131 / 243
第四章
束の間の
しおりを挟む
お兄様が出発して、私は魔法陣の前に張り付いてる状態だ。
魔力が流れてくればざわめく。そしたらこっちから供給して、負担を減らす。
デジレ様に、今晩つくことはないだろうからと私は休むように言われた。
そうしないといざという時、と言われてしまうと頷くしかない。
「よし、一緒に寝よう」
「え、一緒に?」
「ああ、一緒の寝台で……女同士の話だ! アレク、聞き耳を立てたら」
「立てませんよ」
そんな、おそろしい。そう殿下が呟いたのはデジレ様はもちろん、聞き逃さない!
ぺろっと言っちゃう殿下も殿下だと思いますが!
デジレ様が殿下をやわらかいクッションでべしべし殴り、満足したのか寝ようと私の手を引く。
大きな寝台にほらほらと押し上げられて、それでと優しく微笑まれた。
「心配でたまらないんだろう? でもここにいるしかなくて、色々理由はあって納得……は、しているけどやっぱり気持ちとしてはってとこかな」
「うっ。まぁ、そんな感じです」
「飛び出していく、ってしないあたりでちゃんと分別はついてる。私だったら行ってるな……」
ええーと声あげると、私は我慢できないからなとデジレ様は仰る。
「まぁ、こう考えるといい。まだ、飛び出していくときではないんだって事だと」
「まだ?」
「そう、まだトリスタンが行くだけで事足りる。まだ、ここで魔法陣を動かすために、裏方にいてどうにかなる」
そうして我慢していると、どうにも我慢できなかったときに、今まで傍にいなかったからと言って飛び出す免罪符ができるとデジレ様は悪い笑み浮かべた。
ああああ、なるほど。
今、我慢しておいた方が後で何かやらかすときに許してもらいやすくなる、と。
なにそれ本当に悪い考えですね、のった!
「そんなことにならないで欲しいし、ならないと言い切りたいが……何があるかわからないしな」
やはり他国。
情報入手はそうたやすくないのだとデジレ様はため息をつく。今日もそのために、ねちょねちょ手を触られまくったりしたとうんざりとした様子だ。
「ま、今の所矢面に立つのは男どもでいい。簡単にやられるタイプじゃないだろ?」
「そうですね。簡単には……私いつも言いくるめられてました」
心配しすぎると、今度は怒られるぞとデジレ様は言って。
大丈夫だと私の頭を撫でる。
そこでふと、デジレ様もお兄様を送り出して。まったく不安ではないのかもと思った。
しかしそれは置いといて。二人きりなので、うん、あえて。
「デジレ様、お兄様のどこが好きなんです?」
「え!?」
「ぜひ教えていただきたいです」
「そ、そんなの今は関係ないと思うんだが!」
「そうなんですけど、まぁまぁ、良いじゃないですかー!」
それから。しどろもどろにしつつ、突然かわいい顔をするだとか、時折甘えてくるだとか。
お兄様あああああって私が盛大に草生やして笑い転げるような感じの話を聞いた。
ばすばすとベッド叩いて何とかこらえたけど!
ひゃー、そりゃそんなことしてれば乙女は落ちますよ、お兄様。いやほんと。ごふっ。
砂糖を口に突っ込まれてる感じしかない。
「しかしな、私はトリスタンに主導権をわたす気はない。私のほうが年上だしな!」
デジレ様、そう仰りますが今までの話を聞いているとお兄様に手玉に取られてますよ。
あっ、そうか。それであの酔った時に快方してあげるのものすごく楽しそうだったんですね……納得。
しかし、私がテオに同じことされたらお腹抱えて笑い転げそうで。あとテオも正直こんなのね、やりたくないんだよね、って顔しそう。
お兄様よくやるわー。素なの? 作ってるの? わざとなの?
落ち着いたら聞いてみよ。
「はー、なんだか今日は良い夢見れそうです。今日はこのまま寝ちゃいますね、幽体離脱も……いざという時の為にしません」
「うん、そうすると良い」
それじゃあお休み、と近くの灯りが小さくなる。薄暗い空間はゆるゆると眠りに誘ってくれるのだ。
そうして意識が途切れて眠りに落ちた。
そして朝、おはよーございまーす!!
の! はず! が!
