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第三章
夜会での出来事
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デジレ様とお母様がいらっしゃる部屋にいくと楽しそうにお茶をしていた。
夜も遅いんだけど、もう寝れないとかそんな感じだった。
私もテンション高くて寝れるような感じではない。
「何をお話されてたんですか?」
「ああ……こいつが、来た時の事」
「あっ、それ私も知りたいです。声なんて聞こえなかったので」
遠目から、あの王子がうわーという感じなのはわかったんですけど、と言うとデジレ様はあれほど馬鹿だとは思っていなかったとため息をつかれた。
おう、そんなにひどいんですか。
「なんか喚いてるなぁとは思ったんですけど、どんな方です?」
「……自分を過信していて、大きなことを言うのに何もできない。持ち上げられているのに気付いていない、礼儀がなっていない、それから」
「あ、まだあるんですね。もうなんとなく、駄目なことだけはわかりました」
デジレ様が指折り数えはじめたので、多いと思って止めた。
簡単に言えばクズだなと言い放ったのすごい。お母様もにこにことそうねと頷いている。
それほどまでか。
「そもそも、夜会に招かれたのなら、時と場合によって主催の国の王族が巡って挨拶にいくものです。今回、あの王子よりも高位の方もいらっしゃいましたからね」
「その方の取り無しを夫人達がしてくれて助かった」
「いえ、あの方も笑っておられましたので……」
あの王子についてはあの方もどうだろうと思っていらしたので胸がスッとしたとおっしゃっていましたよとお母様。
あの方がどの方か知らないけれど、あれを笑って流してくださるのは広い度量の方だと思う。
「何にせよ他の賓客もいらっしゃるのに、自分がこの夜会の主役だとばかりの行動。私のところに来た時も、人をかき分けるように来て、な」
「あの行動はいただけませんわ」
「ああ、そういえばお兄様は、デジレ様がいらっしゃる前に挨拶、してましたよね?」
「ん、ああ……」
「どんな話をしたんです?」
「……話せと?」
「トリスタン、私も聞きたい」
「そうですね、話しなさい」
デジレ様とお母様からも聞きたいと言われたら、お兄様に逆らう術はない。
話すのがいやだ、というような様子に興味を抱いたのだろう。
「……礼儀正しく、頭を垂れて名乗り、ようこそおいでくださいましたとあたりさわりのない挨拶をした」
「それで?」
「お前があの悪名高いと言われ」
「悪名」
「よくこの場所に顔をだせるなとののしられた。俺は悪名高いだろうか」
「いえ、対外的には悪名などはないと……」
この国中の人から指刺されてこいつ悪いやつ! と言われるようなことはお兄様はしていない。
悪巧みとかはしてそうだけど、ばれずにやるでしょう。
そもそもどんな話を聞いてそうなったのか!!
「まぁ、トリスタンにそんな……どうして決闘を申し込まなかったの!」
ちょ、お母様が飛躍している。
「顔を合わせたのは初めてだからな、どんな話を聞いているのか。それに母上、さすがに決闘は国の大事になります」
「そうね。それで、あなたがしたのね」
まぁ、はいとお兄様は視線を逸らす。
そうか、替わったのは馬鹿にされてけなされてカチーンときたからか。
「ほかにも言われましたが、どれもこれも腹の立つことばかりです」
「トリスタンがその場で笑って流せず、怒って何かしらすぐやってしまうということは相当ね。母は怒らないわ」
お兄様もちゃんと考えてる。あそこで楽しく言い負かすことも、多分できたのだろう。
でも、それをするとのちのち問題になるとわかる。だからこそ自制して私に替われ、という。
いやもう自制できてないよねとも思うけど。
「私は突然、トリスタンがきて驚いたよ。レティが来ると思ってたから」
「ええ、行く直前でお兄様にかわれと装備を奪われました。というか、お兄様どうやってあそこに?」
「お前に頼んだのは移動の陣だっただろう。あの後すぐ、ちょっと隠れて移動しただけだ」
「なるほど……」
「……移動の陣?」
そこでデジレ様が何か引っかかるというような顔をされる。
あ、隠すの無理じゃない? そもそも実行でき……たような、できなかったような。
そう思ってちらっとお兄様をみると、先程までのあの王子ほんと、みたいな顔から楽しそうなものになっている。
お母様も瞬いて、どういうことと私を見るほどにだ。
「内緒で計画を少し、変更した。なぁ、レティ」
「ええ、私は言いくるめられただけですよ」
「ああ、そうだろうな……それで、その変更は?」
「最初は私と一緒に、テオに補佐してもらいつつデジレ様の宮に移動の予定だったのですが」
「上の部屋でレティから俺にかわってちょっと付き合ってもらおうかと」
内緒でこういうことをして、相手を驚かすのは楽しいだろうとお兄様は笑う。
悪戯をたくらむ子供のように、年相応より一層幼くだ。
そしてその表情はどうやら、デジレ様のどつぼだったらしい。
顔を赤くして、視線をそらせながらまぁそうだなと歯切れ悪く頷く。
照れてらっしゃるのだ。
「あら……」
その様子にお母様は楽しそうに笑み零す。そう、こういうことなんですよ!
どこまで関係が発展してるのかはわからないけど、それでも。
互いに好き合ってるのは間違いないと思う。
夜も遅いんだけど、もう寝れないとかそんな感じだった。
私もテンション高くて寝れるような感じではない。
「何をお話されてたんですか?」
「ああ……こいつが、来た時の事」
「あっ、それ私も知りたいです。声なんて聞こえなかったので」
遠目から、あの王子がうわーという感じなのはわかったんですけど、と言うとデジレ様はあれほど馬鹿だとは思っていなかったとため息をつかれた。
おう、そんなにひどいんですか。
「なんか喚いてるなぁとは思ったんですけど、どんな方です?」
「……自分を過信していて、大きなことを言うのに何もできない。持ち上げられているのに気付いていない、礼儀がなっていない、それから」
「あ、まだあるんですね。もうなんとなく、駄目なことだけはわかりました」
デジレ様が指折り数えはじめたので、多いと思って止めた。
簡単に言えばクズだなと言い放ったのすごい。お母様もにこにことそうねと頷いている。
それほどまでか。
「そもそも、夜会に招かれたのなら、時と場合によって主催の国の王族が巡って挨拶にいくものです。今回、あの王子よりも高位の方もいらっしゃいましたからね」
「その方の取り無しを夫人達がしてくれて助かった」
「いえ、あの方も笑っておられましたので……」
あの王子についてはあの方もどうだろうと思っていらしたので胸がスッとしたとおっしゃっていましたよとお母様。
あの方がどの方か知らないけれど、あれを笑って流してくださるのは広い度量の方だと思う。
「何にせよ他の賓客もいらっしゃるのに、自分がこの夜会の主役だとばかりの行動。私のところに来た時も、人をかき分けるように来て、な」
「あの行動はいただけませんわ」
「ああ、そういえばお兄様は、デジレ様がいらっしゃる前に挨拶、してましたよね?」
「ん、ああ……」
「どんな話をしたんです?」
「……話せと?」
「トリスタン、私も聞きたい」
「そうですね、話しなさい」
デジレ様とお母様からも聞きたいと言われたら、お兄様に逆らう術はない。
話すのがいやだ、というような様子に興味を抱いたのだろう。
「……礼儀正しく、頭を垂れて名乗り、ようこそおいでくださいましたとあたりさわりのない挨拶をした」
「それで?」
「お前があの悪名高いと言われ」
「悪名」
「よくこの場所に顔をだせるなとののしられた。俺は悪名高いだろうか」
「いえ、対外的には悪名などはないと……」
この国中の人から指刺されてこいつ悪いやつ! と言われるようなことはお兄様はしていない。
悪巧みとかはしてそうだけど、ばれずにやるでしょう。
そもそもどんな話を聞いてそうなったのか!!
「まぁ、トリスタンにそんな……どうして決闘を申し込まなかったの!」
ちょ、お母様が飛躍している。
「顔を合わせたのは初めてだからな、どんな話を聞いているのか。それに母上、さすがに決闘は国の大事になります」
「そうね。それで、あなたがしたのね」
まぁ、はいとお兄様は視線を逸らす。
そうか、替わったのは馬鹿にされてけなされてカチーンときたからか。
「ほかにも言われましたが、どれもこれも腹の立つことばかりです」
「トリスタンがその場で笑って流せず、怒って何かしらすぐやってしまうということは相当ね。母は怒らないわ」
お兄様もちゃんと考えてる。あそこで楽しく言い負かすことも、多分できたのだろう。
でも、それをするとのちのち問題になるとわかる。だからこそ自制して私に替われ、という。
いやもう自制できてないよねとも思うけど。
「私は突然、トリスタンがきて驚いたよ。レティが来ると思ってたから」
「ええ、行く直前でお兄様にかわれと装備を奪われました。というか、お兄様どうやってあそこに?」
「お前に頼んだのは移動の陣だっただろう。あの後すぐ、ちょっと隠れて移動しただけだ」
「なるほど……」
「……移動の陣?」
そこでデジレ様が何か引っかかるというような顔をされる。
あ、隠すの無理じゃない? そもそも実行でき……たような、できなかったような。
そう思ってちらっとお兄様をみると、先程までのあの王子ほんと、みたいな顔から楽しそうなものになっている。
お母様も瞬いて、どういうことと私を見るほどにだ。
「内緒で計画を少し、変更した。なぁ、レティ」
「ええ、私は言いくるめられただけですよ」
「ああ、そうだろうな……それで、その変更は?」
「最初は私と一緒に、テオに補佐してもらいつつデジレ様の宮に移動の予定だったのですが」
「上の部屋でレティから俺にかわってちょっと付き合ってもらおうかと」
内緒でこういうことをして、相手を驚かすのは楽しいだろうとお兄様は笑う。
悪戯をたくらむ子供のように、年相応より一層幼くだ。
そしてその表情はどうやら、デジレ様のどつぼだったらしい。
顔を赤くして、視線をそらせながらまぁそうだなと歯切れ悪く頷く。
照れてらっしゃるのだ。
「あら……」
その様子にお母様は楽しそうに笑み零す。そう、こういうことなんですよ!
どこまで関係が発展してるのかはわからないけど、それでも。
互いに好き合ってるのは間違いないと思う。
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