転生令嬢はやんちゃする

ナギ

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第四章

束の間の

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 お兄様が出発して、私は魔法陣の前に張り付いてる状態だ。
 魔力が流れてくればざわめく。そしたらこっちから供給して、負担を減らす。
 デジレ様に、今晩つくことはないだろうからと私は休むように言われた。
 そうしないといざという時、と言われてしまうと頷くしかない。
「よし、一緒に寝よう」
「え、一緒に?」
「ああ、一緒の寝台で……女同士の話だ! アレク、聞き耳を立てたら」
「立てませんよ」
 そんな、おそろしい。そう殿下が呟いたのはデジレ様はもちろん、聞き逃さない!
 ぺろっと言っちゃう殿下も殿下だと思いますが!
 デジレ様が殿下をやわらかいクッションでべしべし殴り、満足したのか寝ようと私の手を引く。
 大きな寝台にほらほらと押し上げられて、それでと優しく微笑まれた。
「心配でたまらないんだろう? でもここにいるしかなくて、色々理由はあって納得……は、しているけどやっぱり気持ちとしてはってとこかな」
「うっ。まぁ、そんな感じです」
「飛び出していく、ってしないあたりでちゃんと分別はついてる。私だったら行ってるな……」
 ええーと声あげると、私は我慢できないからなとデジレ様は仰る。
「まぁ、こう考えるといい。まだ、飛び出していくときではないんだって事だと」
「まだ?」
「そう、まだトリスタンが行くだけで事足りる。まだ、ここで魔法陣を動かすために、裏方にいてどうにかなる」
 そうして我慢していると、どうにも我慢できなかったときに、今まで傍にいなかったからと言って飛び出す免罪符ができるとデジレ様は悪い笑み浮かべた。
 ああああ、なるほど。
 今、我慢しておいた方が後で何かやらかすときに許してもらいやすくなる、と。
 なにそれ本当に悪い考えですね、のった!
「そんなことにならないで欲しいし、ならないと言い切りたいが……何があるかわからないしな」
 やはり他国。
 情報入手はそうたやすくないのだとデジレ様はため息をつく。今日もそのために、ねちょねちょ手を触られまくったりしたとうんざりとした様子だ。
「ま、今の所矢面に立つのは男どもでいい。簡単にやられるタイプじゃないだろ?」
「そうですね。簡単には……私いつも言いくるめられてました」
 心配しすぎると、今度は怒られるぞとデジレ様は言って。
 大丈夫だと私の頭を撫でる。
 そこでふと、デジレ様もお兄様を送り出して。まったく不安ではないのかもと思った。
 しかしそれは置いといて。二人きりなので、うん、あえて。
「デジレ様、お兄様のどこが好きなんです?」
「え!?」
「ぜひ教えていただきたいです」
「そ、そんなの今は関係ないと思うんだが!」
「そうなんですけど、まぁまぁ、良いじゃないですかー!」
 それから。しどろもどろにしつつ、突然かわいい顔をするだとか、時折甘えてくるだとか。
 お兄様あああああって私が盛大に草生やして笑い転げるような感じの話を聞いた。
 ばすばすとベッド叩いて何とかこらえたけど!
 ひゃー、そりゃそんなことしてれば乙女は落ちますよ、お兄様。いやほんと。ごふっ。
 砂糖を口に突っ込まれてる感じしかない。
「しかしな、私はトリスタンに主導権をわたす気はない。私のほうが年上だしな!」
 デジレ様、そう仰りますが今までの話を聞いているとお兄様に手玉に取られてますよ。
 あっ、そうか。それであの酔った時に快方してあげるのものすごく楽しそうだったんですね……納得。
 しかし、私がテオに同じことされたらお腹抱えて笑い転げそうで。あとテオも正直こんなのね、やりたくないんだよね、って顔しそう。
 お兄様よくやるわー。素なの? 作ってるの? わざとなの?
 落ち着いたら聞いてみよ。
「はー、なんだか今日は良い夢見れそうです。今日はこのまま寝ちゃいますね、幽体離脱も……いざという時の為にしません」
「うん、そうすると良い」
 それじゃあお休み、と近くの灯りが小さくなる。薄暗い空間はゆるゆると眠りに誘ってくれるのだ。
 そうして意識が途切れて眠りに落ちた。
 そして朝、おはよーございまーす!!
 の! はず! が!
「なんで私! ゆうたいりだってんの!」
 えええええ、する気なかったのに! なかったのに! 下に身体がありますやったー!
 やったーじゃない!
 幽体離脱癖がついちゃったのかな。うう、でもしちゃったものは仕方ない。仕方ないよね。
 仕方ないし、しちゃったなら有効活用だよね。
 うんうん、そうしよ。
 私はまずテオの所へ向かった。
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