「なんで私! ゆうたいりだってんの!」
えええええ、する気なかったのに! なかったのに! 下に身体がありますやったー!
やったーじゃない!
幽体離脱癖がついちゃったのかな。うう、でもしちゃったものは仕方ない。仕方ないよね。
仕方ないし、しちゃったなら有効活用だよね。
うんうん、そうしよ。
私はまずテオの所へ向かった。
魔力が流れてくればざわめく。そしたらこっちから供給して、負担を減らす。
デジレ様に、今晩つくことはないだろうからと私は休むように言われた。
そうしないといざという時、と言われてしまうと頷くしかない。
「よし、一緒に寝よう」
「え、一緒に?」
「ああ、一緒の寝台で……女同士の話だ! アレク、聞き耳を立てたら」
「立てませんよ」
そんな、おそろしい。そう殿下が呟いたのはデジレ様はもちろん、聞き逃さない!
ぺろっと言っちゃう殿下も殿下だと思いますが!
デジレ様が殿下をやわらかいクッションでべしべし殴り、満足したのか寝ようと私の手を引く。
大きな寝台にほらほらと押し上げられて、それでと優しく微笑まれた。
「心配でたまらないんだろう? でもここにいるしかなくて、色々理由はあって納得……は、しているけどやっぱり気持ちとしてはってとこかな」
「うっ。まぁ、そんな感じです」
「飛び出していく、ってしないあたりでちゃんと分別はついてる。私だったら行ってるな……」
ええーと声あげると、私は我慢できないからなとデジレ様は仰る。
「まぁ、こう考えるといい。まだ、飛び出していくときではないんだって事だと」
「まだ?」
「そう、まだトリスタンが行くだけで事足りる。まだ、ここで魔法陣を動かすために、裏方にいてどうにかなる」
そうして我慢していると、どうにも我慢できなかったときに、今まで傍にいなかったからと言って飛び出す免罪符ができるとデジレ様は悪い笑み浮かべた。
ああああ、なるほど。
今、我慢しておいた方が後で何かやらかすときに許してもらいやすくなる、と。
なにそれ本当に悪い考えですね、のった!
「そんなことにならないで欲しいし、ならないと言い切りたいが……何があるかわからないしな」
やはり他国。
情報入手はそうたやすくないのだとデジレ様はため息をつく。今日もそのために、ねちょねちょ手を触られまくったりしたとうんざりとした様子だ。
「ま、今の所矢面に立つのは男どもでいい。簡単にやられるタイプじゃないだろ?」
「そうですね。簡単には……私いつも言いくるめられてました」
心配しすぎると、今度は怒られるぞとデジレ様は言って。
大丈夫だと私の頭を撫でる。
そこでふと、デジレ様もお兄様を送り出して。まったく不安ではないのかもと思った。
しかしそれは置いといて。二人きりなので、うん、あえて。
「デジレ様、お兄様のどこが好きなんです?」
「え!?」
「ぜひ教えていただきたいです」
「そ、そんなの今は関係ないと思うんだが!」
「そうなんですけど、まぁまぁ、良いじゃないですかー!」
それから。しどろもどろにしつつ、突然かわいい顔をするだとか、時折甘えてくるだとか。
お兄様あああああって私が盛大に草生やして笑い転げるような感じの話を聞いた。
ばすばすとベッド叩いて何とかこらえたけど!
ひゃー、そりゃそんなことしてれば乙女は落ちますよ、お兄様。いやほんと。ごふっ。
砂糖を口に突っ込まれてる感じしかない。
「しかしな、私はトリスタンに主導権をわたす気はない。私のほうが年上だしな!」
デジレ様、そう仰りますが今までの話を聞いているとお兄様に手玉に取られてますよ。
あっ、そうか。それであの酔った時に快方してあげるのものすごく楽しそうだったんですね……納得。
しかし、私がテオに同じことされたらお腹抱えて笑い転げそうで。あとテオも正直こんなのね、やりたくないんだよね、って顔しそう。
お兄様よくやるわー。素なの? 作ってるの? わざとなの?
落ち着いたら聞いてみよ。
「はー、なんだか今日は良い夢見れそうです。今日はこのまま寝ちゃいますね、幽体離脱も……いざという時の為にしません」
「うん、そうすると良い」
それじゃあお休み、と近くの灯りが小さくなる。薄暗い空間はゆるゆると眠りに誘ってくれるのだ。
そうして意識が途切れて眠りに落ちた。
そして朝、おはよーございまーす!!
