転生令嬢はやんちゃする

ナギ

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第四章

どきどき幽体離脱

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 もう正直意味わかんない。
 冗談半分でできてどうするの、と思うのだけどぐだぐだ悩んでいても仕方ない。
 ここはポジティブにいきたい。夢かもしれないし。
 ううん、夢はない。
 だって真下に幸せそうな顔して寝こけている、私がいるんだから!
 自分で言うのもなんだけど、おまぬけ面だ……や、やだよだれ垂れてる……お嫁にいけない顔だわ。
 そんな顔を見続けているのもつらい。
 今、何ができるのかを私は考える。
 まず外へ出れるのか、どれだけ体から離れられるのか。
 と、思ったらしゅっと視界が変わった。
 外だ。
「……思いのままに何でもいけるってこと?」
 いやいや、そんな美味い話があってはいけない。多分、何か干渉はできない……見てるだけ、かな。
 それじゃあまず、覗いても大丈夫そうな……我が家の様子。
 王都にある我が家の、台所!
 そこをイメージすると、私はそこにいて。
 夜遅く、仕込みをしている料理長の姿があった。
 声はかけれるのかな、どうなのかな。
「ねぇ、何つくってるの?」
 そう、問いかけるけれど私の声は届かない。まぁ、そりゃそうだよね!
 作っているのは、ローストビーフのようだ。
 匂いはわからないけど、お肉やいてるから絶対良い匂いしてるはず。
 それを今度は包み込んで、湯に入れているし。他の物もいろいろ作っている。
 ぱたぱたと動く料理長の後ろをついて回る。そうすると冷蔵保管庫にプリンを見つけた。
 これはきっとデザートなのだろう。おいしそう。
 ふむふむ、我が家までこれた。というっても王都なので目と鼻の先、って感じ。
 それじゃあ、領地はどうだろう。
 領地の、私の部屋ー!
 と、思うと本当に私の部屋だ。
 真っ暗。それは夜だからだけど、窓からはいる月明かりで私の部屋なのはわかる。
 部屋からすすいと出る。扉をあけたりはできなくて、すぅっと扉を通り抜けて、なんだか変な感じ。
 うーん、昼間になれーと思ってもならない。ということはそれは自分ではどうにもならないことみたい。
 屋敷の中をうろうろしてると、灯りのついてる部屋があった。
 おう、うちのメイドさんたちを纏める一番偉い侍従長!
 領地の管理とかもしてるから、書類とにらめっこのようだ。
 私はそれを後ろから覗き込む。私がみても問題はないはずなのよね。
 だってこれ、今年の納税とかそういう書類だし。あ、ここ計算間違ってる。
 計算間違いに気付かず、そのまま書類は仕舞われてしまった。
 うーん、色々やってるしお疲れよね。
 書類は王都のお父様宛に送られる様子。これ、夢かもしれないけどお父様に一言いったほうが良いかな。
 やがて部屋の灯りも消えて。私は屋敷の外に出て、あたりを見回した。
 移動は、一瞬だ。
 物は試し、と王都の私の体の上、と思う。
 そうすると、体の上だ。
 今度は、領地の私の部屋と再び。
 うん、一瞬。
 行ったり来たりは自由なのかしら。
 じゃあ……これ、人に対してはどうなのかな。
 お父様とお母様のとこ、というのは……ちょっと何かあった時にひぎゃあってなりそうだから無理。やめておこう。
 お兄様も何してるかわかんないなー。
 ここで、テオのところと思えないのは、踏み切れないのは。
 行けなかったときに私が悲しくて寂しくて、たまらなくなるからだ。
 うん、なんて脆弱な心!
 そうしてもだもだしているうちに、体がすぅっと透けてきた。
 あ、なにこれ!? と思ううちに意識は無くなってしまって。
 そして気づくと、朝だった。
 ベッドの上だった。
「…………なんなんだろ、これ」
 本当に幽体離脱なのかどうか!
 ひとまず私は、その日の内に王都の家を訪れた。
 料理長に会って、今日のごはんは何ーと聞くとローストビーフだと言う。
 ちょっと持って帰りますか、とおすそ分けをしてもらって。やったー! と喜ぶものの、夢なのか現実なのか。
 私が多分、幽体離脱してるときに見たものとかぶる。
 プリンも、あったのだから。
 でもこれくらいじゃまだ納得できないわけで。
 お父様がいらっしゃったので、顔をだして。
 領地からの書類に計算間違いがある夢をみたの、と告げる。気を付けてみてくださいね、と。
 お父様も話半分に聞いていた。
 けれど数日後、本当に計算間違いがあったと教えてくれて。
 おう、私やらかしちゃってますね、これは!
 と、ひとまずお兄様に相談することにした。
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