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第二章
御指名
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殿下とデジレ様の元にバルトロメ様とカロン様が向かう。
彼らもちゃんと付け耳はついていた。
主催がおいでくださりありがとうございましたーって最初に挨拶するのは当然の事だろう。
その挨拶をほどほどに、殿下はデジレ様を私達のところに連れてきた。
「デジレ様、ご機嫌麗しく。ところでそちらのドレスはどちらでお作りに?」
「コルセットしてませんよね!?」
「ああ、してない。あんなものつけられるか」
わかる。超わかる。
ですよね、と私は激しく頷いた。コルセットよくない。
「あとドレスの裾長くて動きにくいと思いません? 私、ひざ下くらいの長さのドレスをつくりたいです!」
「ああ、それはいいな……足を出すのはどうとか言われるが、ごてごてしているのはな……特に昼間のこういうパーティーでこのドレスは汚れるだろうが、と思う」
あっ、デジレ様よくわかってらっしゃる。
そう。ガーデンパーティーなんですよ!
土! 裾! つく!
ずっと裾持って歩くとか無理だし。帰ってお洗濯お願いするのもなんかな、と思う。
いえ、メイドさんたちにとってそれがお仕事だとは思うんだけど、裾だけ丁寧にやらなきゃいけないし。
ドレス改革はいつか行わないといけないのでは、と私はちょっと思っている。
今度ドレス談義しましょうと私たちは約束をする。
三人で話をしていると、どうやらパーティーが始まるらしい。
わぁと拍手。その中心にはバルトロメ様とカロン様がいる。
開会の挨拶をして、次に殿下からのお言葉タイム。
その様子を私たちはちょっと離れたところからみていた。
「そうだ、レティ嬢。私にちゃんとその、テオとやらを紹介してくれ」
にこにこと笑っている。すごく気になっている、興味を持っている。
そう言うのがすごくわかる笑顔だ。
断ってもジゼルちゃんがこちらですーってしそうだし、そもそも断る理由もない。
私はちょっと離れたところにいてくれたテオを呼んだ。
「デジレ様。テオです」
「……レティ……」
その紹介はどうかと思うとテオが零す。えっ、だめ?
でも私からすれば別に何も言う事ないんだけど。
「……レティーツィアお嬢様の従者をしております。テオドール・アルディティと申します」
「アルディティ? お前、アルディティ家の者か」
デジレ様は瞬く。テオの家名に驚いているのだ。そこ驚くところなの? と私は思う。
「いや、その……私が王子だったころに長兄殿に勉学を教えていただいて……」
彼は語学が堪能なのだとデジレ様は言う。おかげで他国語もしっかり使えるようになったと。
テオは、いつもうちにいるから家族とのかかわりはあまりない。手紙のやり取りはしているようだけど。
そういえば兄弟仲がどうとかは聞いたことないって言うか。
私が興味持たないから聞いてないだけかー!
「一番上の兄は今、他国で外交官をしています。デジレ様と親交があったとは知りませんでした」
そうだろうな、とデジレ様は頷く。内緒で教えてもらっていたのだと小声で紡ぎ笑う。
おう、それはもしかして王城抜け出して系かなと私は思った。
だってそうとしか思えないー!
テオも何となくその空気を察して苦笑している。
「ふふ、懐かしいな」
色々と、いらぬ知恵も付けてもらったものだと笑う。
テオの、その一番上のお兄さんはお会いしたことはないけどデジレ様が思い出して楽しそうにしているのをみると、良い人なのかなぁと思えた。
「そうか、彼の弟ならテオドールはきっと良い男になるな。レティ嬢、手放すと泣くぞ」
「えっ、何故そこで私にふるんです!?」
「なんとなくだな」
いやこれ限りなくいじわるですよね!
なので、頑張って戦ってみることにした。
「言われなくても、テオは私の自慢の従者です! 誰かに頂戴って言われても渡せません」
お兄様からも死守してみせますと言い切ると頼もしいなとデジレ様は言う。
「守るのは僕の仕事なんだけどな」
「え、でも魔術は私の方が上手だし」
「まっとうにやれば、だけどね」
それはまっとうにやらなければ自分の方が強いと?
ちょっとテオとは一度、なんでもありでやり合うべきかもしれない。
「ああ、そうだ。魔術で思い出した、この前言いそびれていたんだ」
そこでぽん、と手を叩いて。
デジレ様はそうそうと私を見る。
「レティ嬢はなかなかすばらしい魔術の使い手と聞き及んだ。だから託したいと思うのだ」
何を、と言う前に。
あっ、まさかと嫌な予感がした。
「さすがに私は続けられなくなったからな。アレクシスにもばれてしまったし。ならばもっと動きやすいものを仕立てようと思っていたのだが、適任がここにいた」
二代目をやってくれないか、とデジレ様は言う。
なんのって。
あの素敵な怪盗さんのですよね。
「大丈夫だ、私の培ったノウハウは全部教えるししばらくは一緒に活動する」
「え?」
「まだきな臭いことは色々とあるのだ。それに一人でなければ無茶もしないと説得もできるしな」
誰をですか!
というかそういう話、ここでする話じゃないですよね!
大丈夫だ誰にも聞こえてないとおっしゃりますが、いや、でもね!
そんな突然の話に、ジゼルちゃんは私もお手伝いします! と盛り上がる。
テオは、僕も巻き込まれそうだなぁともう諦めていた。諦めるの早い。
「レティ、長いものには巻かれておいたほうが良い」
「ええー!」
「楽しいぞ」
「楽しいと言われましても……」
なんかもうすでに拒否権がないことはよくわかる。
馬車馬のように働かされるような気がとてもする。
彼らもちゃんと付け耳はついていた。
主催がおいでくださりありがとうございましたーって最初に挨拶するのは当然の事だろう。
その挨拶をほどほどに、殿下はデジレ様を私達のところに連れてきた。
「デジレ様、ご機嫌麗しく。ところでそちらのドレスはどちらでお作りに?」
「コルセットしてませんよね!?」
「ああ、してない。あんなものつけられるか」
わかる。超わかる。
ですよね、と私は激しく頷いた。コルセットよくない。
「あとドレスの裾長くて動きにくいと思いません? 私、ひざ下くらいの長さのドレスをつくりたいです!」
「ああ、それはいいな……足を出すのはどうとか言われるが、ごてごてしているのはな……特に昼間のこういうパーティーでこのドレスは汚れるだろうが、と思う」
あっ、デジレ様よくわかってらっしゃる。
そう。ガーデンパーティーなんですよ!
土! 裾! つく!
ずっと裾持って歩くとか無理だし。帰ってお洗濯お願いするのもなんかな、と思う。
いえ、メイドさんたちにとってそれがお仕事だとは思うんだけど、裾だけ丁寧にやらなきゃいけないし。
ドレス改革はいつか行わないといけないのでは、と私はちょっと思っている。
今度ドレス談義しましょうと私たちは約束をする。
三人で話をしていると、どうやらパーティーが始まるらしい。
わぁと拍手。その中心にはバルトロメ様とカロン様がいる。
開会の挨拶をして、次に殿下からのお言葉タイム。
その様子を私たちはちょっと離れたところからみていた。
「そうだ、レティ嬢。私にちゃんとその、テオとやらを紹介してくれ」
にこにこと笑っている。すごく気になっている、興味を持っている。
そう言うのがすごくわかる笑顔だ。
断ってもジゼルちゃんがこちらですーってしそうだし、そもそも断る理由もない。
私はちょっと離れたところにいてくれたテオを呼んだ。
「デジレ様。テオです」
「……レティ……」
その紹介はどうかと思うとテオが零す。えっ、だめ?
でも私からすれば別に何も言う事ないんだけど。
「……レティーツィアお嬢様の従者をしております。テオドール・アルディティと申します」
「アルディティ? お前、アルディティ家の者か」
デジレ様は瞬く。テオの家名に驚いているのだ。そこ驚くところなの? と私は思う。
「いや、その……私が王子だったころに長兄殿に勉学を教えていただいて……」
彼は語学が堪能なのだとデジレ様は言う。おかげで他国語もしっかり使えるようになったと。
テオは、いつもうちにいるから家族とのかかわりはあまりない。手紙のやり取りはしているようだけど。
そういえば兄弟仲がどうとかは聞いたことないって言うか。
私が興味持たないから聞いてないだけかー!
「一番上の兄は今、他国で外交官をしています。デジレ様と親交があったとは知りませんでした」
そうだろうな、とデジレ様は頷く。内緒で教えてもらっていたのだと小声で紡ぎ笑う。
おう、それはもしかして王城抜け出して系かなと私は思った。
だってそうとしか思えないー!
テオも何となくその空気を察して苦笑している。
「ふふ、懐かしいな」
色々と、いらぬ知恵も付けてもらったものだと笑う。
テオの、その一番上のお兄さんはお会いしたことはないけどデジレ様が思い出して楽しそうにしているのをみると、良い人なのかなぁと思えた。
「そうか、彼の弟ならテオドールはきっと良い男になるな。レティ嬢、手放すと泣くぞ」
「えっ、何故そこで私にふるんです!?」
「なんとなくだな」
いやこれ限りなくいじわるですよね!
なので、頑張って戦ってみることにした。
「言われなくても、テオは私の自慢の従者です! 誰かに頂戴って言われても渡せません」
お兄様からも死守してみせますと言い切ると頼もしいなとデジレ様は言う。
「守るのは僕の仕事なんだけどな」
「え、でも魔術は私の方が上手だし」
「まっとうにやれば、だけどね」
それはまっとうにやらなければ自分の方が強いと?
ちょっとテオとは一度、なんでもありでやり合うべきかもしれない。
「ああ、そうだ。魔術で思い出した、この前言いそびれていたんだ」
そこでぽん、と手を叩いて。
デジレ様はそうそうと私を見る。
「レティ嬢はなかなかすばらしい魔術の使い手と聞き及んだ。だから託したいと思うのだ」
何を、と言う前に。
あっ、まさかと嫌な予感がした。
「さすがに私は続けられなくなったからな。アレクシスにもばれてしまったし。ならばもっと動きやすいものを仕立てようと思っていたのだが、適任がここにいた」
二代目をやってくれないか、とデジレ様は言う。
なんのって。
あの素敵な怪盗さんのですよね。
「大丈夫だ、私の培ったノウハウは全部教えるししばらくは一緒に活動する」
「え?」
「まだきな臭いことは色々とあるのだ。それに一人でなければ無茶もしないと説得もできるしな」
誰をですか!
というかそういう話、ここでする話じゃないですよね!
大丈夫だ誰にも聞こえてないとおっしゃりますが、いや、でもね!
そんな突然の話に、ジゼルちゃんは私もお手伝いします! と盛り上がる。
テオは、僕も巻き込まれそうだなぁともう諦めていた。諦めるの早い。
「レティ、長いものには巻かれておいたほうが良い」
「ええー!」
「楽しいぞ」
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なんかもうすでに拒否権がないことはよくわかる。
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