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第四章
お迎え準備
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「よし、買い物に行こう」
と、昨夜の話をし終えた後、デジレ様は立ち上がった。
「姉上、書状書くから待って」
その間に支度とバタバタ大忙し。私もその商会へ行くのにはメイドのふりして一緒に行くことにした。
おつきです!
いつもお手紙持ってきてくれた人と顔見知りなので、話も通しやすくなるはず。
ご一行様の中に紛れて、私も一緒にお店へ。
馬車に乗り込んで、そこでデジレ様はふと声を潜められた。
「……私の勘なんだが、つけられてないか?」
「え? そんなの……いるんですか」
「いる、ような気がする……」
こういう時のデジレ様の勘はあたると一緒にいる他のメイドさんが言う。
この中での話も、ということで私はそそーっと盗聴防止! 音漏れ内系の場をここに作った。
あ、なんかその途中でひっかかるものがあった。馬車の下に何かある。魔石かな?
場をつくるときにひっかかった感じがある。まぁ私の魔術のほうが精度が高いので!
問題にはならないけど!
「……おう……多分、馬車の下になにかあるかと。そこを避けて音漏れしないにしたのでもう大丈夫ですよ」
「……器用だな」
「えへっ! というかこの馬車、デジレ様が国から乗ってきたのではないんですね」
「そっちはアレクが使うからな……これは泊まっているところのものだ」
なるほど。お部屋とかにはこういう魔術がないことをデジレ様と殿下の二人で色々調べているので大丈夫とのことだけど、確かにレンタル物まではどこまでもチェックは難しい。
「殿下が使う馬車も調べたほうが良さそうですね」
「そうだな……馬車はあの宿の、馬車置場においている。見張りはいるが誰かが細工しようと思えば……」
できないこともない、とデジレ様はため息をつかれた。
「ということは、馬車の中でした話は漏れてると思った方がいいのでは?」
「馬車の中ではレティ達が来ている事は言っていないから大丈夫だと思う。ガブリエル殿が心配くらいは……アレクは零していたが」
つまり、殿下がガブさんの無事を願って仲良し、っていうのはどこぞの誰かに伝わってる可能性があるってこと。
うーん。でもそこから手を貸すとかまでは……いや、でもあっちのガブさんたちが相手さんと遭遇して、一人増えてて、あれって思ってそれを報告したら殿下が手を貸しているっていう可能性を向こうさんが推理してくる可能性……ある。
十分にある。
さすがに国賓に手出しはしてこないだろうけど、何かしないように見張りとか、そんなのつけてくるだろうし。
「油断できませんね……」
お兄様達、無事ならいいんだけど。
……無事だなー! どう考えても無事だなー!!
お兄様合流しちゃったし、休めてるだろうし、無事だなー!!
この妙な信頼感を信じちゃだめなんじゃ、と思うわないこともないけど。
無事だなー!! なんかそうしか思えない。
うん、だから、私たちは無事な人たちが上手にここへ戻ってこれるように手を貸すだけ!
「魔術解除しますね、黙りこくってるのもおかしいですし。差し障りない話しましょう」
「そうだな」
私は解除します、と解く。
もういいですよーと合図すると、デジレ様がお土産は何にしようかなと零して。
メイドさんたちがあれがいいですこれがいいですと色々紡ぐ。
私は! ここで! 日本食的物産をですね!!
ガブさんが目をつけてないだけで他にもあるんじゃないのかな、そわぁ!!