の! はず! が!
「なんで私! ゆうたいりだってんの!」
えええええ、する気なかったのに! なかったのに! 下に身体がありますやったー!
やったーじゃない!
幽体離脱癖がついちゃったのかな。うう、でもしちゃったものは仕方ない。仕方ないよね。
仕方ないし、しちゃったなら有効活用だよね。
うんうん、そうしよ。
私はまずテオの所へ向かった。
10
お気に入りに追加
3,169
あなたにおすすめの小説
【完結】名前もない悪役令嬢の従姉妹は、愛されエキストラでした
犬野きらり
恋愛
アーシャ・ドミルトンは、引越してきた屋敷の中で、初めて紹介された従姉妹の言動に思わず呟く『悪役令嬢みたい』と。
思い出したこの世界は、最終回まで私自身がアシスタントの1人として仕事をしていた漫画だった。自分自身の名前には全く覚えが無い。でも悪役令嬢の周りの人間は消えていく…はず。日に日に忘れる記憶を暗記して、物語のストーリー通りに進むのかと思いきや何故かちょこちょこと私、運良く!?偶然!?現場に居合わす。
何故、私いるのかしら?従姉妹ってだけなんだけど!悪役令嬢の取り巻きには絶対になりません。出来れば関わりたくはないけど、未来を知っているとついつい手を出して、余計なお喋りもしてしまう。気づけば私の周りは、主要キャラばかりになっているかも。何か変?は、私が変えてしまったストーリーだけど…
初耳なのですが…、本当ですか?
あおくん
恋愛
侯爵令嬢の次女として、父親の仕事を手伝ったり、邸の管理をしたりと忙しくしているアニーに公爵家から婚約の申し込みが来た!
でも実際に公爵家に訪れると、異世界から来たという少女が婚約者の隣に立っていて…。
【完結】引きこもり令嬢は迷い込んできた猫達を愛でることにしました
かな
恋愛
乙女ゲームのモブですらない公爵令嬢に転生してしまった主人公は訳あって絶賛引きこもり中!
そんな主人公の生活はとある2匹の猫を保護したことによって一変してしまい……?
可愛い猫達を可愛がっていたら、とんでもないことに巻き込まれてしまった主人公の無自覚無双の幕開けです!
そしていつのまにか溺愛ルートにまで突入していて……!?
イケメンからの溺愛なんて、元引きこもりの私には刺激が強すぎます!!
毎日17時と19時に更新します。
全12話完結+番外編
「小説家になろう」でも掲載しています。
【完結】私ですか?ただの令嬢です。
凛 伊緒
恋愛
死んで転生したら、大好きな乙女ゲーの世界の悪役令嬢だった!?
バッドエンドだらけの悪役令嬢。
しかし、
「悪さをしなければ、最悪な結末は回避出来るのでは!?」
そう考え、ただの令嬢として生きていくことを決意する。
運命を変えたい主人公の、バッドエンド回避の物語!
※完結済です。
※作者がシステムに不慣れな時に書いたものなので、温かく見守っていだければ幸いです……(。_。///)
【完結】転生地味悪役令嬢は婚約者と男好きヒロイン諸共無視しまくる。
なーさ
恋愛
アイドルオタクの地味女子 水上羽月はある日推しが轢かれそうになるのを助けて死んでしまう。そのことを不憫に思った女神が「あなた、可哀想だから転生!」「え?」なんの因果か異世界に転生してしまう!転生したのは地味な公爵令嬢レフカ・エミリーだった。目が覚めると私の周りを大人が囲っていた。婚約者の第一王子も男好きヒロインも無視します!今世はうーん小説にでも生きようかな〜と思ったらあれ?あの人は前世の推しでは!?地味令嬢のエミリーが知らず知らずのうちに戦ったり溺愛されたりするお話。
本当に駄文です。そんなものでも読んでお気に入り登録していただけたら嬉しいです!
悪役令嬢はモブ化した
F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。
しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す!
領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。
「……なんなのこれは。意味がわからないわ」
乙女ゲームのシナリオはこわい。
*注*誰にも前世の記憶はありません。
ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。
性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。
作者の趣味100%でダンジョンが出ました。
家庭菜園物語
コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。
その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。
異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる