転生令嬢はやんちゃする

ナギ

文字の大きさ
上 下
76 / 243
第二章

御指名

しおりを挟む
 殿下とデジレ様の元にバルトロメ様とカロン様が向かう。
 彼らもちゃんと付け耳はついていた。
 主催がおいでくださりありがとうございましたーって最初に挨拶するのは当然の事だろう。
 その挨拶をほどほどに、殿下はデジレ様を私達のところに連れてきた。
「デジレ様、ご機嫌麗しく。ところでそちらのドレスはどちらでお作りに?」
「コルセットしてませんよね!?」
「ああ、してない。あんなものつけられるか」
 わかる。超わかる。
 ですよね、と私は激しく頷いた。コルセットよくない。
「あとドレスの裾長くて動きにくいと思いません? 私、ひざ下くらいの長さのドレスをつくりたいです!」
「ああ、それはいいな……足を出すのはどうとか言われるが、ごてごてしているのはな……特に昼間のこういうパーティーでこのドレスは汚れるだろうが、と思う」
 あっ、デジレ様よくわかってらっしゃる。
 そう。ガーデンパーティーなんですよ!
 土! 裾! つく!
 ずっと裾持って歩くとか無理だし。帰ってお洗濯お願いするのもなんかな、と思う。
 いえ、メイドさんたちにとってそれがお仕事だとは思うんだけど、裾だけ丁寧にやらなきゃいけないし。
 ドレス改革はいつか行わないといけないのでは、と私はちょっと思っている。
 今度ドレス談義しましょうと私たちは約束をする。
 三人で話をしていると、どうやらパーティーが始まるらしい。
 わぁと拍手。その中心にはバルトロメ様とカロン様がいる。
 開会の挨拶をして、次に殿下からのお言葉タイム。
 その様子を私たちはちょっと離れたところからみていた。
「そうだ、レティ嬢。私にちゃんとその、テオとやらを紹介してくれ」
 にこにこと笑っている。すごく気になっている、興味を持っている。
 そう言うのがすごくわかる笑顔だ。
 断ってもジゼルちゃんがこちらですーってしそうだし、そもそも断る理由もない。
 私はちょっと離れたところにいてくれたテオを呼んだ。
「デジレ様。テオです」
「……レティ……」
 その紹介はどうかと思うとテオが零す。えっ、だめ?
 でも私からすれば別に何も言う事ないんだけど。
「……レティーツィアお嬢様の従者をしております。テオドール・アルディティと申します」
「アルディティ? お前、アルディティ家の者か」
 デジレ様は瞬く。テオの家名に驚いているのだ。そこ驚くところなの? と私は思う。
「いや、その……私が王子だったころに長兄殿に勉学を教えていただいて……」
 彼は語学が堪能なのだとデジレ様は言う。おかげで他国語もしっかり使えるようになったと。
 テオは、いつもうちにいるから家族とのかかわりはあまりない。手紙のやり取りはしているようだけど。
 そういえば兄弟仲がどうとかは聞いたことないって言うか。
 私が興味持たないから聞いてないだけかー!
「一番上の兄は今、他国で外交官をしています。デジレ様と親交があったとは知りませんでした」
 そうだろうな、とデジレ様は頷く。内緒で教えてもらっていたのだと小声で紡ぎ笑う。
 おう、それはもしかして王城抜け出して系かなと私は思った。
 だってそうとしか思えないー!
 テオも何となくその空気を察して苦笑している。
「ふふ、懐かしいな」
 色々と、いらぬ知恵も付けてもらったものだと笑う。
 テオの、その一番上のお兄さんはお会いしたことはないけどデジレ様が思い出して楽しそうにしているのをみると、良い人なのかなぁと思えた。
「そうか、彼の弟ならテオドールはきっと良い男になるな。レティ嬢、手放すと泣くぞ」
「えっ、何故そこで私にふるんです!?」
「なんとなくだな」
 いやこれ限りなくいじわるですよね!
 なので、頑張って戦ってみることにした。
「言われなくても、テオは私の自慢の従者です! 誰かに頂戴って言われても渡せません」
 お兄様からも死守してみせますと言い切ると頼もしいなとデジレ様は言う。
「守るのは僕の仕事なんだけどな」
「え、でも魔術は私の方が上手だし」
「まっとうにやれば、だけどね」
 それはまっとうにやらなければ自分の方が強いと?
 ちょっとテオとは一度、なんでもありでやり合うべきかもしれない。
「ああ、そうだ。魔術で思い出した、この前言いそびれていたんだ」
 そこでぽん、と手を叩いて。
 デジレ様はそうそうと私を見る。
「レティ嬢はなかなかすばらしい魔術の使い手と聞き及んだ。だから託したいと思うのだ」
 何を、と言う前に。
 あっ、まさかと嫌な予感がした。
「さすがに私は続けられなくなったからな。アレクシスにもばれてしまったし。ならばもっと動きやすいものを仕立てようと思っていたのだが、適任がここにいた」
 二代目をやってくれないか、とデジレ様は言う。
 なんのって。
 あの素敵な怪盗さんのですよね。
「大丈夫だ、私の培ったノウハウは全部教えるししばらくは一緒に活動する」
「え?」
「まだきな臭いことは色々とあるのだ。それに一人でなければ無茶もしないと説得もできるしな」
 誰をですか!
 というかそういう話、ここでする話じゃないですよね!
 大丈夫だ誰にも聞こえてないとおっしゃりますが、いや、でもね!
 そんな突然の話に、ジゼルちゃんは私もお手伝いします! と盛り上がる。
 テオは、僕も巻き込まれそうだなぁともう諦めていた。諦めるの早い。
「レティ、長いものには巻かれておいたほうが良い」
「ええー!」
「楽しいぞ」
「楽しいと言われましても……」
 なんかもうすでに拒否権がないことはよくわかる。
 馬車馬のように働かされるような気がとてもする。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