そんな話をしていると、商会の前についた。
一応先触れはしてあるので、お店の方々が待っていてくれたそうな。
店頭でのショッピングもいいけど、奥の部屋に色々用意してくれている様子。
そして、お出迎えに来てくれたのは私によくお手紙持ってきてくれる人と、その人に似たお爺さんでした。
あれ、と向こうも思ったのだろうけど、私は俯き加減。
今は誰がどこでみてるか、わからないもの。
奥の部屋に通されて、私はそそいと勝手ながらに音漏れしない空間をつくらせていただいた。
その違和感は、あちらも気づいたようで。
デジレ様が視線で問うので、もう大丈夫ですと私は頷いた。
そして私は向き直り、頭を下げてネタばらし。
「いつもお手紙ありがとうございます」
「あ、あなたは……いつも手紙を届けている」
「はい! ガブさんの危機と聞いて、ここまできました」
そうですか、とその男性は笑む。
男性は、こちらが会頭で私の祖父ですと紹介してくれました。
デジレ様は自己紹介もそこそこに、本題をさくっと切り出す。
「ガブリエル殿は無事だと、私たちは思っている。こちらも探しているので、もし見つけたら商会の力を貸してほしい」
これは国としてのお願いだと、殿下がしたためた書状をデジレ様は渡す。
そこには協力してくれたら殿下とデジレ様がこの商会を、国でのお抱えにするという約束とかなんとかいろいろメリットが書かれているらしい。
それに目を通した初老の方は
「……わかりました。我々もガブリエル殿下にはごひいきにしてもらっております。しかし、本当にこれだけで、この見返りでよろしいので?」
「ああ、問題ない。荷馬車に土産を色々詰めてほしい。そして、届けてくれ」
そこに――ガブさんたちは紛れ込む。テオとお兄様とガブさんだけだったら飛行でふぁーっとこれるけど、さすがにそれは難しい。
飛ぶ飛べないって慣れもあるし。あとは受け入れられるかどうかっていうのもあってむずかしい。さらにそこに、見えないあれをかけるとなるとー……燃費悪い。
箱詰めされて、彼らは運ばれてくる予定なのでした。
「そのうちの一人を、従者としてつけてくれ。何かあってもそいつがどうにか守るだろうし」
「あ、それなら到着したらこれから運びますって連絡もらえますか? 私が迎えに行きます」
「ああなるほど……それもいいな」
デジレ様はよし、そうしようと決定された。
それから商会の方たちとちょっと話を詰めて、そしてお土産たくさん買った。
本当にたくさん買った。爆買いってこういうの言うんだなって思った。
と、昨夜の話をし終えた後、デジレ様は立ち上がった。
「姉上、書状書くから待って」
その間に支度とバタバタ大忙し。私もその商会へ行くのにはメイドのふりして一緒に行くことにした。
おつきです!
いつもお手紙持ってきてくれた人と顔見知りなので、話も通しやすくなるはず。
ご一行様の中に紛れて、私も一緒にお店へ。
馬車に乗り込んで、そこでデジレ様はふと声を潜められた。
「……私の勘なんだが、つけられてないか?」
「え? そんなの……いるんですか」
「いる、ような気がする……」
こういう時のデジレ様の勘はあたると一緒にいる他のメイドさんが言う。
この中での話も、ということで私はそそーっと盗聴防止! 音漏れ内系の場をここに作った。
あ、なんかその途中でひっかかるものがあった。馬車の下に何かある。魔石かな?
場をつくるときにひっかかった感じがある。まぁ私の魔術のほうが精度が高いので!
問題にはならないけど!
「……おう……多分、馬車の下になにかあるかと。そこを避けて音漏れしないにしたのでもう大丈夫ですよ」
「……器用だな」
「えへっ! というかこの馬車、デジレ様が国から乗ってきたのではないんですね」
「そっちはアレクが使うからな……これは泊まっているところのものだ」
なるほど。お部屋とかにはこういう魔術がないことをデジレ様と殿下の二人で色々調べているので大丈夫とのことだけど、確かにレンタル物まではどこまでもチェックは難しい。
「殿下が使う馬車も調べたほうが良さそうですね」
「そうだな……馬車はあの宿の、馬車置場においている。見張りはいるが誰かが細工しようと思えば……」
できないこともない、とデジレ様はため息をつかれた。
「ということは、馬車の中でした話は漏れてると思った方がいいのでは?」
「馬車の中ではレティ達が来ている事は言っていないから大丈夫だと思う。ガブリエル殿が心配くらいは……アレクは零していたが」
つまり、殿下がガブさんの無事を願って仲良し、っていうのはどこぞの誰かに伝わってる可能性があるってこと。
うーん。でもそこから手を貸すとかまでは……いや、でもあっちのガブさんたちが相手さんと遭遇して、一人増えてて、あれって思ってそれを報告したら殿下が手を貸しているっていう可能性を向こうさんが推理してくる可能性……ある。
十分にある。
さすがに国賓に手出しはしてこないだろうけど、何かしないように見張りとか、そんなのつけてくるだろうし。
「油断できませんね……」
お兄様達、無事ならいいんだけど。
……無事だなー! どう考えても無事だなー!!
