転生令嬢はやんちゃする

ナギ

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第二章

噂話

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 内密に、という話だったのだけど。
 いつのまにか学内にはジゼルちゃんとベルの話が伝わっていた。
 知れ渡るの早いなーって思ったけどどうやらベルがうっかりなのかしっかりなのか。
 思いを遂げることができたとかなんとかのろけたのがぶわっと広まったらしい。
 ジゼルちゃんに微笑まれて、人前でのろけるのはやめてねと言われてはい、と頷いているのを私は目にした。
 で、その影響かわからないのだけど。
 学園内でそういう話がよくよく広まるようになった。
 あそこの家に、あの家の子が婚約を申し入れ、それをきいて他の子も申し入れ、とかそう言う浮いた話。
 しかし。しかしですね!
 私のところには! 一切! 来ません!
 まぁ私が嫁に行く、というのが難しいことはわかっている。貴族としての位の問題だ。
 お兄様がいるので、私に婿入りしてもらうという話はまずない。
 なにこれもしかして、私の貰い手いない……!? ということに気付いた。
 でもそうなれば、どこでもだれでも好きな人のところにいける、ということでもある。
 色々問題はありそうだけど。
 その結論に達して、まぁいいかー! と思っていたらだ。
 私のところに婚約の申し込みが来た。
 誰からって。
 あの、ジャジャル家の、カロン様からだ。
 その話を、家に呼ばれて今、聞かされたわけで。
「え、ないですよね?」
「お前が嫌なら断るが」
「断ってください!」
「わかった」
 両家の仲がこれで深まれば、という打診だった様子。
 お父様は私のやだー! に、まぁそうなるよなという感じだ。そうしかならないですよね。
 そもそも私はカロン様のことをよく知らないしー。
「しかし、レティ」
「はい」
「嫁入り先が現状、殿下のところくらいしかないのはわかっているか?」
「えっ?」
「わかってない顔だな」
 お父様は、何をおっしゃっているのかわからないのですが! という私のために説明を始めた。
 貴族の位が高い。双方の了解があれば公爵家より位の低いところに行くことは問題ではない。
 しかし。
 そういった年齢の、他の適当な相手として周囲を見回すと殿下しかいないぞとお父様は言う。
 え、無理でしょ。ないでしょ。
「殿下よりはかねてから打診はあったのだが」
「打診」
「お前がそういう気が全くなさそうだからまだ早いとどうにかかわしていた」
 けれどジゼルちゃんとベルがくっついちゃったのでそろそろ、とじりじりされているそうなのだ。
 まじかー!
「あー……私はできたら恋愛したいです」
「ああ」
「殿下とそれができるか、というとそれは少し、無理かなぁと思います」
 殿下は殿下で。
 なんていうか、お兄様のお友達。近所のお兄ちゃんって感じなのだ。
 恋慕? 無理だなと思う。
「では本人にその気がないので、本人をその気にと答えておく」
「はい。え? 本人をその気?」
「そうだ。王家との縁組は悪いものではない」
 が、本人の気持ちを大事にしておきたいとお父様は言う。
 えー! でもまって。王家との縁組というならば私よりもお兄様でしょー!
「王家との、ならお兄様もその可能性がないわけではないかと思うのですが」
「それはな……」
 はぁー、と。長いため息だ。
 どうやらお兄様、お父様を悩ませているらしい。
「……王家からデジレ様のことについて発表はあった。国内にももうじき正式に伝わる」
 呪いで王子から王女になったというお話。それを信じる信じないはあると私は思う。
 でもデジレ様自身を見るとどっちでもいいんじゃないかな! と、思える。
 デジレ様については、まぁまだ王女としての振る舞いに慣れていないので公には出てこない。
 でも王家からそっと、幾人かの有力貴族には嫁入り先云々というか、候補になっているというのは伝えられているらしい。
「その候補の中にあれは入ってなくてな」
「わぁ……」
「自力で入るから問題ない、というかデジレ様に選ばせるとか恐れ多いことも言っている」
「そう言ってるのがすぐ想像できます」
 お兄様頑張れ、とは思うけどあまりにも過激な行動はー!
 ちなみに候補はと尋ねれば、ジャジャル家のバルトロメ様、それからどこぞの辺境伯の長男のどちらかでは、と言われている。
 お兄様の方が、年下だからはずされたんだろうなぁーと私はちょっと思っているのだ。
 でも、王妃さまがお兄様のこと知ってうふふみたいな感じだったからなんで入ってないんだろーとちょっと思う。
 あ、いや待てよ。もしかして私と殿下の話があるから、お兄様入ってないんじゃない?
 だって、もし。仮定だけど、もし。
 どっちもくっついちゃったらうちの家優遇! みたいに思われる。
 権力の偏りみたいな。それは避けたいだろう。
 つまりは、お兄様が結ばれたいなら私と殿下はまず、ない話になるはず。
 その考えに至って、お父様にそれを告げると驚いたような顔をする。
「レティがそこまで考えられると思ってなかったが、その通りだな」
 つながりが深くなりすぎるのも問題だ。
 そういう頭が回るからこそ、殿下もレティが良いというのかなぁとお父様は困ったように、笑ってらした。
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