転生令嬢はやんちゃする

ナギ

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第四章

眠れない不安

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「眠れない……」
 不安も的中。私は昼寝とかできるタイプではなかったのだ!
「眠れない……お、起きておくんだった……」
 殿下とデジレ様は接待を受けにというこでお出かけ中で。
 お兄様は私が眠る様子がないので情報収集してくると出かけた。
 ごろごろ。部屋を薄暗くしてみるものの、なかなか。
 ああーと漏れる声が無意味に響く。
「私はここまで来て、何をやってるのか……」
 むしろもう、夢じゃなくて。私が行ければいいんじゃない?
 って地味に思った。
 よーしそうとなれば!
 寝台から降りて、紙とインクを持ってくる。さすがにこの上でごろごろしながらやってインクばっしゃー! とかしたらあとで怒られるだろうから、サイドテーブルで。
 ランプとかをちょっと端っこに寄せる。
 お兄様のあの大がかりな転移のあれをみて、目標物の目安を探して飛ぶ、という感じだったのを体感した。
 こういうのは言葉にできない、感覚的な者なのだけど。
 私もそれを真似ようと思う。
 テオには魔石渡してあるし、あれは私が手をいれた魔素が満ちている。
 ということで、まずは方角。大体の方角はわかるんだけども。
 そう、一応持ってきているのだ。
 片割れの魔石を。
 私は方角を記し、そこに魔素、魔力探知的な補助を書き込む。
 あ、これはうまくいってるかんじ。場所とかわかるなら……声とか送り合いっこできないかなー。
 ちょっと遠いけど、できないことも無いような気もする。
 電話みたいなものはまだ、だけど。私とテオはそれに近いことを魔力に乗せてやっていたのだから。
 この魔石を介してなら、できるんじゃないかな。
 なんか突然、そんな事が閃いた。そして閃いたということは、やれと天が私に言っている!
 という、前向きさを発揮して私はさらにいろいろ、書きこんでいく。
 魔力の受信的なのとー、それから送るの安定するような補助とー。
 紙がたりなくなってー。だめだ、書きなおそう。
 新しい紙をとって最初から書き直していく。その前に、どうかくかを頭の中で整理整頓。
 音の響きの補助とか。そういうのもいるかな。
 頭の中で組み立てて、それを書いていく。ちょっと小さめに書いていって、わぁい、魔法陣の出来上がりー!
 一発でうまく言ったらすごいな、と思いつつ。
 媒体はあの魔石だ。それを取出し陣の真ん中に置いて、そーっと私の魔力を流しつつ、歌う。
 テオといつもやってたあれだ。
 鼻歌混じりに歌って、その響きは魔石に集約されていく。吸い込まれるように、音が聞こえていく。
 私はどこにいるの、私もきてるのよ、ついでにお兄様もねとそれだけを乗せた。
 あんまり色んな事いっても、どうしようもないから。
 それを送って、返事があるかどうかはわからない。実験も何もしてないし。
 届いているかすら、わからないから。
 でも、私は待つ。そして待っている間に、瞼が重くなってきて。
 ひゃー、眠気きたー! 色々考えて頭使ってたからかな!
 そのままころんと横になって眠る。
 いざ幽体離脱!
 眠りに落ちる、体から意識が離れていくような感覚だ。
 ふわっと自分の体を下に見て、そして時間を確認。寝てから一時間くらい、かな。
 これ眠りに落ちて一時間後くらいしか使えないっていうかできないっていうか。
 即! ではないのはなにか色々あるんだろうなぁとお兄様とも話してるけど原因はわからない。
 その謎を解くのもいつかはしたいのだけど、今はともかくテオの所へ。
 一度行けている、だから行けないなんて事はない。
 ふわっと意識が飛んで、視界が変わる。
 するとそこは昨日の水路ではなく、森の中だった。