皇太子の子を妊娠した悪役令嬢は逃げることにした

葉柚
恋愛
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢のレイチェルは幸せいっぱいに暮らしていました。 でも、妊娠を切っ掛けに前世の記憶がよみがえり、悪役令嬢だということに気づいたレイチェルは皇太子の前から逃げ出すことにしました。 本編完結済みです。時々番外編を追加します。

運命の歯車が壊れるとき

和泉鷹央
恋愛
 戦争に行くから、君とは結婚できない。  恋人にそう告げられた時、子爵令嬢ジゼルは運命の歯車が傾いで壊れていく音を、耳にした。    他の投稿サイトでも掲載しております。

【完結】実家に捨てられた私は侯爵邸に拾われ、使用人としてのんびりとスローライフを満喫しています〜なお、実家はどんどん崩壊しているようです〜

よどら文鳥
恋愛
 フィアラの父は、再婚してから新たな妻と子供だけの生活を望んでいたため、フィアラは邪魔者だった。  フィアラは毎日毎日、家事だけではなく父の仕事までも強制的にやらされる毎日である。  だがフィアラが十四歳になったとある日、長く奴隷生活を続けていたデジョレーン子爵邸から抹消される運命になる。  侯爵がフィアラを除名したうえで専属使用人として雇いたいという申し出があったからだ。  金銭面で余裕のないデジョレーン子爵にとってはこのうえない案件であったため、フィアラはゴミのように捨てられた。  父の発言では『侯爵一家は非常に悪名高く、さらに過酷な日々になるだろう』と宣言していたため、フィアラは不安なまま侯爵邸へ向かう。  だが侯爵邸で待っていたのは過酷な毎日ではなくむしろ……。  いっぽう、フィアラのいなくなった子爵邸では大金が入ってきて全員が大喜び。  さっそくこの大金を手にして新たな使用人を雇う。  お金にも困らずのびのびとした生活ができるかと思っていたのだが、現実は……。

貴方といると、お茶が不味い

わらびもち
恋愛
貴方の婚約者は私。 なのに貴方は私との逢瀬に別の女性を同伴する。 王太子殿下の婚約者である令嬢を―――。

忘れられた妻

毛蟹葵葉
恋愛
結婚初夜、チネロは夫になったセインに抱かれることはなかった。 セインは彼女に積もり積もった怒りをぶつけた。 「浅ましいお前の母のわがままで、私は愛する者を伴侶にできなかった。それを止めなかったお前は罪人だ。顔を見るだけで吐き気がする」 セインは婚約者だった時とは別人のような冷たい目で、チネロを睨みつけて吐き捨てた。 「3年間、白い結婚が認められたらお前を自由にしてやる。私の妻になったのだから飢えない程度には生活の面倒は見てやるが、それ以上は求めるな」 セインはそれだけ言い残してチネロの前からいなくなった。 そして、チネロは、誰もいない別邸へと連れて行かれた。 三人称の練習で書いています。違和感があるかもしれません

処刑された人質王女は、自分を殺した国に転生して家族に溺愛される

葵 すみれ
恋愛
人質として嫁がされ、故国が裏切ったことによって処刑された王女ニーナ。 彼女は転生して、今は国王となった、かつての婚約者コーネリアスの娘ロゼッタとなる。 ところが、ロゼッタは側妃の娘で、母は父に相手にされていない。 父の気を引くこともできない役立たずと、ロゼッタは実の母に虐待されている。 あるとき、母から解放されるものの、前世で冷たかったコーネリアスが父なのだ。 この先もずっと自分は愛されないのだと絶望するロゼッタだったが、何故か父も腹違いの兄も溺愛してくる。 さらには正妃からも可愛がられ、やがて前世の真実を知ることになる。 そしてロゼッタは、自分が家族の架け橋となることを決意して──。 愛を求めた少女が愛を得て、やがて愛することを知る物語。 ※小説家になろうにも掲載しています

悪役令嬢は天然

西楓
恋愛
死んだと思ったら乙女ゲームの悪役令嬢に転生⁉︎転生したがゲームの存在を知らず天然に振る舞う悪役令嬢に対し、ゲームだと知っているヒロインは…

ぽっちゃりな私は妹に婚約者を取られましたが、嫁ぎ先での溺愛がとまりません~冷酷な伯爵様とは誰のこと?~

柊木 ひなき
恋愛
「メリーナ、お前との婚約を破棄する!」夜会の最中に婚約者の第一王子から婚約破棄を告げられ、妹からは馬鹿にされ、貴族達の笑い者になった。 その時、思い出したのだ。(私の前世、美容部員だった!)この体型、ドレス、確かにやばい!  この世界の美の基準は、スリム体型が前提。まずはダイエットを……え、もう次の結婚? お相手は、超絶美形の伯爵様!? からの溺愛!? なんで!? ※シリアス展開もわりとあります。

処理中です...