転生令嬢はやんちゃする

ナギ

文字の大きさ
上 下
75 / 243
第二章

正式なご招待

しおりを挟む
 殿下、デジレ様、お兄様、ベル、ジゼルちゃん、テオは私と一緒にと。
 その招待状はそれぞれに送られてきた。
「行く?」
「行きたくはない」
 そのお誘いは、ジャジャル家でのパーティーへのお誘い。主催はバルトロメ様だ。
 お兄様は心底行きたくなさそうな顔をしている。どうして俺が、行かねばならんのだという気持ちかな!!
「正式な招待を断るって、よっぽどの事がないとだし。俺は行くけど」
 殿下は臣下の誘いには答えなければいけないからと。デジレ様もきっと同じくだ。
「姉上も行くってことだから、二人には一緒にいてほしいんだよね」
 公爵家の二人が一緒にいれば、他の令嬢はなかなか近寄りがたい。
 そんなわけで護衛と殿下はおっしゃる。
「私は良いですよ」
「はい、私も」
「うん、よろしく。おとなしくしておくように言い含めてはおくから」
 むしろそのおとなしくを言い含めるのは、いえデジレ様にもなんですけど。
 殿下の隣のお兄様にもよくよく言い含めていただきたい。またさらったりするな、とかそういうことを。
 しかし。
 私とジゼルちゃん、ベルとテオはまだ正式には社交界デビューしてないよねーって話。
 ジゼルちゃんとベルは親のお呼ばれについていったりもあったから顔は広いのだけど。
 私達別にいかなくてもいいんじゃない? とも思うけどカロン様にぜひ来てくださいねみたいなこと書かれてしまっているわけで。
 仕方ない、行くかという結論になった。
 で、お返事をすると同時にどこから聞きつけたか、お母様から帰っていらっしゃい、ドレスの用意するわよというお手紙がきて。
 ひぇ!!
 再びコルセットの洗礼にあうはめに……おおう……どうして? どうして世の中にはコルセットなんてものがあるの?
 これ作ったの誰よ!! 許さない!!
 と、憤る程度には本当にコルセットめ……となる。これつけなくていいドレスが欲しい。
 そんなこんなで準備はばっちり。
 問題の日がやってきた。
 パーティーは昼。ジャジャル家でのガーデンパーティーだ。
 なんでもバルトロメ様が時々行っているそうで色々と趣向にあふれているらしい。
 この前は女装だったとか。
 ……あれっ。お兄様一度、ドレス持って行ってたけどもしかして。
 そう思ってそっと見てみるがなんだとばかりに睨まれたので黙っておく。多分あたってる。そんな気がする。
 で、今回は家に到着すると同時に選んでください、とそれが並んでいた。
「……」
「……」
「……」
 獣耳のカチューシャだ。
 えっ、なにこれつけるの。えっ。
 えっ……なんで。
 一緒に来た私とお兄様とテオは黙ってしまう。えっ、これを、つける?
 お兄様が、うさ耳か犬耳か猫耳を、つける。
 えっ。そんなのみたら私、笑いを耐えられるかどうかわからない。
 テオが、うさ耳か犬耳か猫耳を、つける。
 ……えっ、それは見たい。
 できるなら猫耳をぜひお願いしたい。いやでもうさ耳も捨てがたい!!
 そうじゃない。そうじゃないよ!!
 バルトロメ様は何をお考えになってるのかな!!
「……じゃ、じゃあ私はうさ耳にしますね」
 あっ、うさ耳ふわふわー! 私は下にぺろっと垂れてるのを選んだ。上にぴんっとしてるのは、なんかこう。バランス上手に保てなさそうで。
 お兄様も諦めたように一つ手に取った。でもつけない。ちなみに選んだのは犬耳だ。
 で、テオも犬をとろうとしたのだが。
「テオ、こっち」
「え?」
「こっちがいい……」
 私は黒い猫耳をとってテオの前に出した。
 テオはしばらくそれを黙ってみてたのだけど、どれでも同じかといってそれでいいよと受け取ってくれた。
 やったー!
 テオの猫耳とか心のメモリアルにとどめ置きまくるに決まってる。わぁい!
 受け取った猫耳をテオはつけてくれた。
 あー! なんかもう、ありがとうございます!!
 なんで似合うのかな、なんなのかなテオは。美少年か!
 そして耳を受け取った私たちは庭に案内された。そこにはほかにも、耳つけた人がたくさんいた。
 ほんとこれ、ほんと。
 何の催しですかって感じしかない。皆ふつーにつけてるから、恥ずかしさも何もないのかな。
 それとも慣れてるだけなのかもしれないけど。
 そして庭でジゼルちゃんとベルを見つけて一緒に。ジゼルちゃんはぴんと立ったうさ耳だった。
 そして、ベルも。
「ベ、ベルが、うさみみ!」
「お揃いが良いなっていったの」
 にこっと笑うジゼルちゃん。限りなくわかっててやったのよ感しかない。
 ベルも不本意なのだろう。けど、ジゼルちゃんのお願いに勝てなかったのだと思う。
 まぁそうだよね!
 ジゼルちゃんとなんとなくこう、頭の上にあるものの居心地の悪さにベルはちょっと困っているようだ。
 テオが似合ってますよとベルに言うと、ベルは褒めなくて良いと尻尾を向く。
 どうやら相当、恥ずかしいらしい。その気持ちはちょっとわかるけど。
 でも皆つけてるしなぁと思い始めれば、恥ずかしいとかもどうでもよくなってきた。
 むしろそれぞれどんな付け耳なのかちょっと見てるの楽しくなってくる。
 きょろきょろしてると殿下とデジレ様もいらっしゃった。
 殿下はいつもの殿下~な服装だけどデジレ様は違った。
 ドレスなんだけど。ドレスなんだけど! ドレスなんだけど!!
 コルセットをつけてないだと!?
 えっ、なにあれ、えっ! 胸下切り替えかああああ!!!
 ああああ、確かにそれならコルセットいらない。いらない……なんという知能犯。
 私もああいうの欲しい……そう思ったのは私だけではなくて。
 ジゼルちゃんも、デジレ様のドレスと唸っていた。私たちは目を見合わせて、あとでどこで作ったのか教えてもらおうと頷き合った。
しおりを挟む
感想 97

あなたにおすすめの小説

【完結】名前もない悪役令嬢の従姉妹は、愛されエキストラでした

犬野きらり
恋愛
アーシャ・ドミルトンは、引越してきた屋敷の中で、初めて紹介された従姉妹の言動に思わず呟く『悪役令嬢みたい』と。 思い出したこの世界は、最終回まで私自身がアシスタントの1人として仕事をしていた漫画だった。自分自身の名前には全く覚えが無い。でも悪役令嬢の周りの人間は消えていく…はず。日に日に忘れる記憶を暗記して、物語のストーリー通りに進むのかと思いきや何故かちょこちょこと私、運良く!?偶然!?現場に居合わす。 何故、私いるのかしら?従姉妹ってだけなんだけど!悪役令嬢の取り巻きには絶対になりません。出来れば関わりたくはないけど、未来を知っているとついつい手を出して、余計なお喋りもしてしまう。気づけば私の周りは、主要キャラばかりになっているかも。何か変?は、私が変えてしまったストーリーだけど…

【完結】引きこもり令嬢は迷い込んできた猫達を愛でることにしました

かな
恋愛
乙女ゲームのモブですらない公爵令嬢に転生してしまった主人公は訳あって絶賛引きこもり中! そんな主人公の生活はとある2匹の猫を保護したことによって一変してしまい……? 可愛い猫達を可愛がっていたら、とんでもないことに巻き込まれてしまった主人公の無自覚無双の幕開けです! そしていつのまにか溺愛ルートにまで突入していて……!? イケメンからの溺愛なんて、元引きこもりの私には刺激が強すぎます!! 毎日17時と19時に更新します。 全12話完結+番外編 「小説家になろう」でも掲載しています。

初耳なのですが…、本当ですか?

あおくん
恋愛
侯爵令嬢の次女として、父親の仕事を手伝ったり、邸の管理をしたりと忙しくしているアニーに公爵家から婚約の申し込みが来た! でも実際に公爵家に訪れると、異世界から来たという少女が婚約者の隣に立っていて…。

【完結】私ですか?ただの令嬢です。

凛 伊緒
恋愛
死んで転生したら、大好きな乙女ゲーの世界の悪役令嬢だった!? バッドエンドだらけの悪役令嬢。 しかし、 「悪さをしなければ、最悪な結末は回避出来るのでは!?」 そう考え、ただの令嬢として生きていくことを決意する。 運命を変えたい主人公の、バッドエンド回避の物語! ※完結済です。 ※作者がシステムに不慣れな時に書いたものなので、温かく見守っていだければ幸いです……(。_。///)

【完結】転生地味悪役令嬢は婚約者と男好きヒロイン諸共無視しまくる。

なーさ
恋愛
アイドルオタクの地味女子 水上羽月はある日推しが轢かれそうになるのを助けて死んでしまう。そのことを不憫に思った女神が「あなた、可哀想だから転生!」「え?」なんの因果か異世界に転生してしまう!転生したのは地味な公爵令嬢レフカ・エミリーだった。目が覚めると私の周りを大人が囲っていた。婚約者の第一王子も男好きヒロインも無視します!今世はうーん小説にでも生きようかな〜と思ったらあれ?あの人は前世の推しでは!?地味令嬢のエミリーが知らず知らずのうちに戦ったり溺愛されたりするお話。 本当に駄文です。そんなものでも読んでお気に入り登録していただけたら嬉しいです!

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

家庭菜園物語

コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。 その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。 異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。

悪役令嬢はモブ化した

F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。 しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す! 領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。 「……なんなのこれは。意味がわからないわ」 乙女ゲームのシナリオはこわい。 *注*誰にも前世の記憶はありません。 ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。 性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。 作者の趣味100%でダンジョンが出ました。

処理中です...