そしてああ、と零し。
「レティとレティの従者は、皇族を救った、奇跡を起こしたと祭り上げられている……王宮から出ないことを薦めるよ」
「え?」
「時を巻き戻すなんて、奇跡だ。私もあれはどうかと思う」
「あー……うん、はい。もうやりません」
「ならよし。ただ、他国はそうではない、興味を持ってしまった。だから保護という意味でも、二人の身柄はファンテールの皇族、皇太子殿下の預かりだ」
 弟の友人、弟を救った恩人を悪いようにはしないだろうと仰ったデジレ様。
 確かに、ミカエラ様は信じて良いと思う。
「最初に呼ぶのはテオドールだな、待ってなさい」
 待ってるも何も、私は動けないです!
 そう思いつつ待ってまーすと私は返事をした。そして気付く。
 やばい。
 テオが最初にくる?
 やばい。
 絶対お小言。絶対お小言くる。
 やばい。
 まだ起きて、あんまり意識がしゃんしゃん働かない。
 ぼんやりとお小言、やばいだけが私の頭の中をぐるぐるする。
 そのぐるぐるが何十回に達したのかわからなくなった時、ばんと音たてて扉が開いて。
「レティ!」
「あっ、テオ。わぁい、テオだー」
 その姿を見て、安心する。
 ベッドの上に乗り上げて、テオは私に抱きついた。
「ぎゃ、え、なに、どうして抱き着いてくるの!?」
「……レティ、よかった……トリスタン様に、感謝しなきゃ」
「え、お兄様?」
 うん、そうとテオは頷いて体を離した。そして真剣な面持ちを私に向ける。
 レティの魔力枯渇。それはガブリエル様よりまずかったのだと。
「俺はレティが投げたほうの始末があったから何もできなくて。でも、トリスタン様が自分の魔力をレティに分けたから間に合ったんだよ」
「お兄様が?」
「そう。殿下もデジレ様も、他の皇族の方もガブリエル様のために魔力を渡してくれてたのはわかってる?」
「テオが渡してくれてるのだけしか、わからなかったかな」
「だよね。うん、魔力をごっそり、集めるより先に自分の底までいっちゃったんだよ、レティは」
「ああ、とうとう私の魔力の底が、なるほど」
「それが一気に消えたらやっぱり命に係わることで……でも、トリスタン様は魔力をこっちに、俺に渡さなかった」
 だから、レティは助かったとテオは言う。
 つまり、お兄様はガブさんを助ける方に加わらなかった。で、だからこそ私に魔力を与えてくれて、私は踏みとどまれた、と。
 わぁ……これお兄様の方からこそ、お小言無双の気配。
「……トリスタン様の話は聞いた?」
「あ、うん。謹慎中って」
「それはレティが、貶されたからだよ」
 俺も意識がうっすら、程度だったけどあの激昂で引き戻されたとテオは苦笑する。
 激昂?
 お兄様が、激昂。
 私のために?
 えっ、なにそれ想像できない。
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