転生令嬢はやんちゃする

ナギ

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第四章

血の跡の行方

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 宿に戻るとガブさんは身ぎれいになっていて。
 そして、私は三人に姿が見えないことを伝えた。
「というわけで、寝ます!」
「よし、わかった。子守唄は必要か!?」
「大丈夫だと思う! 結構動き回って疲れてるし……」
 私はのそのそと楽な服に着替えて寝台の中へ。
 お昼寝ー!!
 ガブさんは何が何だか、という様子だけどあとでお二人が説明してくれるはず。
 いや、多分お兄様がしてるだろうけど、突然こんな寝るとかいわれたら困るとは思う。
 毛布かぶって唸りながら色々考えていたら、私はスヤァと夢の中。
 気づけば足元に自分がいて、時間を見れば寝台に入ってから30分ほど。
 はやい!
 けど、のろのろしていられなくて私は即、お兄様とテオの所と念じた。
 念じたのだけど、いけない。
 なんで!? と思ったのだけど、二人が離れてたら、二人一緒の所って思ったんだから無理な話。
 すぐそば、ならいけたんだろうけど……別にされる?
 それなら、とまずテオの所を思い浮かべる。
 視界が変わって、その先は薄暗い、窓のない部屋。多分、地下室。
 そこにテオ達はひとまとめにされていた。縛られてもいないし自由みたいだけど、皆座ってる。
 いちにいさんし……全員、いる。お兄様だけ、いない。
「連絡手段がな……テオ、お前からは」
「難しいと思う。この部屋、上手く魔力が……扱えないというか」
 阻害されているとテオは壁を叩く。
 やっぱりそうかと零すのはテオのお兄さんだ。どうやら話を聞いていると、ひとまず体力回復に努めているらしい。
 無意味に暴れてもこの部屋は破れない、という結論で。
 そしてお兄様だけ、別に連れていかれた様子。
 よし、ひとまず生きてるのは確認した。テオに大丈夫だよ、助けるよって私は抱き着いて気を引き締める。
 まず、ここがどこなのか。
 ふわっと私は扉すり抜けた。すると目の前には階段。やっぱり地下だ。
 それをあがったところで見張りっぽい人がひとり。
 明るい場所に出ると真っ赤な絨毯の廊下。これはお金持ちの家だと、思う。私は一階をうろうろして、玄関を見つけたので外へ。
 ちょっと高いところまで上がってみると、王宮も見える。
 そして、泊まってる宿も見える。結構近いところにいる気がする。
 なんとなく場所把握したから、次は――お兄様の居場所。
 思い浮かべると視界が変わる。
 お兄様は、超絶装飾過多!! な部屋で椅子に座りめっちゃくちゃ不機嫌顔でした。
 わぁ!!
 置いてあるテーブルの上にはお菓子とかお茶とか置いてある。お接待されている、という感じだ。
 つまり相手はお兄様を傷つけてはいけないと理解しているってことかしら。それなら、お兄様暴れそうなんだけど……魔術使えないようにされてるんだと思う。
 多分、やってる。やってるけどうまくいかなくて、どうにか抜け穴探しているような感じ、かな。
 ひとまず元気そうなのを確認できたので、外へ――って出ると、さっきと同じ場所だ。
 同じ建物内にいるって事ね。よし。
 あとは私が場所を確認して、報告して、突撃するだけだと思う。ただそうなると一緒に行くってデジレ様、仰りそうだし。
 多分、魔力使えないのは何かの細工があるから。魔道具かな、魔石かなー!
 魔石を媒介にして陣あたりが濃厚。
 あっ、その前に情報収集しとこ。この家の主が誰なのかわかれば僥倖。
 こういうお屋敷の、主人の部屋って大体、ある場所一緒なのよね。
 二階の……あった、ここだ。
 外にでていた私はすすいーっと家の周りを一周。するとバルコニーつきのお部屋があったので覗きこむ。
 はい、えらそーな感じの人が三人ほど!
「さすがに他国の公爵の子息は殺せませんよ」
「うん……それなら記憶の書き換えか、洗脳か」
 洗脳!?
「皇子が無事に保護されてしまった今、助け出せたのは彼一人という筋書きが良いでしょうね……」
 は?
「口封じ、ということですな」
 やばい。これはやばい。
 それを、いつされるのか、わからない。
 私は自分の体に戻ってすぐ起きなきゃ、と思う。
 たたき起こしてくれるかな! デジレ様がきっと、魔力の流れ止まったら起してくれると思うけど!
「しかし、次から次へとよくそんな案がでてきますな、セドリック様」
「いやいや! どうせもうすぐこの国は私のものになりますしな」
「ええ、あなたがいらっしゃいますから、この国は盤石でございます」
 よし、戻ろうと思った私の意識を引き戻す言葉。
 セドリック。
 そう呼ばれた人に視線を向ける。嫌な笑い方をする人だな、とまず思った。
 へこへこと頭を下げ、持ち上げられているその人の特徴を私は覚えた。
 ガブさんに言えば、どこのだれかわかるかもしれないし。
 そろそろ時間切れの頃。
 私は早く、起こしてもらえることを願いながら自分の所に戻った。
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