「まだ来ているか?」
「いえ、今のところは何とか」
 ぼそぼそとくぐもった声。
 それぞれ荒い息を落ち着かせている様で、何かあったのだと私はすぐに察した。
 え、え!? で、でもできる事がない!
「見せてください、治癒します。といっても傷を塞ぐだけですけど」
「いや、それで十分だ」
 手荒に傷口を拭いて治癒。
 怪我をしているのはきっとお付きの人で、治癒するのはテオだ。
 テオも一緒に、それはちょっとかじったから。
 危機一髪、なとこから抜けて一息ついているとこに私は遭遇したらしい。
 おろおろ、どうにかならないかなときょろきょろしてしまう。
 その時、だ。
「……?」
 治癒を終えたテオが不思議そうな顔をして首元をごそごそしているのは。
「どうした?」
「いえ、何か……」
 多分、テオのお兄さんが声かける。
 テオは首から、あの魔石を取り出した。それがちょこちょこ明滅しているような!
「……レティ?」
 テオはまさか、というように呟いた。
 皆がそれがどうしたのかという視線を投げてくるのに、気のせいかもしれないけどと前置いて。
「これ、レティがくれて馬鹿かお前は、って感じのものを仕込んであるんですけど。何か、力の流れを感じて……」
 魔力をちょっとだけ流してみますとテオは言う。するとそこから、私の鼻歌が流れた。
 ああああああ!! こ、こんな人の前で!!! ひいい、音程ちょっとはずしてる!! ぎゃあああ!!!!
 しゅ、しゅうちぷれい!!!
「……なんか、ファンテールにトリスタン様とレティが来てるそうで、どこにいるのか、と……」
「なんでさっきの鼻歌でそうなるのか」
「鼻歌は媒介で、その下に魔力で会話というか……説明が面倒です」
 というより、今説明している暇はないとテオは言う。
 テオはとりあえずダメ元で、この場所について流してみますかと皆に問う。
「それが罠……っていうのはないか。それ、レティが魔力込めたりしたんだっけ?」
「はい。やらかしてる魔石ですね。だれかがこれに手を加えることはできないと思います」
 どうしますか、と視線を向けるのはガブさんだ。ここで一番偉いのはガブさんだからかな。
「……よし、やってくれ。ここはヴェルズリーの森、だよな?」
「はい。このあとどう抜けるかの予定も伝えますか」
「一番近い街は?」
「セイレスかと」
「じゃあ、ヴェルズリーからセイレスに向かっている、で」
 きっとそれだけで手を回せるだろうとガブさんは笑う。
 式典のためにおそらく来ているのはアレクシスだと笑って。そこにトリスタンがいるなら、何かしら手を打ってくるはずだと。
 うん、ガブさんその通りです!
 じゃあ、とテオは同じように魔石に魔力乗せて、そして歌ってくれる。
 えへへ、久しぶりの、テオの声。歌。
 それに私の心は躍るばかりだ。嬉しい、とっても嬉しい。
 どうなるかわからないけど、と言って皆立上がりまた歩み始める。
 陽の光の下だと、それぞれがどれだけ疲弊しているのかが、すごくわかる。
 ああ、ほんと、早くどうにかして合流したい。
 皆が進む中で、テオは一番最後まで立ち止まっていた。
 どうしたんだろう、と私が見ていると魔石をじっと見ていて。それに口づけて、仕舞い込んだ。
 あああああああ!!
 な、ほん、ひぎゃ!!!
 だ、誰も見てないと思ってたでしょ!?
 わ、私がいるんだからね!! いやテオ気付いてないと思うけど!!
 思うけど!!! だからこそ!!! それは!!!!
 いとおしいと、隠さない。幸せそうな笑み浮かべて、そんなこと、するとか。
 うっかりみてしまった私はもう恥ずかしくてごろごろころがる勢いで。
 やばい、というのしかいえない、語彙が無い状態に陥った。
 やばい。あれは反則。
 そんな顔、今まで見た事ない。
 やだもう。すき。
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