お兄様合流しちゃったし、休めてるだろうし、無事だなー!!
この妙な信頼感を信じちゃだめなんじゃ、と思うわないこともないけど。
無事だなー!! なんかそうしか思えない。
うん、だから、私たちは無事な人たちが上手にここへ戻ってこれるように手を貸すだけ!
「魔術解除しますね、黙りこくってるのもおかしいですし。差し障りない話しましょう」
「そうだな」
私は解除します、と解く。
もういいですよーと合図すると、デジレ様がお土産は何にしようかなと零して。
メイドさんたちがあれがいいですこれがいいですと色々紡ぐ。
私は! ここで! 日本食的物産をですね!!
ガブさんが目をつけてないだけで他にもあるんじゃないのかな、そわぁ!!
そんな話をしていると、商会の前についた。
一応先触れはしてあるので、お店の方々が待っていてくれたそうな。
店頭でのショッピングもいいけど、奥の部屋に色々用意してくれている様子。
そして、お出迎えに来てくれたのは私によくお手紙持ってきてくれる人と、その人に似たお爺さんでした。
あれ、と向こうも思ったのだろうけど、私は俯き加減。
今は誰がどこでみてるか、わからないもの。
奥の部屋に通されて、私はそそいと勝手ながらに音漏れしない空間をつくらせていただいた。
その違和感は、あちらも気づいたようで。
デジレ様が視線で問うので、もう大丈夫ですと私は頷いた。
そして私は向き直り、頭を下げてネタばらし。
「いつもお手紙ありがとうございます」
「あ、あなたは……いつも手紙を届けている」
「はい! ガブさんの危機と聞いて、ここまできました」
そうですか、とその男性は笑む。
男性は、こちらが会頭で私の祖父ですと紹介してくれました。
デジレ様は自己紹介もそこそこに、本題をさくっと切り出す。
「ガブリエル殿は無事だと、私たちは思っている。こちらも探しているので、もし見つけたら商会の力を貸してほしい」
これは国としてのお願いだと、殿下がしたためた書状をデジレ様は渡す。
そこには協力してくれたら殿下とデジレ様がこの商会を、国でのお抱えにするという約束とかなんとかいろいろメリットが書かれているらしい。
それに目を通した初老の方は
「……わかりました。我々もガブリエル殿下にはごひいきにしてもらっております。しかし、本当にこれだけで、この見返りでよろしいので?」
「ああ、問題ない。荷馬車に土産を色々詰めてほしい。そして、届けてくれ」
そこに――ガブさんたちは紛れ込む。テオとお兄様とガブさんだけだったら飛行でふぁーっとこれるけど、さすがにそれは難しい。
飛ぶ飛べないって慣れもあるし。あとは受け入れられるかどうかっていうのもあってむずかしい。さらにそこに、見えないあれをかけるとなるとー……燃費悪い。
箱詰めされて、彼らは運ばれてくる予定なのでした。
「そのうちの一人を、従者としてつけてくれ。何かあってもそいつがどうにか守るだろうし」
「あ、それなら到着したらこれから運びますって連絡もらえますか? 私が迎えに行きます」
「ああなるほど……それもいいな」
デジレ様はよし、そうしようと決定された。
それから商会の方たちとちょっと話を詰めて、そしてお土産たくさん買った。
本当にたくさん買った。爆買いってこういうの言うんだなって思った。
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